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2017年4月22日 (土)

「バベルの塔」展(東京都美術館)

これを十分堪能するのはなかなか厳しいぞ諸君。何しろ一点豪華というか一つだけ注目度が極めて高いんで客がそこに集中する。絵がそんなに大きくない。絵が非常に緻密でまともに鑑賞してると時間がかかる。従って、会場内がそれなりにすいていても、この絵の前だけは結構な人だかりになっているし、長時間居づらいときたもんだ。いや、ズブトい神経の持ち主は長時間いるがよい。
しかし初回の金曜夜間開館に行ったが混んでたなあ……もっとあとにすればよかったかな。
この「バベルの塔」は24年ぶりの来日だそうで、うむ、私は前回も見ている。確か「ボイマンス美術館展」というもので、いまはなき池袋のセゾン美術館だったと思う。しかし、こんな一点にぎゅーぎゅー集中してなかったと思うんだが。

えーそれでは会場内の話。「バベルの塔」以外はクズとガラクタと落書きばかり、なんてこたーありませんよ。最初は16世紀ネーデルランドの彫刻ということで、作者不詳ながらよくできた主には聖者の彫刻群。うん、悪くないよ、うん。次は「信仰に仕えて」ということでネーデルランドのキリスト教絵画。ここで、キリスト教絵画を鑑賞するにはキリスト教の知識がなくっちゃねー描いてあることが分からないじゃーん、としたり顔で言うヤツが現れるだろうが、オレに言わせりゃどっちでもいい。むしろ余計な知識なんぞ無い方が、純粋に絵画としてどうなのよ、という鑑賞ができるんでそれはそれでプラスになる。いやー前から言ってるけどオレは絵の読み解きってのが好きじゃないんでね。もちろん読み解きの面白さは分かるし自分だってそれをエンジョイすることだってあるけどさ、絵としてどう感じるかをそっちのけでやるもんじゃないだろー……って話がそれた。そんなわけでキリスト云々にこだわらず絵を見ると、作者もテーマも分からんけど「聖カタリナ」と「聖バルバラ」ね、なかなか綺麗どころの女性像ですなぁー(前言覆すようでナンだが、こういう低次元な鑑賞もいいんだが、たまに虚しくなることもあるんだよね)。ええと、スカートやドレスの刺繍のキラキラというか、なんかマジすげえ質感なんだけど。近くにいた知らん人が補修したんじゃとか言ってたが。「ピラトの前のキリスト」ううむ、キリスト痩せてるなあ。「庭園に座る聖母子」子供の頭がヤバい。当時の絵画って……うむ、江戸浮世絵なんかでもそうなんだけど、子供をうまく描けなくて、大人の縮小コピーみたいで不自然になってるヤツをしばしば見かける。見たままを描くのは難しいんだろうかね。まーそんな、古い教会に普通にありそうな絵が連続する。

次は「ホラント地方の美術」ううむ、さっきと何がどう違うかってわかんねーだ。エンゲブレフツって人の「磔刑」キリストが激痩せ。なにこういう描き方流行りだったの? いやいや史実的には磔になる前に既に散々な目にあってたんで、多分こっちが正解だと思うが、思えば結構たくましい状態で磔になってるキリストもよく見るよな。それから「新たな画題へ」というコーナーだが……なんかこの辺どーでもいー絵しかなくね? 「ロトと娘たち」とか「聖クリストフォロスのいる風景」なんてのは新しい「絵画空間」ってなものを感じさせなくもない。ヘームスケルクって人の「オリュンポスの神々」えーと、ここだけギリシャ神話か。神々の絵らしいんだけど、全員裸でな、あと誰が誰だかよく分からないんで(持ってるアイテムとかで判別しろってことかもしれんが)、なんか裸族の住みかみたいにしか見えんのじゃ。

上の階へ行き、「奇想の画家ヒエロニムス・ボス」のコーナー。ここで貴重なボスの油彩画が2つ出てるからありがたく見たまえ。「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」。見るポイントはちゃんとパネル解説してくれている。「聖クリストフォロス」の方がボスらしいかな。右上の……水差しハウスとかな。でもまあ、どっちも「奇想」というにしては、ましてや「快楽の園」みたいな作品を知ってりゃあ大したレベルではないんだが。まーさすがに、これでどこが奇想なんだよとか文句が出るとヤバいと思ったのが、パネルでボスの他の作品での奇想っぷりを紹介してる。それから「ボスのように描く」ということで、なんかイヤな予感しかしねーな。でもまあ「聖アントニウスの誘惑」のなかなかよくできた模写がある。ボスをもとにした版画もある。「樹木人間」のシュールな感じもイケる。それからボス風の版画続きだがほとんど「ヒエロニムス・ボスの模倣」となっていて、要するになんちゅーかパチモン感が強い。それからいよいよブリューゲルなんだが、まず「ブリューゲルの版画」で、モノクロでかなりの数があるのだが……おっとここで時間がヤバくなってきたぞ。まともに見てるとバベルを見ている時間がなくなる……ので割愛してしまった。ちょっともったいない。

はい、上の階へ行きいよいよ「バベルの塔」です。その前に、造形のもととなっているらしいローマのコロッセオの紹介があったり、あとさっきと同じく見るポイントのパネル紹介があったりして、はいブリューゲル一世「バベルの塔」だーっ! 先も書いたが大きい絵ではない、緻密、人の集中で厳しい鑑賞環境。単眼鏡でパネルのポイントをチェックしていくが、こういうのやっていると絵を鑑賞しているんだが、絵の確認をしているだけなんだか分からない。かといって全体の印象を見ていると、ううむ、いいんだけどやっぱり細部が気になるよなあ。結局この傑作を十分堪能しようとすれば、人のいない状態で至近距離で長時間見るしかないんで、まあ今回の企画でやるのは結構難しいんじゃねーかな。そうだねー朝イチに入って、真っ先に上の階に上がってこれをじっくり見るとかしかないんじゃなかろうか。えー、あとこの作品を3DCG化した映像があって、アニメーションで動いていたりしてこれがなかなか面白い。絵そのものより楽しめるかもしれん。あと入口のところに大友克洋が内部構造を描いた作品もある。
細部に描いてあるものの面白さは、まさに読み解きなんだよなー 逆に言うと、本物を見なければならない、という要素は少ないんで、とりあえず本物は拝んでおいて、拡大模写やCG映像で楽しむというのもありじゃなかろうか。
http://babel2017.jp/

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