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2017年9月 9日 (土)

ボストン美術館の至宝展(東京都美術館)

広い分野からちょっとずつー……みたいなんで、あまり期待していなかったんだけど、行ったら、あーこりゃもっと早く行っておくんだったなーっていうぐらいのもんがある。10月9日までだってお。

最初はエジプト美術。ま、これはオレにゃあアウェーなもんで、流し見程度だお。でも石に刻まれたエジプト文字とか、なかなか味があってイイですな。頭の像の石が白くてキレイだぞ(ってな程度の印象)。「ツタンカーメン王頭部」とかあるんだけど、例の金色じゃないな。小さい金の人形がビッチリ並んでつながっている首飾りもありましたな。そういえば、ボストン美術館のコレクションを成り立たせた偉大なコレクター諸氏もパネルで紹介されていたりするのです。

次はいきなり中国美術に。五百羅漢図からの2つもなかなかだが、やっぱし大作の陳容「九龍図巻」巻き物で長い。文字通り龍の絵が並んでおって、物語っぽくなっている。龍もいいんだけど、なんか雲とかのね、渦がいいよね、渦がね。

日本美術。これがボストン美術館の重要なコレクションで、要するに明治の美術なんて分野よく知らなかった日本でアメ公がメボシイものをゴッソリ持ってっちまいやがった。まあ保存ちゃんとしてるからその方がいいのかもしれないが。ともあれコレクター紹介では日本でのおなじみの名前が飛び交う。モースとかフェノロサとか岡倉天心とか。展示はええとまず乾山とか仁清の焼き物があってだな、絵はいきなり司馬江漢じゃねーか! 「秋景芦雁図」鳥なんです。油彩じゃなくて日本画だけど結構立体的につまり得意の洋風で迫ってる。色が結構ちゃんと残っていて……そう、江漢の絵って退色してるのが多いんだけど、これはちゃんとしてる。いや、他の展示品も保存がメチャいい。昨日描いたみたいな色で残ってるんだよね(あるいは修復したかだが)。与謝蕪村の屏風。よっ文人画。空間のあけ方がなかなかだ。曾我簫白「飲中八仙図」例の奇面フラッシュ炸裂。「風仙図屏風」は再会だと思うが、これも例の顔と、あと風巻き起こる渦巻きがイカす。英一蝶が2つ「月次風俗図屏風」これもいいのだが、次のヤツにどうしても目が行く「涅槃図」むうっ! これデカいぞ(涅槃図にしては)。しかも横たわる釈迦の周りに嘆く羅漢達……だけでなく、動物も、架空の動物も、天女も、なんかいろいろ入り乱れて描かれている。おい、こりゃマジスゲエよ。多様性の表現みたいだお。これはコレクションしてから一度しか公開されていなくて、今回の里帰りのために修復したんだって。そのビデオも紹介されていた。ううむ、これ、目玉といってもいいでしょう(ポスターにはなってないが)。あとで見たゴッホより全然スゲエよ。英一蝶なんて、名前だけ知ってたようなものだが……こんなところで名品を持っているとは。あと松村景文、岡本豊彦、東東洋の「松に鹿蝙蝠図屏風」の馬が妙に3次元っぽくリアルじゃんか。

次はいきなりフランス絵画だお。最初のミレーの「ブドウ畑にて」はなかなかいいが、それ以降はこれといって、スゴいのもなけりゃあ、ダメなのもない。手堅い。ヨーロッパのなんちゃら美術館展なら普通に見れる。コローはもっと大きな絵はなかったんか? 「サン=マメスのラ・クロワ=ブランシュ」は水辺もので、シスレーかと思ったらシスレーだった。モネもいくつか、「ルーアンの大聖堂」はド定番。「睡蓮」も定番でいくつもあるのだが、ここのは変に崩れていないし抽象化もされていないんで、なかなかいい雰囲気だお。ポスターにもなっているゴッホが2点。いずれも人物で、ゴッホらしいけど、まあズバ抜けた傑作ではないよな。解説も多いし(解説が多いってことは、それだけ情報を加えてやっとありがたく鑑賞できるって場合が多いのだ)。あと、静物画があるけど、これがなかなかよい。シスレー「卓上のブドウとクルミ」シスレーにゃ珍しく静物で、シスレーとは思わなかったシツレーしましたって感じだお。次のセザンヌ「卓上の果物と水差し」は一見普通だが、右上の方からデッサンを崩して、自分の世界に引きずり込んだ感じがしてて、危うくてセザンヌらしくてよい。クールベさんもタチアオイを描いててちょっと寂しい系。療養中だった模様。ルノワールの静物も珍しい。花のホワホワした感じがさすが、うめえな。

アメリカ絵画。歴史が浅いだけに、最初の方の絵を見ても当然あんまりうまくない。なんか大味なんだよなあ。でもどんどん技術は発達しウィンスロー・ホーマー「たそがれ時のリーズ村、ニューヨーク州」の寂しい牛なんか、独自色が出始めている。チャイルド・ハッサムのアメリカン印象派は。完全にイマイチレベルだ。あとオキーフが2点。オキーフぐらいになるとちゃんとアーティストになってくる。花びら拡大のスタイルとか、「赤い木、黄色い空」の赤い、木というよりオブジェといった存在感がイカす。

版画と写真のコーナー……アウェーだと思っていたら、オレの好きなエドワード・ホッパーがあったりして油断できない。しかしホッパーの寂しい油彩が見たかった。それから現代美術のコーナー。ウォーホルがある。サム・テイラー=ジョンソンの「静物」はビデオ作品。いかにも絵画的に置かれた静物であるところの果物がだんだん腐っていく様子を撮影して高速で再生。九相図みたいに諸行無常……ってわけじゃないか。置かれたプラスティックのボールペンが変化なし、というのが見所らしいが、その対比だけでは意味が分かりすぎるな。で、次はなんと日本が誇る村上隆。ジャパニーズアニメ表現のおいしいところをカスメトって自分の巨大作品のモチーフにして西洋美術界にうまいことプレゼンして大成功。アクリルのテカテカした質感がやっぱこれだよなって感じがする。ケヒンデ・ワイリーはアフリカ系アメリカ人がモデルの絵画。最後はデイヴィッド・ホックニーでおしまいなのだ。

各分野の量もほどよく、うまいこといいとこ取りしているんで、行って損はないゾ。
http://boston2017-18.jp/

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