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2017年8月 7日 (月)

藤島武二展(練馬区立美術館)

明治期あたりの洋画家かなあ、というぐらいの前知識で、見終わっても、明治期ぐらいの洋画家だったんだなあ、という感じ。なぜか? バリバリ個性的なアーティストというより、明治の洋画における先導者あるいは指導者というところみたいなんで(あの佐伯祐三も弟子なんだって)、非常に多彩な画風を身につけて表現している一方、これが青島いや藤島だぁ、というのが何となく見えてこない。いや、うまい画家ですよ。皇室お買い上げ作品もいくつも描いてるみたいだし。

最初に同時期の洋画家などの紹介、山本芳翠や黒田清輝の影響を受けてたそうで、それらの絵が出ている。山本はよく知らんが黒田は何となく分かる。外光派でアカデミズムのラファエル・コランのキレイキレイで裸婦が外にいるようなヤツね(いやそれだけじゃないんだけど)。初期の藤島の絵が並んでいて、「女の顔」の白い絵の具は光のつもりか。「桜の美人」顔がなんで緑色がかっているのか。黒田の絵「アトリエ」がありますな。その影響か「海浜風景」が美女二人の黒田風で、まあ黒田も一つっきゃ歳違わないんだけど。「池畔風景」も美女二人もの。

次に有名な与謝野晶子の「みだれ髪」の表紙がある。これで、ああ藤島ってこの人か、と思うであろう。時はアール・ヌーヴォーが流行ね。その辺の影響を受けて、書籍のデザインとかやってる。油彩では「夢想」が象徴派のロセッティの影響を受けているというが、まあいわれれば確かにそうかなと。「三光」の版画は思いっきりミュシャ風。かように誰それな感じってのが非常に多い。別にパクリではなく、ソシャクして自分のものにして再構成しているし後進の指導にも役立てている……んだろうけど、なんかアーティストとしてコレだーっ、と突っ走らないところが冷静であるがちょっともどかしくもある。

パリ留学したそうで、それでますますいろいろな西洋美術の動きを身につけた。留学先で影響を受けたコルモンの絵が一枚「海を見る少女」肉感……な感じ。コルモンといやあ私がオルセーに行った時にもっとも印象に残った「カイン」の人ですな。あの絵はデカかった。スゴかった。カロリュス=デュランって人の「アンドロメダ」。定番テーマで普通は裸女が鎖でくくられているヘンタイ的な絵が多いんだけど(それを描くのが目的よ)、この絵は普通の裸婦画に見える。キレイキレイにやるアカデミズムですな。その影響か「幸ある朝」……いやこれはちょっとラフだぞ。裸婦ではないが(服着てる)。あと裸体像とかもあるが。「セーヌ河畔」は印象派風で、「糸杉(フラスカティ、ヴィラ、ファルコニエ)」はゴッホみたいな、いや、みたいじゃないか。あとラファエロの模写があるが首が太いな(元絵も太いんだ)。

「模索」というコーナーになっているが、すでに模索しているというか、常に模索しているというか、「うつつ」という野心作は、フォービズムの影響と書いてあるが、よく分からぬ。「匂い」は女性像をカッチリ描き、「静」は、淡い彩色で印象派でフレスコ画風、裸婦はこれは、モディリアーニ風か。「カンピドリオのあたり」も縦長画面にちょっと凝った構図で魅せるが、かといってこの路線を突き進むわけじゃない。

「転換」というコーナー。「ピサネルロの模写」で横向きのルネサンス風に挑戦。それを消化して「鉸剪眉」が描かれ、その他横顔は結構コダワリ作品が多いようです。あとで検索したら「蝶」って誰でも知ってるような女性の横顔の、おお、あれ藤島なんだ(何を今さらとか思うかもしれんが)。

「追求」というコーナーも既に追求をいろいろやっているところで。「浪(大洗)」はラフな感じ。「台湾娘」をはじめとするアジアがテーマの絵が並び、「山上の日の出」は大画面でシンプルな空。「朝の港陽」はモネの「印象、日の出」を彷彿ととさせる。

「到達」というコーナーでやっとたどりついたところは……よく分からん。が、「少女」のようにアジアっぽい、生き生きしたのも描く。あとはシンプルな風景。

無難なものからデザインから野心作まで、いろいろ揃っております。どれがお好みかな。午後のひとときにいかがでしょうか。
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201706041496581300

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