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2017年8月27日 (日)

サンシャワー 東南アジアの現代美術展1(国立新美術館)

どうも「アジアの……」と銘打っている現代美術展の鑑賞は労力がかかる……というのも、その国の社会情勢やら社会問題を反映した作品が多い傾向があるので、ますそのお国事情を解説から読みとらないといかん。ボケーと見ているだけじゃ分からん作品が多い。そういうんでなしに、ただアートとはなんぞや、みたいな、言うなればあんまし考えなくてもいいような作品は「アジアの……」とは呼ばれず、通常の現代美術展、でお目にかかる。たとえそれが、アジアのアーティストであっても。つまりわざわざ「アジアの……」と入っている企画展に赴くにゃあ、そういう作品群に出くわす覚悟が要るわけだ。いやー、この企画森美術館と2館でやってて、ハシゴしようかと思ったが、1ヶ所つだけでオーバーフローよ。森はまたの機会じゃ。

最初は「うつろう世界」というコーナーで、世界地図とか使ったもの。イー・イランの作品タイトル。この作品はろうけつ染めで、自分の祖国(マレーシア)付近をクローズアップ。ティファニー・チュンのベトナムからの世界地図刺繍がなかなか。ウォン・ホイチョン「移民の皮膚/先住民の皮膚」というこれが結構面白い。植物の皮を人の顔の一部の形状にしてある。植物の解説付き。アウン・ミン、「五大陸-世界は壊れかかっているか?」など、世界地図が血を流したりボロボロになっていたりとそのまんまストレートな表現。ウダム・チャ・グエンのインスタレーション「タイム・ブーメラン」。五本指で五大陸を測る、というような彫刻作品を巡る、なんか映像とか石膏の世界地図とか、それを何人もの人で破壊するのとか、一連のいろいろ。

「情熱と革命」というコーナー。ますます社会派風味。ワサン・シッティケート「失われた情報」というプラカードを持った全裸のシッティケートの彫像50体が壮観。股間を見ると全員エレクチオンしてるお。FXハルソノが木のスタンプ一つずつ押すインスタレーション。言葉「DEMOCRASY」。最後の「Y」だけ故障中だと……わざとかな。同じく「遺骨の墓地のモニュメント」は赤ランプを使ってハデハデで。サンチャゴ・ホセの「情熱と革命」は絵とかを組み合わせた大型作品。ホー・ツーニェンのトラと人間の関わりの歴史についての部屋丸ごとインスタレーション「2匹または3匹のトラ」は映像もので、音量もデカくてそこらじゅうに聞こえているんだが、映像もパワフルでつい見入ってしまう。仰々しいナレーション(ポエトリー)がイカす。ティン・リンは反政府を見なされブチ込まれたムショ内で描いた作品群。ヘリ・ドノの「政治指導者へのショックセラピー」はキッチュな電動操り人形で、1時間に1回動かしてくれるらしいんで、他を見て、その時間めがけて行ったら既に終わったなどと言う。どうも作動は数秒らしい。気をつけろ。

「アーカイブ」コーナーはアートの流れ解説らしいが情報が多過ぎて見てられん。「さまざまなアイデンティティ」コーナー。植民地から独立した国なんかで、自分の民族的アイデンティティを見つめ直そうぜみたいな作品群。あーでも、日本人が日本民族のアイデンティティを誇る作品なんか作ると自称リベラルが文句つけたりするけどな。アジアの人達が自分の民族のために戦ったとかいうと素直に賞賛するくせに、日本人が日本のために戦うとか言うと、そんな戦争みたいなこと言うのは許さんとか言うしな。まーそれはさておき、ブー・ジュンフェン「ハッピー&フリー」はまんまカラオケルームで、シンガポールがマレーシアから独立しなかったらという想定のもと「統一マレーシア」の明るい歌謡シーン……だよね。こういうユーモアが日本のアートにもあるいは社会活動家にもほしいよねえ。リー・ウェン「奇妙な果実」。「イエローマン」という黄色い体に赤い提灯満載の姿で街をあるいたりするパフォーマンス。黄色は黄色人種というアイデンティティ。しかしけったいな格好でうろつくのは、かの折元立身の「パン人間」を思わせる……が、パン人間はパンという日常アイテムであり、キリスト教のアイテムでもあるところに着眼したもんなんでアイデンティティとは関係ない。むしろ西洋のアイデンティティに対する挑発でもある。というまあ、大きな違いがありますね。ムラティ・スルヨダルモのインスタレーションは、黒い服とチョークと……うむ、規模は大きいが意味がよく分からなかったお(この辺から疲れてきたの)。イー・イラン「バラ色のメガネを通して」も大量の写真を使ったインスタレーション。壮観だお。それから映像もんが連発するが見るのは時間もかかるし割愛。

最後「日常の生活」コーナーでもまだまだ作品が続く。ううむ……いかん去年見たディン・Q・レがあったのか、見落としてたぞ。何しろナウィン・ラワンチャイクンの生地の店丸ごととかいう展示があったり、スラシー・クソンウォンの大量の毛糸(だよな)を敷き詰めたふわふわ大部屋が目立っていて、インスタ蠅の巣窟になっていたり、アングン・ブリアンボドの実際に雑貨を買える店が出ていたり。

いやー、まともに見ていると、この会場だけで膨大な時間を使う。ド目立ちするものだけ見ていても結構スゴいぞ。森美術館はまた別の機会に。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/sunshower/

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