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2017年7月22日 (土)

ベルギー奇想の系譜(Bunkamuraザ・ミュージアム)

今度どこか海外に行っていいならベルギーだな、と思っているところの、理由がまさにこれなんだぞって感じで。愉快なベルギーの奇想じゃい。

年代順で、最初は15-17世紀のフランドル美術で、要するにヒエロニムス・ボス……なんだけど、さすがに貴重なボス本人じゃなくて工房とかボス派とかのパチモンばかりが来ている……が、パチモン呼ばわりはもったいないほどエキサイティングな奴らが来ているんで嬉しいぢゃないか。だいたいテーマが「聖アントニウスの誘惑」つまり、アントニウス君を異形の怪物で怖がらせ、エロい女で誘惑しましょう、という画家にとってやりたい放題の定番テーマだったりしてな。それにしてもボスの影響はこんなに大きかったのかというくらいボス風味の絵画がずらずら並んでいるもちろん知らんヤツの。しかも結構うまいよ。目玉はポスターにもなっているボス工房「トゥヌグダルスの幻視」。工房かよ、って侮ってはならぬ。時代的にはボス生前のもんらしいし、ボス作といったってシロート(オレ)にはこれで十分さ。結構細かいところまで描いてあって、例えば右上に火事の様子があるが、そこにシルエットで人が何人か描いてある。その部分だけでもちゃんと絵になっている。オレは単眼鏡持って行ったけど、君も持っていれば忘れずに持って行った方がいいぞ。

それから次はボスの影響を受けたピーテル・ブリューゲル(父)。そうっ、あのっ、「バベルの塔」の彼。彼が原画をやって、だれそれが版画にした。これまた「聖アントニウスの誘惑」から始まる仰天もの。うむ、確かこのあたり「バベルの塔」展でも出ていたんだけど、時間なくてスルーしちゃったから、ここでまた見れるのはありがたい。なんかアニメもあるし。「七つの大罪」シリーズの「怠惰」が何ともイイよな。大抵はハイテンションで描かれる異形なヤツラが全員グータラしている。あと、ボスもそうなんだけど「顔建物」が描かれているものが多い。文字通り建物が人の顔になっているもの。あるいはその逆か。先の「トゥヌグダルスの幻視」からしてそうだもんな。それからヤン・ブリューゲル(父)の油彩などを挟んで次はルーベンス。あのルーベンスが奇想なんてと思うかもしれないが、さすが実力派で描くとリアル感がパネエ。人動物入り乱れるド迫力系が得意で、「ライオン狩り」(確か再会)、「カバとワニ狩り」のぐちゃぐちゃ感はいいですな。

ここで一気に近代へ。19世紀末から20世紀初頭のベルギーだ。最初はフェリシアン・ロップス。名前は時々見るのだが、まとめてみるとほほぅ、なかなかエロいのが得意だな。「娼婦政治家」は風刺もの。目隠しされた裸婦と豚が高尚なものを踏みにじっている。政治家の風刺らしいんだが、あんまそう見えないな。あと、ここにも「聖アントニウスの誘惑」があって女体が迫ってくる。印刷ものの「毒麦の種を蒔くサタン」……ってこれミレーの種蒔く人のパロディではないか。次のフェルナン・クノップフは有名どころなんだけど、他が個性的で大騒ぎなので、マイルドでおとなしく見える。「ブリュージュにて、聖ヨハネ施療院」の水面に映る建物の死んだ静けさに注目だ(※8/21まで)。次がジャン・デルヴィルでオレ的には今回これが一番よかった。「赤死病の仮面」いやー怖いですねえ、でも何やら美しいですねえ。色もダークで妖しいですねえ。「レテ河の水を飲むダンテ」これはどこかで見たが、対照的に非常に明るい。女性像がキレイだ。「ステュムパーリデスの鳥」これは……カラスの大群が人を食おうとしているのか? 分からんし解説もないが、異様で怖い光景にも関わらず、画面は非常に美しくまとまっているのだ。気に入ったぜデルヴィル! サードレール「フランドルの雪」これも再会だが、地上の白い雪と、黒い空の対比がまるでマグリットの「光の帝国」風な印象を持つ。次にスピリアールト。おおスピリアールト。「堤防と砂浜」暗い、寂しい、でも好きだ。あー、以前ブリヂストンでやっていた「スピリアールト展」でもっとちゃんと見とけばよかった。いや、ちゃんと見てはいたんだが、また見たいよな。またやらないかな。誰かスピリアールト展やってくれ。それからおなじみアンソール。いやー強力なヤツ続出ですな。油彩が結構出ている。中でも「オルガンに向かうアンソール」はアンソールの魅力がイパーイ。何が? 顔だよな。アンソールは仮面のようだが味のある顔を描く。この絵には顔がいっぱいだ。あと、色使いがいいね。モノクロ版画ではオレの好きな「人々の群れを駆り立てる死」が出ている。群衆の上を飛ぶ大鎌を持った骸骨の影。うむ、奇想っぷりは版画の方が大きいかな。

20世紀から現代まで。定番デルヴォー。今回はスケッチブックが出ていて、ナマの描線が見れるぞ。あと「海は近い」という姫路所有の油彩。デルヴォーの中でもオレの好きな何枚かに入る傑作。何度見てもイイ。定番マグリット。こっちは変わり種は特になかったようだが、最も有名な「大家族」が出ている。なぜこの絵を宇都宮が持っているのか不思議だ。それから時代は現代に。磔のキリストでプレッツェル形状を作るウィム・デルヴォワ「プレッツェル」、骸骨が頭でティンパニー打ってるレオ・コーペルス「ティンパニー」、デカい頭が気持ち悪いトマル・ルルイのブロンズ「生き残るには脳が足らない」、何やら乗れる巨大レトロフューチャーを作ったパナマレンコ「スコッチ・ギャンビット」。猫にまじめにインタビューして、もちろんまじめな答えは返ってこない音声作品、マルセル・ブロータールス「猫へのインタビュー」など、奇想の末裔で迫る現代ものもいろいろだー

おなじみの再会も多いがベルギーの奇想を一望できる。初めてなら早く行かれたい……というかここは金曜土曜は夜9時までやってるから、そこが狙い目か。あと作品保護のため会場はめっぽう寒い。冷え性の人は入り口でケットをゲットだ。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_belgium/

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