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2017年9月24日 (日)

シャガール 三次元の世界(東京ステーションギャラリー)

幻想的絵画でおなじみのシャガールの、立体ものかあ、あんまし期待できねーなー、などと思っていたらこれがなんと、やるじゃんシャガール、実は絵画と同じぐらいイケる、というお話。

最初に有名な「誕生日」って絵があるんだけど、女が来て男が舞い上がってチューしてるヤツ。これは1915年に描いたのを、1923年に自分でほとんどオリジナルと同じぐらいのレベルで模写したものだって。で、それの彫刻版っつーか顔だけのがあります。この段階では大理石でなかなかいい感じだなーぐらいしか思わなかった。

それから年代順で初期のね「座る赤い裸婦」なんてのはゴーギャンの影響だそうで、確かにですね「本当の色なんかどうでもいいんだっ、裸婦が赤く見えたんなら、You赤く描いちゃいなYo!」というジャニーさんじゃなかったナビ(ゴーギャン)の声が聞こえてくるぜっ。「のけぞる男」は初めて見るが文字通りのけぞってる男の絵だ。「静物」って絵がある。これ文字通り静物でキュビズム風なんだけど、色彩が思いっきりシャガールでな、静物画は珍しいので新鮮だ。シャガールは流行の絵画スタイルを結構研究していた模様。「櫛を持つ裸婦」なんてのもキュビズム。

で、ここから立体ものが出てくるが、最初は彩色陶器だった。つまり花瓶っぽい……んだけど、これがまあ結構スゴい。最初に「青いロバ」ってのがあってだな。ロバの上半身みたいな花瓶なんだけど、見る方向によりいろいろ表情が変わる(※ロバの表情じゃなくて作品の表情な)。色もシャガール風についているもんだから、シャガールの絵に動きが入ったようなものである。うむむむ、こ、これは面白い。「彫刻された壷」も彩色陶器。器の内側に裸婦、外側に恋人達。「散歩」なんかもいいですな。花瓶の形と男女の体がうまく合っている(ったって分かんないと思うんで実物見てくり)。「青い婚約者たち」もいろいろな方向から見れる。つまり立体でありながら「絵画的」に楽しめるのだ。うーん計算して作ってある。これら立体の構想下絵もあるぞ。

ここから「立体への志向」ということで、どんな立体をどういう傾向で作っていたかをコーナーごとでまとめている。最初は「動物モチーフ」でもちろん動物なんだけど、「空想の動物」なんていう何だか分からないけどシャガールワールドの動物がいて、そのブロンズとかね。「ラ・バスティーユ」という絵があって、これはシャガールの色彩ど真ん中で私は好きだな。やっぱこの、青、赤、紫の入り乱れて深い感じだよな。

階を移動し「肖像、二重肖像」のコーナー。愛しているから顔が溶け合ってくっついちゃったのだ……というホラー的シチュエーションもシャガールの絵画だと美し……いや、ま、ちょっとキモいが。いや、キモいっていうか、絵画「二つの顔を持つ紫色の裸婦」なんて幽霊的な、「二つの顔のある頭部」なんて心霊的な、つまりそのう、生理的な何かではなく霊的な何かを感じる次第である。立体では「二重の横顔」という、文字通り顔二つなんだけど、これ変な立体だなあと思ったら羊の骨だってお。

「重なりあうかたち」コーナー。これは意外なものを一つの画面に入れ込む「デペエズマン」って手法……を集めたらしいが、見ていてもよく分からん。まあシャガールの絵が総じてデペエズマンみたいなもんだしな。絵画では「緑の目」というのが靉光みたいで面白い。全体緑で。立体では「女と動物」大理石のどっしりした感じ。大理石ものは彫刻で彩色はしていない。なもんで、私としては彩色された立体の方がシャガールらしさがあって好きなんだが、この大理石ものも悪くはないですよ、うん。シャガールが材料の特性を理解して作っているのが分かる。

「垂直性」のコーナー。ここも石削っているのが多いのだが、要するに「柱」っぽいもの。石はちょっと石柱っぽさがあった方がイケる、ということに気づいたシャガール。「アダムとイヴ」は円柱、「キリストの磔刑」も石灰岩で柱っぽい。磔刑ったって十字架じゃなくて顔のところだけど、なかなかよい。絵画では、やはりキリストものが多いのだが、「キリストと雪の村」のキリストは……これはなんか緊張感がなくてイマイチだな、「橋の上のキリスト」も磔なんだけど、表情が穏やかなもんで、一見腕を広げてウェルカムしているようにも見える。これで「立体への志向」コーナーはおしまいなのだ。

「平面と立体の境界 聖なる主題」コーナー。文字通り宗教ものイパーイ。絵画と立体と、板への浮き彫りが入り乱れる。「エルサレム(嘆きの壁)」は手堅い絵画、「モーセ」は石でできた柱もの、「パテシバⅠ」「パテシバⅡ」は、伏せたドーム型っていうんですかね、丸いのね。あとは「『聖書』のための挿し絵」ということで、版画ができあがっていく課程を展示していたり。次が「素材とヴォリューム」のコーナーで、絵画「赤い背景の花」はなかなかの大作。隣の絵画「画家と妻」で妻は分かるが画家はどこだ? おっと背景の赤色にまぎれておる。彫刻「女=雄鶏」大理石とブロンズでそれぞれ浮き彫りで、いい感じではある。最後の方の絵画「紫色の裸婦」も大きめ作品。「アルルカン」は下絵で適当にそこらの布なんかを千切ってコラージュで作った人物を拡大してキャンバスに描いた面白もの。

最初の彩色陶器の立体絵画っぷりがあまりによかったもので、後半というか終盤はやっつけぎみな鑑賞になってしまった。いや、シャガールがこれだけ立体にこだわって優れたものを作っていたとは知らなかったし、知らない人も多いと思う。これは「行き」だぞ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201709_chagall.html

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2017年9月17日 (日)

驚異の超絶技巧!(三井記念美術館)

明治工芸から現代アートへ。そういえば藝大美術館だかでやってたのを見落としています。なもんでこれには期待&絶対混むと思い、とにかく早めで雨で台風接近中の本日狙いで的中。割とすいていた。小6の娘が同行。

そういえば2014年に同じようなものここでやってるんだな。でも今回は現代アーティストの技巧的作品も展示してる。で、これがまあスゴい。バカテク連発。最初にある高橋賢悟「origin as a human」からして細かい花の破片(金属らしい)をちまちまくっつけて膨大な手間だと思わせる。

この手の企画でおなじみの自在置物も、明治の金属板でできたヤツより、現代作家の本物そっくりなのに驚く。春田幸彦「有線七宝錦蛇皮鞄置物『反逆』」これ七宝ですか? 蛇皮の鞄でデカい蛇の頭ついてるんだけど。あと橋本雅也「ソメイヨシノ」鹿の角から彫りだした、なんだよおいこれしっかり花びらじゃないか。前原冬樹の「一刻:皿に秋刀魚」のバカテクにも仰天。これ一つの木から皿とサンマ(骨も見える食べかけ)をいっぺんに彫りだしているんだと。ほええええ。稲崎栄利子「Arcadia」はどう見ても白い珊瑚なんだけど、陶器の作り物だとかで、磁土をこまかくくっつけているらしいが、あまりに有機的で細密ので、本当に作り物なのか、なんだかよく分からないがこれもひたすらスゲエ。次の間に明治の有名どころの安藤緑山「胡瓜」象牙を彫って着色して本物そっくりだお。でも、ここまでの現代テクを見ると、割と普通に見れてしまう。

あとで気がついたのだが壁面にあったらしい山口英紀の超絶水墨を見落としてた……シマッタ! まあ現代アートだし、またどこかでお目にかかるでしょう。

大きめの展示室にゃ七宝、漆工、木彫・牙彫、陶磁がずらずら。七宝はもともと細かい絵の印象が強いので、見ていても、あーなんか普通だな、という感じ。でも本多與三郎(よさぶろう、らしい)の「龍鳳凰唐草文飾り壺」は球形で細かくて見応えがある。あとは陶磁で初代宮川香山「崖二鷹大花瓶」これは花瓶にでっかく鷹がくっついている感じ。深彫りというんだって。部屋の中央のケースでは安藤緑三特集。本物そっくり果物とかキノコとか。お見事……なんだけど、我が娘の言うことにゃ、世界堂にあるアレに見えると。アレというのは、静物画練習用のフェイク果物。ハ、ハハハ確かにあれ本物そっくりでよくできてるよな。

次の展示コーナーは自在置物特集。やっぱり超絶技巧といったらコレだよな、という人気の定番。現在作家、満田晴穂の「自在蛇骨格」がマジヤベエレベル。自在蛇は時々見るが、骨になった蛇が自在という仰天もの。同じ作者の「自在十二昆虫」もなんか動くべきところは全部動かせる、というバカテクもの……なんだけど、展示では置いてあるだけなんて、隣の明治期の昆虫と見かけはそんな変わらないのだ。あとは鯉だの龍だのの自在置物。金工のコーナーになり、山田宗美「瓢形一輪生」一見ただの黒い金属瓢箪……なんだけど、一枚板から曲げて加工して作られたらしい……え? この絶妙な曲線をですか? 曲げて作ったとですか? というシブい超絶技巧が冴える。雪峰英友「菊尽香炉」は、分かりやすく金属を削って細かく花いっぱい。それから刺繍のコーナーで、刺繍絵画「粟穂に鶉図刺繍額」これのポイントはメチャ細い意図で作られたクモの巣……なんかこれで思い出したのは昔プラモデルで、戦闘機のアンテナ線を作るのにプラスチックをライターで炙って細く伸ばし、それを使ったことだな。ほとんどうまくいかないが、できる人は超できる。

次の展示室にゃ、一見白い刺繍絵画だけどブラックライトを当てると模様が浮き上がる青山悟作品。白い世界地図に国境が浮き上がる、なんてのもあるぞ。

最後の展示室。ほとんど現代作家。大竹亮峯の「自在 眼鏡饅頭蟹」が丸っこくてカワイイ。ここでも前原冬樹のバカテク炸裂「一刻:有針鉄線」は一本の材料から有針鉄線とそれに絡まる蔓を彫り出すというもう狂ったような作品。隣の「一刻:空き缶、ピラサンカ」も木で空き缶作るんかいというシロモノ。橋本雅也の鹿の角で「キク」「ダッチアイリス」これもスゲエ。あと鈴木祥太「綿毛蒲公英」金属で綿毛のタンポポを作っている。うわああ。また春田幸彦の七宝の鞄がある。口に歯がついとる。稲崎栄利子の陶器もある。これは黒い自然物なんだけど、あまりに自然物していて、陶器と言われても驚く以前にピンとこなさすぎる。臼井良平は水の入ったビニール袋とか潰れたペットボトルとかをガラス工芸で作る。むうう。

そんなわけで誰が見たって驚くようなヤツが満載で、こりゃ混むから早く行ってね。
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/

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2017年9月13日 (水)

そこまでやるか 壮大なプロジェクト展(21_21 DESIGN SIGHT)

大規模プロジェクトの一挙紹介だそうで、グッとくる展覧会タイトルで、前から気になってはいたんだがやっと行ってきた。出品リストのようなものが無いようなんで、メモ……も取るのが面倒になったのでチラシと記憶頼りね。

最初は大規模梱包でおなじみのクリストとジャンヌ・クロード。湖に100,000平方メートルの布を渡すのと、ドラム缶を大量に積み上げて構造物を作る「マスタバ」というプロジェクト。いずれも構想図などを展示。あとクリストのプレゼンビデオ……なんだけど長いから見てなくてな。いや、現地が一番おもしろいというミもフタもない事実はさておいても、布敷く方は実現したんだから写真ぐらいあってもよくねえか? ビデオの中にあったのかな。ドラム缶は実現してない模様。しかし、クリストとジャンヌの現物を一度は見てみたいものだな。

次、石上純也の中国だったかの教会プロジェクト。幅1.35mで高さ45mの……ったってピンとこないよ。構想図はあるけど。模型ぐらい無いのかい……と思ったらなんと展示室内の曲面壁かと思ったヤツが模型だった。なんちゅーか曲がった壁の隙間に入っていくような感じで神に出逢うんじゃ。その演出分からんでもない。

次は500人が入る風船……ってことで福島の復興プロジェクトの一つで、デカい風船状のコンサートホールだお。模型があるが外観は紫色プラムみたいでイマイチだ。でも内観はなかなかよさそう。何より、実際にミッドタウンにも出現するんだって。

淺井祐介の連続時間96時間とかいうプロジェクトだが、なんか泥を使ったとかいう絵なんだが、何がそこまでやるのかイマイチ分からず。パッと見、アウトサイダーアーティストのアドルフ・ヴェルフリっぽく見えますな。

ヌーメン/フォー・ユースのテープ21,120mの床。というものだけど、ビニールテープを大量に使って、曲面で囲まれた空間を作り上げる。展示室内にド目立ちするデカいもので、これは目の前で実現しているプロジェクトだ。順番で中に入れるぞ。オレも入ってみたが、結構頑丈にできている。ちょっとした異世界気分だ。子供の遊具になりそう。

ダニ・カラヴァンの長さ3,200メートルの彫刻……は構想図でイマイチ分からず。

ジョルジュ・ルースは重なる1°の奇跡……だがなんのこっちゃ。はい、これ無数の細い材木(だよな)を使った構造物なんだけど、ある一点から見ると、きれいな円形の模様が見える。この手は何度か見たことがあるので、ま、そこまでやるかってほどのもんではないが、見るものとしては面白い。写真も撮れるお。

これで全部かな、と思ったら隣のギャラリーがもう一つの会場。西野達の実現不可能性99%というものだそうで、この人は、観光地とかいろんなところをそのままホテルにするとかなんとか無理矢理な構想している。で、ここのギャラリーをカプセルホテルにしたものが、そのまんま展示。ちゃんと個室というかパーソナルスペースに布団が敷いてあって、タブレットも置いてある。実際に中の布団でくつろげるぞ(15分制限あり)。面白いのはテーブルセットの部屋やら給湯室までしっかり作ってあるのだ。最初このギャラリーの施設かと思ったら「展示品」とか書いてあるので、おお、これも作品かと思った次第である。

体験っぽいのもあってなかなか面白い。
http://www.2121designsight.jp/program/grand_projects/

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2017年9月 9日 (土)

ボストン美術館の至宝展(東京都美術館)

広い分野からちょっとずつー……みたいなんで、あまり期待していなかったんだけど、行ったら、あーこりゃもっと早く行っておくんだったなーっていうぐらいのもんがある。10月9日までだってお。

最初はエジプト美術。ま、これはオレにゃあアウェーなもんで、流し見程度だお。でも石に刻まれたエジプト文字とか、なかなか味があってイイですな。頭の像の石が白くてキレイだぞ(ってな程度の印象)。「ツタンカーメン王頭部」とかあるんだけど、例の金色じゃないな。小さい金の人形がビッチリ並んでつながっている首飾りもありましたな。そういえば、ボストン美術館のコレクションを成り立たせた偉大なコレクター諸氏もパネルで紹介されていたりするのです。

次はいきなり中国美術に。五百羅漢図からの2つもなかなかだが、やっぱし大作の陳容「九龍図巻」巻き物で長い。文字通り龍の絵が並んでおって、物語っぽくなっている。龍もいいんだけど、なんか雲とかのね、渦がいいよね、渦がね。

日本美術。これがボストン美術館の重要なコレクションで、要するに明治の美術なんて分野よく知らなかった日本でアメ公がメボシイものをゴッソリ持ってっちまいやがった。まあ保存ちゃんとしてるからその方がいいのかもしれないが。ともあれコレクター紹介では日本でのおなじみの名前が飛び交う。モースとかフェノロサとか岡倉天心とか。展示はええとまず乾山とか仁清の焼き物があってだな、絵はいきなり司馬江漢じゃねーか! 「秋景芦雁図」鳥なんです。油彩じゃなくて日本画だけど結構立体的につまり得意の洋風で迫ってる。色が結構ちゃんと残っていて……そう、江漢の絵って退色してるのが多いんだけど、これはちゃんとしてる。いや、他の展示品も保存がメチャいい。昨日描いたみたいな色で残ってるんだよね(あるいは修復したかだが)。与謝蕪村の屏風。よっ文人画。空間のあけ方がなかなかだ。曾我簫白「飲中八仙図」例の奇面フラッシュ炸裂。「風仙図屏風」は再会だと思うが、これも例の顔と、あと風巻き起こる渦巻きがイカす。英一蝶が2つ「月次風俗図屏風」これもいいのだが、次のヤツにどうしても目が行く「涅槃図」むうっ! これデカいぞ(涅槃図にしては)。しかも横たわる釈迦の周りに嘆く羅漢達……だけでなく、動物も、架空の動物も、天女も、なんかいろいろ入り乱れて描かれている。おい、こりゃマジスゲエよ。多様性の表現みたいだお。これはコレクションしてから一度しか公開されていなくて、今回の里帰りのために修復したんだって。そのビデオも紹介されていた。ううむ、これ、目玉といってもいいでしょう(ポスターにはなってないが)。あとで見たゴッホより全然スゲエよ。英一蝶なんて、名前だけ知ってたようなものだが……こんなところで名品を持っているとは。あと松村景文、岡本豊彦、東東洋の「松に鹿蝙蝠図屏風」の馬が妙に3次元っぽくリアルじゃんか。

次はいきなりフランス絵画だお。最初のミレーの「ブドウ畑にて」はなかなかいいが、それ以降はこれといって、スゴいのもなけりゃあ、ダメなのもない。手堅い。ヨーロッパのなんちゃら美術館展なら普通に見れる。コローはもっと大きな絵はなかったんか? 「サン=マメスのラ・クロワ=ブランシュ」は水辺もので、シスレーかと思ったらシスレーだった。モネもいくつか、「ルーアンの大聖堂」はド定番。「睡蓮」も定番でいくつもあるのだが、ここのは変に崩れていないし抽象化もされていないんで、なかなかいい雰囲気だお。ポスターにもなっているゴッホが2点。いずれも人物で、ゴッホらしいけど、まあズバ抜けた傑作ではないよな。解説も多いし(解説が多いってことは、それだけ情報を加えてやっとありがたく鑑賞できるって場合が多いのだ)。あと、静物画があるけど、これがなかなかよい。シスレー「卓上のブドウとクルミ」シスレーにゃ珍しく静物で、シスレーとは思わなかったシツレーしましたって感じだお。次のセザンヌ「卓上の果物と水差し」は一見普通だが、右上の方からデッサンを崩して、自分の世界に引きずり込んだ感じがしてて、危うくてセザンヌらしくてよい。クールベさんもタチアオイを描いててちょっと寂しい系。療養中だった模様。ルノワールの静物も珍しい。花のホワホワした感じがさすが、うめえな。

アメリカ絵画。歴史が浅いだけに、最初の方の絵を見ても当然あんまりうまくない。なんか大味なんだよなあ。でもどんどん技術は発達しウィンスロー・ホーマー「たそがれ時のリーズ村、ニューヨーク州」の寂しい牛なんか、独自色が出始めている。チャイルド・ハッサムのアメリカン印象派は。完全にイマイチレベルだ。あとオキーフが2点。オキーフぐらいになるとちゃんとアーティストになってくる。花びら拡大のスタイルとか、「赤い木、黄色い空」の赤い、木というよりオブジェといった存在感がイカす。

版画と写真のコーナー……アウェーだと思っていたら、オレの好きなエドワード・ホッパーがあったりして油断できない。しかしホッパーの寂しい油彩が見たかった。それから現代美術のコーナー。ウォーホルがある。サム・テイラー=ジョンソンの「静物」はビデオ作品。いかにも絵画的に置かれた静物であるところの果物がだんだん腐っていく様子を撮影して高速で再生。九相図みたいに諸行無常……ってわけじゃないか。置かれたプラスティックのボールペンが変化なし、というのが見所らしいが、その対比だけでは意味が分かりすぎるな。で、次はなんと日本が誇る村上隆。ジャパニーズアニメ表現のおいしいところをカスメトって自分の巨大作品のモチーフにして西洋美術界にうまいことプレゼンして大成功。アクリルのテカテカした質感がやっぱこれだよなって感じがする。ケヒンデ・ワイリーはアフリカ系アメリカ人がモデルの絵画。最後はデイヴィッド・ホックニーでおしまいなのだ。

各分野の量もほどよく、うまいこといいとこ取りしているんで、行って損はないゾ。
http://boston2017-18.jp/

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2017年9月 3日 (日)

サンシャワー 東南アジアの現代美術展2(森美術館)

先週の新美術館に続き、今週はもう一つの会場の森美術館だお。テーマもボリュームもデカいので覚悟してかかれい。
ちなみにどっちも音声ガイド無料。普段は使わないんだけど、無料だから……ってわけでもなく、知らんアーティストばかりなんで借りた。んー、音声ガイドもいいんだけど、作品の印象まで述べられると困る。こっちもその通りの印象を受けなきゃいかんのか、と思ってしまうんよ。印象は人それぞれでいいはずだ。諸君も音声ガイドにゃ気をつけよ。(そうは言ってもおめーは印象を書きまくってるではないか、と思うかもしれんが、これは読み物であってガイドではないのだ)

「発展とその影」のコーナー。文字通り発展していくアジアとその発展に残されたもの。最初にズル・モハメドのパイプとスピーカーを組み合わせたもの。車の振動が聞こえ、人の声も聞こえる。ジャカルタ・ウェイステッド・アーティストは、古い看板をもらって新しい看板を作り、古い看板を回収して、それを展示。ええと、リュウ・クンユウはマレーシアの各地の写真をコラージュして、カラフルでキッチュな画面を作る……ってガイドのまんまの形容なんだがまあその通りだな。インドネシアのアディティア・ノヴァリ。あーこれ面白かったね。商品紹介コントみたいなビデオがあってな。その商品の実物が並んでます。一応風刺的な意味があるっぽい。カンボジアのリム・ソクチャンリナは、ハイウェイ拡幅工事でどかなかった家の写真。おお、これ都内某所で実物を見たことがあるお。その家の周りだけ深く掘られてて異様だったお。外国にもあるんだ。

「アートとは何か? なぜやるのか?」ってコーナー。ここで前回疑問に持っていた、なんで東南アジアのアートは、お国柄や社会情勢、社会問題に密接に関係したものが多いのかってのが一応解消。発展途上国はアートの制度も遅れているので、アートとはいっても社会や政治に関わっていないと、扱ってもらえんというのです(だよな)。ここでは、アートプロジェクトの紹介なんだけど、島に住んで問題解決とか、作品を売ってギャラリーの資本にしようとか、炭坑に入って労働者と一緒になって社会問題を考えるとか、実に意義のある活動……なんだけど、ストレートに意義ありすぎていてねえ。ここでも私は折元立身のパフォーマンスを考えたりする。例えばアート・ママの一見意味のないパフォーマンスにも、その背後に介護やストレスといった問題があるんだけど、これも「これが問題です!」とぶち上げてやらないところがアートたるゆえんだよなあ、と思ったりする。意義があってもほのめかす程度で、ババーンと出すのはなあ。やっぱ発展途上的な印象を受けるんよ。

「瞑想としてのメディア」コーナー。タイのコラクリット・アルナーノンチャイは一部屋のインスタレーション。ポエトリー映像だがラッパーでもあるんだと。龍の造形がいい味だしてるお。ミャンマーのマウン・デイは手堅い鉛筆画。同じミャンマーのポー・ポーは地水火風のグラフィック……普通だ。インドネシアのアルベルト・ヨタナン。おお、これも面白かったね。白い陶器のセラフィム(翼だけの天使みたいな奴)と花が2000個が壁にびっしり。壮観だお。カンボジアのソピアップ・ピッチが竹などで作った有機的造形。普通によい。えーとしばらく行って……インドネシアのアグス・スワゲが定時の宗教放送が壁から聞こえてくるインスタレーション、あと宗教放送のトランペットに耳をふさぐ人の彫刻。日本ならさしずめ、5時半の子供達は早く帰りましょう放送だな。うるせーよなあれ。あれで耳ふさいでるの誰か作らないかな。

最後の「歴史との対話」コーナー。最後まで真面目ですこと。ベトナムのバン・ニャット・リン「誰もいない椅子」は面白かった。床屋の椅子が実際のベトナム戦争で使われた戦闘機の椅子で、そこで、元兵士の髪をセット。ベトナム戦争ものといやぁアメリカだが、当のベトナムのアーティストってところが大いなる意義がある。カンボジアのヴァンディー・ラッタナの爆弾が爆発した跡地写真。分かりやすい。いろいろあって最後、フィリピンのフェリックス・バコロールの「荒れそうな空模様」という1200個以上の風鈴インスタレーションがクライマックス。一見華やかだが大量生産と大量消費を暗示だお。扇風機で鳴らしているが確かに音を聞くと心地は良くない。警告のベルにも聞こえるのだ。

2会場で作品ギッチリで真面目に鑑賞するならそれなりの時間を覚悟だ。2会場行っても1800円。コスパはいいぞ。
http://sunshower2017.jp/

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