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2017年7月16日 (日)

不染鉄(東京ステーションギャラリー)

「ふせんてつ」と読みます。没後40年、21年前に回顧展があっただけの日本画家、だそうで。もちろん知らんかった。ウワサ(ツイッターの検索ぐらいだが)によれば、なかなかいいようなんだが果たして……

最初の「暮色有情」という掛け軸……むっ、なんか今まで見たことない感じだぞ。日本家屋の家並みを俯瞰して(見下ろして)いるんだが、パースがうまいことかかっているのがちょっと日本画っぽくない。それでいて輪郭の曖昧な朦朧(もうろう)体。それから家の絵が続くが、朦朧体じゃなくてむしろ線画メインになってくる。しかも細かい。細密画っぽい。ペン画かと思ったが筆らしい。「雪之家」なんてのはつららが下がっているのだが、単眼鏡で見たら、つららが結構リアルな質感なんだな。あーそうそうガラスケース入りも多いので、単眼鏡あった方がいいね。あと、軽く描いた小品もあり「伊豆風景」なんか汽車がカワイイ。巻物「思出之記(田圃、水郷、海邊)」は家々イパーイ。

次は山水画いろいろ。山水画でも線描が細かくてかなり力入っている。朦朧のヤツもあるけどね。ただまあ、ここはものすごいって感じではないな。コーナー最後の「聖観世音」の線描はかなり繊細にして無駄がないんで、スゲーとは思ったりするが。

階が変わって、奈良とか富士山がテーマになってくる。薬師寺東塔に惚れ込んで、真横からパースもかけず、細かい描写をする。しかもシンメトリー。大仏殿もシンメトリーですな。「春風秋雨」は四幅対で、線描山水、富士山、薬師寺東塔、大仏殿というおいしいテーマ4つが一度に楽しめるぞ。しかし、次の部屋の大きな絵、ポスターにもチラシにもなっている「山海図絵(伊豆の追憶)」を見て……ナンジャこりゃあ! いや、ポスターとか見てた限り、ちょっと変わった富士山の絵かな、ぐらいに思っていたが、実物を見てその異様さにぶっ飛ぶ。まず線描写が写実的にして細かい。マジ細かい。草木も日本家屋の家並みも丁寧に書いている。手前は海だ。もっと手前にゃ魚がいるから海の中まで描いてある。家並みの向こうに富士山……その向こうは雪国で家も見える。いや、スケールおかしいだろこれ。この富士山の標高は数十メートルじゃないか? いや、でも富士山に見える。富士山以外のなにものでもない。めちゃくちゃマッドな構成ながら、丁寧な写実で不自然さを蹴散らして絵として成立させてしまうセザンヌもびっくりなヤツだ。この絵だけで元が取れる。ポスターじゃダメだ。本物を見ろ。この絵を見て驚かないヤツは絵画鑑賞には向かないから水族館でデートでもしてた方がいいと思う。他にも富士山いくつかあるけど、こいつを見たあとではマッドが足りない。普通だな。

海の絵を描いている。青いのかと思ったら墨絵なもんで黒く描いているんだな。中でも「南海之図」むううう……これも異様な感じがするな。下半分黒い海。上の方に島……なんだけど、この島が岩だらけというかフラクタルというか、結晶みたいというか、とにかく妙な形状で存在感ありありで迫ってくるぜっ。他にも異様な島ものあるよ。

それから回想の風景とか。「山」は木がいっぱい。絵はがきなどもあるが、絵はがきサイズのまっとうな作品って感じで……この辺になると疲れてきてボケーと見てたんだが、今リストを見ると絵はがきのタイトル「ジキルとハイド」とか「村山槐多死す」とか面白そうじゃないか。注意してなかった。「古い自転車」にゃポエムが書いてある。それから「思い出の海の家」なんぞは木の板でできている。「海村」は刺繍だな。着物もある。なんかマイナーな人の割には手広いぞ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201707_fusentetsu.html

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