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2017年8月18日 (金)

道が拓ける(キタコレビル)

高円寺にある半壊しているような建物の中というか半分外みたいなところに、アートグループChim↑Pomが「Chim↑Pom通り」という小道を作り(誰でも通行可)、ついでにその半壊しているような建物で個展(これは有料)をするというもの。まず会場を見つけるのに苦労し、ウロウロしたあげくタブレットの地図とGPSを頼りにして、やっと外から見えるデカい「C」のネオンに気づく。

Chim↑Pomといえば、広島上空に「ピカッ」という飛行機文字を書いてヒンシュクを買ったり(スケールとインパクトからして今のところこれが最高傑作だと思う)、311後に渋谷の岡本太郎の絵「明日の神話」に原発事故を彷彿とさせる絵を追加したり、というお騒がせ集団的なところや、福島原発にレッドカードを掲げに赴いたりと、社会的な要素を取り入れていて、グループのチャラい雰囲気とはうらはらに意外と計算していて戦略的だったりする。

建物だか廃墟だかバラックだかみたいなところにある薄暗い小道に入っていって、受付でお金を払って(500円)、最初の展示はおなじみ「SUPER RAT」渋谷などでとっつかまえたネズミを剥製にして、ついでピカチュウのカラーリングをするというおふざけ傑作。いや、何度も見てるが結構好きだよこれ。今回は都市の廃墟のジオラマの中に置かれていたりする。で、その一つが円柱状のケースに入っているが、地面の中まで穴と通路がいろいろ見える。なんだこりゃと思っていると、ネズミが顔を出した、とか言われ、見ると、ジオラマの中の穴から本物のネズミが顔を出しているではないか。そんなしかけなのか。本物ネズミ……なんかカワイイ顔してるじゃねーか瞳もつぶらだし。すぐ引っ込んだが何度か顔を出したりした。何でも前回展示の歌舞伎町でとっつかまえたネズ公らしい。

急階段、というかほとんどハシゴを上る。若者はいいけど、こっちはバッグを肩から下げた中年ド真ん中で結構怖い。上の部屋ではビデオ上映。前回の歌舞伎町展示の様子。解体寸前ビルでやって、会期後作品もろともぶち壊す様子。なんか、作品ごとブッ壊す様子がなんとも言えんがダイナミックだ。いや、行きそびれたんよこの展示。行っとけばよかったな。歌舞伎町展示でのイベントの様子も少し流れていて、おや、あれは戸川純&Vampilliaライブに出てきたVMOじゃないか。あんなところで活動してたんだ。それからビデオでは今回の道を造る様子も紹介。歌舞伎町で出たゴミなどを敷き詰めているのだが、ちゃんとその上にアスファルトで舗装している。こういう土木作業が地道でいい。

階段を降りて、今度は地下室があるという。行くとこれまた急ハシゴで怖い。地下はなんとこのキタコレビルの地下部分をガラス張りで見せるものだが、ほとんどゴミの蓄積。急ハシゴを上って地上へ……って、これミニスカ女子は後ろに男子を連れてこれませんな。丸見えだもんな。上はマンホール(重くはない)になっていて、それを開けて地上へ。この瞬間はなかなかおもしろい。奇しくも上にどこぞの母子がいて、「ほらーでてきたよー、こんにちはー」と子供に見つめられてマンホールから出てきたネズミ気分だ。上の展示で目立つのが、あの渋谷パルコ(現在改装中)から持ってきた「P」の巨大ネオンサイン。それがすぐ頭上でチカチカしてる。これはパルコでやった個展でも見ていてあの時は暗い部屋の中で「C」と「P」が音楽に合わせてチカチカしていたんだが、あん時はあまりすげえとかいう印象はなかった。しかし今回、廃墟スレスレのキタコレビルに飾られていると、その、あまりの場違い感に驚く。あれがこんなところに! なんかすげえなおい。「C」は屋根(?)の上で、外の通りからなんとか見える感じ。

この手の破壊しかけみたいな展示はともすれば「メチャクチャやってりゃカッコイイだろ」ってだけのつまらんものになることがあるが、そこはChim↑Pomで、背景に割とちゃんとした、世の中で破壊されゆくものと、それとともにあるものに目を向ける、というようなコンセプトがあるので、そんなメチャメチャな印象はないし、なかなか面白い。うーん、でも私はまた社会に対してイタズラというか、ああいう挑発的な作品を見たいものですなあ。まあ鑑賞者は気楽なものだが。
http://chimpomparty.com/exhibition/

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2017年8月 7日 (月)

藤島武二展(練馬区立美術館)

明治期あたりの洋画家かなあ、というぐらいの前知識で、見終わっても、明治期ぐらいの洋画家だったんだなあ、という感じ。なぜか? バリバリ個性的なアーティストというより、明治の洋画における先導者あるいは指導者というところみたいなんで(あの佐伯祐三も弟子なんだって)、非常に多彩な画風を身につけて表現している一方、これが青島いや藤島だぁ、というのが何となく見えてこない。いや、うまい画家ですよ。皇室お買い上げ作品もいくつも描いてるみたいだし。

最初に同時期の洋画家などの紹介、山本芳翠や黒田清輝の影響を受けてたそうで、それらの絵が出ている。山本はよく知らんが黒田は何となく分かる。外光派でアカデミズムのラファエル・コランのキレイキレイで裸婦が外にいるようなヤツね(いやそれだけじゃないんだけど)。初期の藤島の絵が並んでいて、「女の顔」の白い絵の具は光のつもりか。「桜の美人」顔がなんで緑色がかっているのか。黒田の絵「アトリエ」がありますな。その影響か「海浜風景」が美女二人の黒田風で、まあ黒田も一つっきゃ歳違わないんだけど。「池畔風景」も美女二人もの。

次に有名な与謝野晶子の「みだれ髪」の表紙がある。これで、ああ藤島ってこの人か、と思うであろう。時はアール・ヌーヴォーが流行ね。その辺の影響を受けて、書籍のデザインとかやってる。油彩では「夢想」が象徴派のロセッティの影響を受けているというが、まあいわれれば確かにそうかなと。「三光」の版画は思いっきりミュシャ風。かように誰それな感じってのが非常に多い。別にパクリではなく、ソシャクして自分のものにして再構成しているし後進の指導にも役立てている……んだろうけど、なんかアーティストとしてコレだーっ、と突っ走らないところが冷静であるがちょっともどかしくもある。

パリ留学したそうで、それでますますいろいろな西洋美術の動きを身につけた。留学先で影響を受けたコルモンの絵が一枚「海を見る少女」肉感……な感じ。コルモンといやあ私がオルセーに行った時にもっとも印象に残った「カイン」の人ですな。あの絵はデカかった。スゴかった。カロリュス=デュランって人の「アンドロメダ」。定番テーマで普通は裸女が鎖でくくられているヘンタイ的な絵が多いんだけど(それを描くのが目的よ)、この絵は普通の裸婦画に見える。キレイキレイにやるアカデミズムですな。その影響か「幸ある朝」……いやこれはちょっとラフだぞ。裸婦ではないが(服着てる)。あと裸体像とかもあるが。「セーヌ河畔」は印象派風で、「糸杉(フラスカティ、ヴィラ、ファルコニエ)」はゴッホみたいな、いや、みたいじゃないか。あとラファエロの模写があるが首が太いな(元絵も太いんだ)。

「模索」というコーナーになっているが、すでに模索しているというか、常に模索しているというか、「うつつ」という野心作は、フォービズムの影響と書いてあるが、よく分からぬ。「匂い」は女性像をカッチリ描き、「静」は、淡い彩色で印象派でフレスコ画風、裸婦はこれは、モディリアーニ風か。「カンピドリオのあたり」も縦長画面にちょっと凝った構図で魅せるが、かといってこの路線を突き進むわけじゃない。

「転換」というコーナー。「ピサネルロの模写」で横向きのルネサンス風に挑戦。それを消化して「鉸剪眉」が描かれ、その他横顔は結構コダワリ作品が多いようです。あとで検索したら「蝶」って誰でも知ってるような女性の横顔の、おお、あれ藤島なんだ(何を今さらとか思うかもしれんが)。

「追求」というコーナーも既に追求をいろいろやっているところで。「浪(大洗)」はラフな感じ。「台湾娘」をはじめとするアジアがテーマの絵が並び、「山上の日の出」は大画面でシンプルな空。「朝の港陽」はモネの「印象、日の出」を彷彿ととさせる。

「到達」というコーナーでやっとたどりついたところは……よく分からん。が、「少女」のようにアジアっぽい、生き生きしたのも描く。あとはシンプルな風景。

無難なものからデザインから野心作まで、いろいろ揃っております。どれがお好みかな。午後のひとときにいかがでしょうか。
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201706041496581300

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