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2017年4月30日 (日)

「ヴォルス-路上から宇宙へ」他(DIC川村記念美術館)

かねてから行きたかったところに、とうとう訪問。北からミサイルが飛んでこないことを祈りつつ京成佐倉まで1時間半、そこからバスで30分。送迎バスは無料なのに入館料1300円なんだから、都内に比べるとやっぱリーズナブルですな。敷地がデカくて庭園も広場もあって(レストランもギフトショップも屋台ピザもある)、美術館そのものもなかなかの大きさ。なんたって展示スペースに余裕があって贅沢だ。出品リストはないかと訊いたら、ネットでダウンロードしろと言うのだが、この場でどうしろっちゅーのよ。仕方なく適当な紙にメモる。

入って最初の部屋が印象派からエコール・ド・パリで、ファンタン・ラトゥールから始まって、モネ、ピサロ、ルノワールとか。キュビズムでないブラックの「水浴する女」が何となく珍しい。ピカソもあって「シルヴェット」うん、崩れてない女性像いいですね。シャガールのデカいのがあって「ダヴィデの夢」だそうです。キスリングの「姉妹」もなかなかだー

次の間に唐突にレンブラント「広つば帽をかぶった男」。自画像かと思ったが違うみたい。自画像に見えちゃう。こないだエルミタージュ展で、ハルスの似たような絵を見たような。

次の部屋に唐突に日本美術。唐突だから大したもんねーだろーと思ったら、なんと漫☆画太郎……じゃなくて長澤芦雪「牧童図屏風」顔が画太郎っぽい……よね。でも太筆の筆さばきがすげえな。南蛮屏風が一つあって、それから、なんだあのオキマリみたいな富士山は横山大観かと思ったら横山大観だった。富士山はアレだけど波の描写はいいよ。それから鏑木清方かと思ったら上村松園の美人画1枚。

細い展示室に初期抽象……うむ、これよく分からん。

シュルレアリズムとその展開。ここは好物。エルンストが扉に描いている作品「入る、出る」が珍しい。マグリットの「冒険の衣服」は初めて見る。裸婦を普通に描いているのは珍しい……いや別に珍しくないな。でも、なんかちょっとマグリットらしくないスゥイートな感じ。あとデュシャンの「大ガラス」と関連作品、とか。

次の小部屋が実はお目当てなのさ。ジョゼフ・コーネル! おお草間彌生の恋人というか親友というか浅からぬ仲にして偉大なるアーティストでありヤバい変人。例の箱が7つ出ているかと思ったら、3つだけで4つは平面だった。でも、3つの箱どれもスバラシイ。「無題(ピアノ)」の薄青のガラス、音符の箱、壁紙、うむ、箱の中に「世界」がある。「無題(オウムと蝶の住まい)」昆虫標本を配する繊細さと、ラフに造った箱、わざと剥げさせて古い感じを出した白い壁、つまり「時間」までも作品の要素として構築しているではないか。「海ホテル(砂の泉)」これもわざと箱を汚しガラスを汚し、箱世界を創造している。コラージュもなかなか悪くない……って、これは自分で描いた部分はどこなんだ? いや自分で描いたところはほとんどないのか? まあ、いずれもちゃんと構成されてうまい作品にはなっているが、やっぱ箱の方が見事ですな。

マーク・ロスコだけの部屋がある。入って驚いたのは、照明が暗いオレンジで、これでは本来の絵の色ではなくなってしまうではないか……いや、きっと何か理由があるに違いない。たとえばロスコが夕日の中で描いてたからこうしたとかとか。気になるんで、そこにいるスタッフに訊いてみたら、絵の具が大変デリケートでこの明るさが限界だというつまらぬ答えであった。あとで技法とか見たら、絵の具、顔料、全卵とか書いてあり。そうかただの油彩じゃないんだ。絵の方はおなじみの四角のヤツ。

サイ・トゥオンブリーって人の部屋。平面1つと立体一つで、一つの部屋を専有。マチエールがイケる。ここの部屋は窓もあって明るい。

フランク・ステラだけのデカい部屋。ハデ立体多数。そういえば屋外にも金属質のステラ立体があって、通りすがりのガキが「ガラクタ」と言ってた。確かにガラクタだが、見てるとなかなか面白いだろ小僧。隣の部屋はサム・フランシスとか、ポロックとか、あとは知らん。エンツォ・クッキって人の作品……名前どこかで聞いたよな、と思いつつ、このあとやっとヴォルスよ。

ヴォルスは20世紀前半の人で、アンフォルメル(形状があるようなないような抽象)の先駆とされるって。最初は写真撮ってた。カメラマンだったのです。いろいろあるんだけど、今で言う「自撮り」も並んでいる。百面相で表情をわざといろいろ変えてだな。あと「今夜のための」何とかとか、そんなタイトルの写真もあり、今ならインスタグラムでもやってんじゃねーかな。それからこの人、収容所に入れられ、その後は絵の活動に。最初は水彩が並ぶ。このあたりはまだ何が描いてあるか対象が一応分かる。でもパウル・クレーに似ているもんで、このままじゃクレーのパチモンと思われちゃってそれは困ると思ったか思わなかったか知らんが、形を崩し始め、線描写が細かくなり、そこに薄く彩色をして、立体のようなそうでないような線のような微妙な抽象表現を始める。このブレンドが絶妙で、見ていると何ともモヤモヤしたイイ気分になってくる。技法はグワッシュと書いてあるな。ええと不透明水彩絵の具だって。これがドライポイントになると……銅板を直接引っかいた版画だよな、あの緊張感のある独特の線になるんだが、池田満寿夫が描くとインモーになるところ、ヴォルスは似ているけど、インモーじゃないよな。じゃあ何かって言われると困るが。油彩もあって、これも立体かなそうでないかなの際どい絵は面白いが、明らかにグシャグシャしたのになると、ちょっとどうでもよくなってくるな。しかし全体として点数も多い。そういえば誰かがヴォルスの絵で作った映像作品もあったぞ。

これで出てきた。庭園にゃ噴水もあってデカい。歩いていくと芝生の広場もあって、屋台ピザ売ってたが一人で食うにはデカ過ぎる。レストランは並んでる。なもんでバスに乗って京成佐倉に戻り庄屋でサンマ食って帰った。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html

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2017年4月22日 (土)

「バベルの塔」展(東京都美術館)

これを十分堪能するのはなかなか厳しいぞ諸君。何しろ一点豪華というか一つだけ注目度が極めて高いんで客がそこに集中する。絵がそんなに大きくない。絵が非常に緻密でまともに鑑賞してると時間がかかる。従って、会場内がそれなりにすいていても、この絵の前だけは結構な人だかりになっているし、長時間居づらいときたもんだ。いや、ズブトい神経の持ち主は長時間いるがよい。
しかし初回の金曜夜間開館に行ったが混んでたなあ……もっとあとにすればよかったかな。
この「バベルの塔」は24年ぶりの来日だそうで、うむ、私は前回も見ている。確か「ボイマンス美術館展」というもので、いまはなき池袋のセゾン美術館だったと思う。しかし、こんな一点にぎゅーぎゅー集中してなかったと思うんだが。

えーそれでは会場内の話。「バベルの塔」以外はクズとガラクタと落書きばかり、なんてこたーありませんよ。最初は16世紀ネーデルランドの彫刻ということで、作者不詳ながらよくできた主には聖者の彫刻群。うん、悪くないよ、うん。次は「信仰に仕えて」ということでネーデルランドのキリスト教絵画。ここで、キリスト教絵画を鑑賞するにはキリスト教の知識がなくっちゃねー描いてあることが分からないじゃーん、としたり顔で言うヤツが現れるだろうが、オレに言わせりゃどっちでもいい。むしろ余計な知識なんぞ無い方が、純粋に絵画としてどうなのよ、という鑑賞ができるんでそれはそれでプラスになる。いやー前から言ってるけどオレは絵の読み解きってのが好きじゃないんでね。もちろん読み解きの面白さは分かるし自分だってそれをエンジョイすることだってあるけどさ、絵としてどう感じるかをそっちのけでやるもんじゃないだろー……って話がそれた。そんなわけでキリスト云々にこだわらず絵を見ると、作者もテーマも分からんけど「聖カタリナ」と「聖バルバラ」ね、なかなか綺麗どころの女性像ですなぁー(前言覆すようでナンだが、こういう低次元な鑑賞もいいんだが、たまに虚しくなることもあるんだよね)。ええと、スカートやドレスの刺繍のキラキラというか、なんかマジすげえ質感なんだけど。近くにいた知らん人が補修したんじゃとか言ってたが。「ピラトの前のキリスト」ううむ、キリスト痩せてるなあ。「庭園に座る聖母子」子供の頭がヤバい。当時の絵画って……うむ、江戸浮世絵なんかでもそうなんだけど、子供をうまく描けなくて、大人の縮小コピーみたいで不自然になってるヤツをしばしば見かける。見たままを描くのは難しいんだろうかね。まーそんな、古い教会に普通にありそうな絵が連続する。

次は「ホラント地方の美術」ううむ、さっきと何がどう違うかってわかんねーだ。エンゲブレフツって人の「磔刑」キリストが激痩せ。なにこういう描き方流行りだったの? いやいや史実的には磔になる前に既に散々な目にあってたんで、多分こっちが正解だと思うが、思えば結構たくましい状態で磔になってるキリストもよく見るよな。それから「新たな画題へ」というコーナーだが……なんかこの辺どーでもいー絵しかなくね? 「ロトと娘たち」とか「聖クリストフォロスのいる風景」なんてのは新しい「絵画空間」ってなものを感じさせなくもない。ヘームスケルクって人の「オリュンポスの神々」えーと、ここだけギリシャ神話か。神々の絵らしいんだけど、全員裸でな、あと誰が誰だかよく分からないんで(持ってるアイテムとかで判別しろってことかもしれんが)、なんか裸族の住みかみたいにしか見えんのじゃ。

上の階へ行き、「奇想の画家ヒエロニムス・ボス」のコーナー。ここで貴重なボスの油彩画が2つ出てるからありがたく見たまえ。「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」。見るポイントはちゃんとパネル解説してくれている。「聖クリストフォロス」の方がボスらしいかな。右上の……水差しハウスとかな。でもまあ、どっちも「奇想」というにしては、ましてや「快楽の園」みたいな作品を知ってりゃあ大したレベルではないんだが。まーさすがに、これでどこが奇想なんだよとか文句が出るとヤバいと思ったのが、パネルでボスの他の作品での奇想っぷりを紹介してる。それから「ボスのように描く」ということで、なんかイヤな予感しかしねーな。でもまあ「聖アントニウスの誘惑」のなかなかよくできた模写がある。ボスをもとにした版画もある。「樹木人間」のシュールな感じもイケる。それからボス風の版画続きだがほとんど「ヒエロニムス・ボスの模倣」となっていて、要するになんちゅーかパチモン感が強い。それからいよいよブリューゲルなんだが、まず「ブリューゲルの版画」で、モノクロでかなりの数があるのだが……おっとここで時間がヤバくなってきたぞ。まともに見てるとバベルを見ている時間がなくなる……ので割愛してしまった。ちょっともったいない。

はい、上の階へ行きいよいよ「バベルの塔」です。その前に、造形のもととなっているらしいローマのコロッセオの紹介があったり、あとさっきと同じく見るポイントのパネル紹介があったりして、はいブリューゲル一世「バベルの塔」だーっ! 先も書いたが大きい絵ではない、緻密、人の集中で厳しい鑑賞環境。単眼鏡でパネルのポイントをチェックしていくが、こういうのやっていると絵を鑑賞しているんだが、絵の確認をしているだけなんだか分からない。かといって全体の印象を見ていると、ううむ、いいんだけどやっぱり細部が気になるよなあ。結局この傑作を十分堪能しようとすれば、人のいない状態で至近距離で長時間見るしかないんで、まあ今回の企画でやるのは結構難しいんじゃねーかな。そうだねー朝イチに入って、真っ先に上の階に上がってこれをじっくり見るとかしかないんじゃなかろうか。えー、あとこの作品を3DCG化した映像があって、アニメーションで動いていたりしてこれがなかなか面白い。絵そのものより楽しめるかもしれん。あと入口のところに大友克洋が内部構造を描いた作品もある。
細部に描いてあるものの面白さは、まさに読み解きなんだよなー 逆に言うと、本物を見なければならない、という要素は少ないんで、とりあえず本物は拝んでおいて、拡大模写やCG映像で楽しむというのもありじゃなかろうか。
http://babel2017.jp/

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2017年4月19日 (水)

大英自然史博物館展(国立科学博物館)

午後に実家に用があったもんで、もう終日休みにしてしまって午前にこれに行ってきた。なにしろ連日整理券が出るほどの盛況らしいんで……って行ったら別に、ド平日午前ってことでなんか普通にすいてた。博物学史上屈指の、英国が誇るお宝が、キター! ……ええと、何? 始祖鳥? ぐらいしか事前にゃ把握してません。

入ると最初にジョン・オーデュポンの「アメリカの鳥」の絵があるんです。きれいです。印刷……だよな。でも1830年代よ。それから「自然界の至宝」ってまあイントロ部分なんだけど、ここでもうハデなヤツが続出する。タマカイってデカい魚、本物と同じ色だっていうタコのガラス模型、キリンの頭、美しく大きなチョウチョのアレクサンドルトリバネアゲハ、呪われたアメジスト(見かけはまあ普通)、見ものは三葉虫の化石。7匹ぐらい折り重なって実に壮観だ。三葉虫で作ったアクセサリーもあるぞ。

ええと文字情報が多いです。発見者とか研究者とか、そういうストーリーを楽しむもよし、オレみたいにマンゼンと見てるもよし(よくねえのかもしれんが)。まあ気に入ったものだけ書いてくよ。インドコブラの皮……皮じゃん。「ガラスケースのハチドリ」これっ、いいね! ガラスケースの中に木とハチドリいっぱい。自然の一部を切り取ったみたーい。古代エジプトの猫のミイラ(布巻いてあるだけで中が見えない)、テラコッタ製のライオンがデカい。

えー見ものは、絶滅動物の骨格標本と、再現CGなのだ。最初にモアがある。知ってるぞドラえもんに出てきた。絶滅した飛べない巨鳥。標本の隣に再現映像があり博物館の中を走っておるのだ。これがよくできてるんだな。絶滅動物好きはイッキにテンションが上がるぞっ。それからベスビオ火山の岩石……ポンペイのヤツか? ダーウィンのコーナーがあって(その前もいろいろコーナーあるけど知らんのばかりで)、ダーウィンがビーグル号で採集した甲虫とか、なんたってペットだったゾウガメの……剥製? デカいカメなんだこれが。でも水族館にいたよな。「種の起源」手稿1ページ。ダビンチなんかもそうなんだけど、手書き文字ってヤツはなんかイイんだよなあ。読めないんだけど、逆にそれが文字を美的に把握できるってもんで、コーランなんかも、おおっとか思っちゃうもんなあ。そんで始祖鳥! おお古代生物史上屈指の発見よー! ……ううむ、シロウトのオレが見ると、それっぽい骨が石に埋まっているだけなもんで、ここからあれが想像できたのかーというのがリアルに感じられない。だからこれが、これが、これがー! とか考えてるより他ありません。あーこれも再現CGあります。ええと草のスケッチ……銅板プレートがあってえらいきれいなんだけど、なんだ? 印刷原盤? 深海への探索というコーナーがあって標本とかあるけど、これは水族館でも行った方がいいな、南極のペンギンの剥製、「微化石のクリスマス・カード」これは面白い。ごく小さい化石でクリスマスカード作ったんだって。虫眼鏡で見るぞ。ロスチャイルドってヤツのコレクションで「シュモクバエ」やだー、なにこれー 日本のコーナーがあってニホンアシカの剥製……うむ、タカアシガニ標本……ここは水族館で生きてるヤツを見るといいガニ。九州の隕石……おお宇宙のロマンよ。石の標本「輝安鉱」これは、なんかスゴい。キラキラ、石のなんだ……繊維質? が鮮やかだ。

絶滅種サーベルタイガーが出たー! CG……CGも骨だけなのか。次も絶滅種オオナマケモノ。普通のナマケモノよりもっとナマケている……んじゃなくて体がデカいの。マジデカい。CGあり。皮膚ヤベエ。絶滅種ドードー……は模型しかないけど、再現CGがカワイイ。で、もう最後のコーナー、火星の隕石……これに粘土鉱石が含まれていたんで、かつて水があったんじゃないかって説が出たんだって。今では常識さ。ここで問題の展示「ピルトダウン人」猿と人類を繋ぐ新種発見……かと思いきやウータンと現代人の骨を組み合わせたニセモノ。でも何十年も信じられてきたってんで、これをあえて展示。真実は偽られ、覆ることもあるのだな諸君。

もっと常軌を逸したボリュームで迫るのかと思ったがほどよくまとまっている。しかし「展示して見せることができるもの」がかくも多岐に渡るのかと感心してしまうな。
http://treasures2017.jp/

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2017年4月16日 (日)

「山崎博 計画と偶然」(東京都写真美術館)

♪ゆけ~ゆけ~ヤマザキヒロシ……えー中年ド真ん中の時間です。何年かぶりに恵比寿の写真美術館に行ったわけです。なんたって写真はあんまし見ねーしアウェーだし。でも行ったのは長時間露光の異世界っぽさ。絵だって超現実がお好みなんで。あーそうそうほらグル……グルスキーだっけ。ああいうのとか。あとニコラ・ムーランの合成写真とか。だから篠山とか荒木とかは、あんまし見ないの。しっかし恵比寿ガーデンプレイスってバブリーな施設ですなあ。なんか空間に余裕があるもんで、表参道ヒルズなんかのゴチャゴチャ感とはちょと違うな。

入るといきなり長時間露光で太陽の軌跡を輝かせてる風景。美しく神秘的にして科学的だ。「観測概念」ってシリーズだってお。あと同じ窓からの風景をいかに違うように写すか、みたいなの。それから初期の天井桟敷とかについてった時の写真で、人物いろいろ……なんだけどおっと河原温の日付絵画の写真とかあるじゃん。あと寺山修司の目だけ撮ってるのがあって、目だけでも寺山と分かる。この辺はバリエーションに富んでていろいろな写真があるね。でもすぐにテーマを決めてじっくり撮る型になる。

「海に穴を開ける」というシリーズが、36枚撮りのフィルムを6×6にレイアウトした時に合わさって1枚に見えるよう、少しずつ撮る場所を変えたもの。はい、テクニカルですね。あと日付と時間がタイトルになっているものがあって、これは海と長時間露光で移動する太陽の軌跡を写したもの。うむ、この長時間露光で浮かび上がる神秘の世界はアレだ、一頃流行った(流行りものだったのかな)「月光浴」に似てるね。あれも長時間露光で異世界を出現させたのだ。あと太陽の軌跡じゃなくて、ただ水面を長時間撮ったものがある、あるいは波打ち際と太陽を長時間露光で撮ったり、長時間露光でも波の形が見えるのが不思議だ。

「水平線採集」というシリーズがあり、画面中央を水平線で切るシリーズ。これは、アレだな。杉本博司が同じようなことやってたよなあ。でも杉本はもっとストイックな感じがするんで、まあ、どっちもどっちか。「御前崎・静岡」お、行ったぞそこは。確か地球が丸く見える展望台だったかな、そんな名前だった。「奥石廊・伊豆」の1枚が実に杉本っぽい。つまり、空も海も単色な感じで、海は暗く沈み……みたいな感じか。それからこの水平線採集がカラーになったのが並ぶ。こうなるとやっぱり杉本とは違うよね。おなじみの長時間露光太陽もある。

ビデオ作品があって(あんまし見てない)、歩きながら風景の変化を撮るのがあって、「クリティーク」って雑誌の表紙あれこれで。太陽の軌跡あり、このイモ洗いプールはサマーランドかな。赤いレーザー光使ったのあり。それから桜の花の背景が太陽の光というなかなか大胆な「櫻」シリーズ。「水のフォトグラム」という暗室で水面に輪を作る……なんつーの? 波紋か。それの写真というか暗室操作でなんかやってんだけど覚えてない。作品は面白いですよ。あとB52かな、軍用機を少しずつ撮ったヤツ。それからシャワーの水滴の映像とか。まあその他。

点数がそれなりに多いんで、まともに見てると結構かかる。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2574.html

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2017年4月 9日 (日)

雪村(東京藝術大学大学美術館)

「奇想の誕生」がサブタイトルで、後の簫白とか、デロリ系とか、そんなところにつながって、また尾形光琳にも影響を与えた絵師が雪村だ。時代は室町だってお。あと雪舟より後。行ったら金曜夜のエルミタージュよりは混んでて、保存の関係か会場内が暗いし、ガラス越しで距離もあるんで、単眼鏡とかあった方がいい。それも光を集めて見た目より明るくなる高性能なヤツ(というのあるのかな)。オレの単眼鏡はほとんど変わらんのであかんかった。

入ると最初が「欠伸布袋・紅梅梅図」で、三幅対ですな。文字通り中央がアクビしている布袋。説明に光琳と絵の関係も描いてあったが、左のヤツの枝の跳ねっぷりが実によくて現代的な印象も受ける。ええと、堂本印象の印象画みたいな感じかな。

それから年代順で、最初は普通に仏画とか描いてる。説明がなかなか丁寧で絵の見どころがちゃんと書いてあって、時々見どころポイントの拡大画像があったりするんで分かりやすい。最初は概ね普通なんだけど「瀟相八景図帖」の滝がぴゅーあたりから普通でない感じになってくる。ちなみに……リスト見ると展示替え結構あるな。ええ
それから「高士観瀑図」で滝壺の水の表現でニョロニョロみたいなヤツがポイントだって。ええと「百馬図帖」が面白い。シンプルにして太い線で描かれた馬。あーこれね、若冲の鶏にこんなのがあったかな。若冲にも影響与えたって話もあるようだ。「老松山水図」も松の枝跳ね跳ねな。「列子御風図」は風に乗る能力を得た仙人だかの絵。立ったまま宙に浮いて風に吹かれておる。この絵を見るといやが上にもボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」が頭の中に鳴り響く……というのは嘘で(その曲よく知らん)、でもまあ水墨でこうダイナミックな絵ってあまりないですよねえ。面白いですねえ。

ポスターにもなってる目玉の(っても前期4/23まで。後期はまた別のヤツが出るようだ)「呂洞賓図」首を上に曲げて龍と対峙してるの。壷(瓶のようだが)から煙と小龍出してるんだけど、どうしてこういうスタイルにしたか分からんそうです。でもインパクトあるよ。顔が濃いし舌出してるしダイナミーック。次も「呂洞賓図」で、こっちも顔が濃い。壷から立ちのぼる煙ともなんともつかないなんかがなんかだな。ええと「釈迦羅漢像」三幅対。左の器の水がどうたらとか解説にあるが、右の壷から光線が面白い。「五百羅漢図」の羅漢ビーム思い出しちゃうな。そうだよ羅漢たるものやっぱビーム発射だよな(なんだそりゃ)。「松鷹図」うん、普通にうまい。「寒山図」うん、寒山というかこりゃチョハッカイだな。あとはデカい屏風がいくつかあるが、結構抽象画燃えよドラゴンモード(考えるな。感じるんだ)で見た方がいい感じのが多い(※文章がふざけている時はだいたい金捨ててるレベルにちゃんと見てない)。ちなみにここまでほとんど水墨画だお。つまりモノクロだ。この先も。

階を変わって地下に降り……身近なものコーナー。野菜とか鳥とか生き物。うーんそうだな。「猫小禽図」のブタトラネコが面白いな。そんくらいかな。それから晩年の絵で「金山寺図屏風」は、山の中の寺を描くが、別に見て描いたわけじゃないそうで、それゆえ非現実っぽい面白さが出ているような気がするお。建物の目立つ横線がいいテイストで、シュールな印象もちょっとある。「蝦蟇鉄拐図」は人物画傑作。顔はアレだし口からぴゅーってアレが出ているのが面白い(アレアレ書いているが説明がめんどくさいの)。それから光琳のコーナーがあるお。雪村をリスペクトしてたって。「布袋図」が出ているが、琳派っぽくなくて(そもそも琳派に布袋って感じでもないが)、顔がまたアレなんだな(だからアレってなんだよ)。

それから雪村その後。狩野洞秀が「呂洞賓図」を模写してたり、狩野芳崖が「山水図」を模写してたり、奇想というより、普通に水墨画のお手本にもなっていたようだ。
しかし作品リストを見ると一つ一つ全国からかき集めている。この労力は凄いな。
http://sesson2017.jp/

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2017年4月 8日 (土)

大エルミタージュ美術館展(森アーツセンターギャラリー)

実はあんまし期待してなかった。まずこの会場は美術館というよりイベントスペースで、気分がイマイチ盛り上がらないんだな(とか何とか言いつつもルノワールの最高傑作を見たのもここだったが)。あと、ここは展望台とも森美術館とも別施設なもんで、ここのチケットでは展望台へは行けません。森美にももちろん入れません。これも何となく盛り下がる。さらに金曜夜行ったらチケット購入で結構長い列。うわあああとか思いつつしかたなく並んでいたら、ここのチケットは別の窓口で買えるんだって(デカく書いとけよ)。そう、長い列は皆展望台(あるいはマーベルか? なんか外人が多いが)なのさ。ちなみに森美術館はハルシャとかいう知らんヤツで……いや、そのうち行くけどね。という感じでローテンションで入場。す……すいてる。金曜夜とはいえこれで大丈夫か? 

最初は誰かが描いたエカテリーナ2世の肖像。ここだけ写真撮れる。でもただの着飾ったデブ女にしか見えんのでもちろん写真撮らない。

イタリア:ルネサンスからバロックへ、というコーナー。ティツィアーノ工房「鏡を見るヴィーナス」ダメじゃん。体が変だ。グイド・レーニの工房「エウロパの掠奪」おいおい「大」エルミタージュ美術館で工房作かい。グイド・レーニ持ってこいよ、とまあ、ああやっぱり的な冴えない気分で部屋の中央を見ると、あるじゃん! ティツィアーノ「羽根飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像」。い、い、いいいいじゃないかこれ。都美で見たフローラに匹敵するデキじゃん。しかも周りに客がいなくて独占状態。ごっつあんです。カルロ・ドルチ「聖チェチリア」聖なんとかってなっている以上宗教的意味があると思うが、それは描くための口実であって単なる美少女萌え画(だと思う)。フランチェスコ・フリーニ「アンドロメダ」アンドロメダを描くなら変態的に岩にククった絵を描けや。ボンベオ・ジローラモ・バトーニ「聖家族」マリア様が美白。おお、いかにもイターリアですな。

オランダ:市民絵画の黄金時代、のコーナー。おう、レンブラントの自画像があるぜ、と思ったらフランス・ハルス「手袋を持つ男の肖像」だってお。まぎらわしい。ホントホルストの「陽気なリューと弾き」「陽気なヴァイオリン弾き」を見て、あーここユルいオランダ風俗コーナーかーと思いきや、いきなりレンブラント「運命を悟るハマン」おお、おいおいおいなんかすげえのが来ちゃったよ! この主題は知らんものの、別に知らなくなって見るほどに味のあるさすがレンブラントじゃ。光と影、表情、手の描写、宝石の描写、シブい赤系の衣装。描いてあるもの全てが演出に生きていて全く無駄がない。これも独占状態。ごっつあんです。おなじみオランダ風俗ヤン・ステーン「怠け者」小難しい宗教ものが多くなりがちな中、和み系の風俗画で楽しめる。

フランドル:バロック的豊穣の時代、コーナー。ピーテル・ブリューゲル2世「スケートする人たちと鳥罠のある冬景色」ブリューゲルらしい人々点在のヤツ。ヤン・ブリューゲル1世のもある。ピーテル1世じゃないと気分上がらねえな(何がどう違うというワケでもないが)。巨匠ルーベンスもあったけどイマイチだ。ダーフィット・テニールス(2世)「牧童の女性」カ、カワイイな……それから「厨房」妙な空間っぽさ(?)がイイ。フランス・スネイデルス「鳥のコンサート」フクロウが楽譜持っているってのがポイントだな。これがないと単なる鳥の集合だしな。

スペイン:神と聖人の世紀、コーナー。ムリーリョが3枚も来ているじゃん! 「受胎告知」はマリア様、天使、聖霊のハト、百合の花、と必要アイテムをキメて描いている(宗教画だから当然か)。画風はムリーリョの、あのゆるふわ系(?)だお。「羊飼いの礼拝」あと「幼子イエスと洗礼者ヨハネ」これいいっすね。子供同士の戯れ合い。でもちゃんと宗教画だお。それからスルバラン「聖母マリアの少女時代」おっとこれはどこかで見たぞ……と思ったら同じ主題を何度も描いてんだって。

フランス:古典主義的バロックからロココへ。コーナー。なんつってもロココ多数で嬉しい。いや、ロココって言葉はよく聞くと思うが、実はロココの絵画の実物を見る機会はあんまりないのでね。ニコラ・ラングレ「春」「夏」ロコってるぜ。特に夏は水浴で、女性ばかりが半裸含めキャッキャウフフしておる。人類いつだってどこだって萌え萌えよ。ヴァトーの絵もある。ブーシェ「エジプト逃避行上の休息」これはロココじゃなくてマジもの。ブーシェに基づくコピーで、「ヴィーナスの化粧」やっぱスケベだなブーシェは。フラゴナール「盗まれた接吻」これも実にまっとうな、背中が痒くなるようなアホなテーマで実にロココらしい。おお、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナールとロココ3兄弟(実際の兄弟ではない)そろったお。シャルダン「食前の祈り」おおっ! チャラいロココ時代にあって、一人孤高に静かな絵を描き続けたシャルダン「食前の祈り」いいね。彼の代表作じゃないか。何でこんな部屋の隅っこに展示してあるんだもったいない。客も来ないじゃないか。それから理想風景のクロード・ロランが2枚。

最後はイギリス:美術大国の狭間で、だって。クラーナハ……やっぱりオレはクラナッハ。「林檎の木の下の聖母子」うーん、いかにもクラナッハ(?)だな。ベンジャミン・ウェスト「蜂に刺されたキューピッドを慰めるヴィーナス」……こいつ絶対少年愛だろ。そういう描き方してるっちゃ。

そんなわけで、意外と満足。金曜夜に行った限りではティツィアーノやレンブラントは独占できるし、ムリーリョ3枚はそれだけでメシが食える。空いているうちに行っておくとよいと思うぞ。
http://hermitage2017.jp/

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2017年4月 2日 (日)

「パロディ、二重の声」(東京ステーションギャラリー)

渾身の4月1日ネタが完全スルーされて寂しい今日この頃です。いやー、私はオリジナリティ至上主義なんで、パロディってあんまし好きじゃないんだよねーと言いつつ、自分の作ったものを見ると結構パロディが多い。かなり前に「モテる美術鑑賞」というC級フリーペーパーを作っていたが、そこのヘタクソな挿し絵は毎回パロディ以外のナニモノでもなかったしな。

最初のところで山縣旭のモナ・リザパロディが大量にある。「ベラスケスのモナ・リザ」とか「ゴッホのモナ・リザ」とか。その画家風の描き方でモナ・リザを描く。見ると全部去年今年ぐらいで描いている量産型。おおスゲエなと思いつつも、この手は割と簡単にできちゃうんじゃないかなあ、なんて思う次第。いやそれよりアングルの「泉」のパロディがヒデエ。あれにパンツ穿かせている。かえってワイセツブツみたいになってしまうもんで、何ともいえない微妙な気分。まあ、これがパロディってもんよ。

えー「日本の一九七〇年代前後左右」とのことで、ほとんどはその時代のもんです。解説や誰かの言葉をパネルじゃなくて、立て看板っていうのかな、街角や工事現場にあるようなヤツで紹介。この雰囲気がなかなか面白い。見やすいしね。それから赤瀬川源平の札とかあって、巨匠横尾忠則コーナーがある。アンリ・ルソーの絵画パロディ何作か。例の「眠るジプシー」がライオンに食われちゃったとかな。あとパロディ満載アニメ。今時のアニメじゃなくて、いかにも70年代風で……65年に作られたのか、とにかくパロディウンヌンより時代を感じさせる。それから靉嘔のレインボーもの「レインボー北斎」は元ネタの春画の印刷物が展示してあり……思いっきり18禁じゃないか。これじゃ子供連れてこれない。鈴木慶則も絵画パロディ……よりも一円切手が面白いな。タイガー立石……これはパロディかな。岡本信治郎はゴッホのパロディ。色合いが何となくホンワカしてる。他に立体もあって、吉村益信「豚:PigLib」これはハム缶の広告を剥製で作ったものらしいが……ダミアン・ハーストの牛のヤツのパロディかと思った。木村恒久はフォトコラージュ。うむ、よくできている。でも、今時だったら、アイディアはともかく写真加工はフォトショップでやっちゃえる感じだよなあ。

階を降りて、入った部屋には雑誌「ビックリハウス」の表紙が大量展示。見ると、表紙は結構よくできたパロディだったりする。そうかー、面白そうな雑誌だなあ。でも私はこの雑誌が出ていた頃はガキンチョだったしなあ。1971年、ぷろだくしょん我Sというところが「週間週刊誌」という雑誌を出したそうです。なんと表紙から中身から白紙。しかも何号か続いたそうで、しかもそこそこ売れたそうで。スゲエな。新聞記事などもあって、面白いのは当時もこれを面白がったのは二十代の若者で、三十代になるとやりすぎじゃね、と顔をしかめる人もいたらしい。いつの時代でも若者のアタマのほうが柔らかい。それから長谷邦夫のパロディマンガ。つげ義春の「ねじ式」のパロディでバカボンパパが出てきたりするのとか。そういえば練馬の「あしたのジョー展」だったか、ジョーのパロディマンガ見たな。誰が描いたんだっけな。あーそれから面白いのは河北秀也(AD)作るところの地下鉄のマナーポスター。有名なマリリン・モンローを使った「帰らざる傘」とか。少女マンガやロートレックをパロディ。一般向けでありながら結構よくできてる。

それから、雑誌や本の展示や、それが読めるコーナーあり。ビックリハウスもあったんでちら見したが……うーん、今のテレビブロスみたいな感じか? ちょっと違うかな。あと谷岡ヤスジのマンガを見たりした。

最後はパロディが裁判までいってしまった事件の紹介。マッド・アマノのフォトコラージュが有名写真家の写真を無断引用。この裁判の顛末。新聞記事もあるが、目立つのは文章の展示だが……これも何かのパロディか? あと「伊丹十三のアートレポート」の映像がある。1976年、おお、若いな。

そういえばこういうテーマでは必ず出てくる福田美蘭がいないなあ、と思っていたが、あの人はもっとあとなんだな。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201702_parody.html

以下、フリーペーパーからいくつか

Motebi14


 Motebi27



Motebi20

Motebi29

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