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2017年9月24日 (日)

シャガール 三次元の世界(東京ステーションギャラリー)

幻想的絵画でおなじみのシャガールの、立体ものかあ、あんまし期待できねーなー、などと思っていたらこれがなんと、やるじゃんシャガール、実は絵画と同じぐらいイケる、というお話。

最初に有名な「誕生日」って絵があるんだけど、女が来て男が舞い上がってチューしてるヤツ。これは1915年に描いたのを、1923年に自分でほとんどオリジナルと同じぐらいのレベルで模写したものだって。で、それの彫刻版っつーか顔だけのがあります。この段階では大理石でなかなかいい感じだなーぐらいしか思わなかった。

それから年代順で初期のね「座る赤い裸婦」なんてのはゴーギャンの影響だそうで、確かにですね「本当の色なんかどうでもいいんだっ、裸婦が赤く見えたんなら、You赤く描いちゃいなYo!」というジャニーさんじゃなかったナビ(ゴーギャン)の声が聞こえてくるぜっ。「のけぞる男」は初めて見るが文字通りのけぞってる男の絵だ。「静物」って絵がある。これ文字通り静物でキュビズム風なんだけど、色彩が思いっきりシャガールでな、静物画は珍しいので新鮮だ。シャガールは流行の絵画スタイルを結構研究していた模様。「櫛を持つ裸婦」なんてのもキュビズム。

で、ここから立体ものが出てくるが、最初は彩色陶器だった。つまり花瓶っぽい……んだけど、これがまあ結構スゴい。最初に「青いロバ」ってのがあってだな。ロバの上半身みたいな花瓶なんだけど、見る方向によりいろいろ表情が変わる(※ロバの表情じゃなくて作品の表情な)。色もシャガール風についているもんだから、シャガールの絵に動きが入ったようなものである。うむむむ、こ、これは面白い。「彫刻された壷」も彩色陶器。器の内側に裸婦、外側に恋人達。「散歩」なんかもいいですな。花瓶の形と男女の体がうまく合っている(ったって分かんないと思うんで実物見てくり)。「青い婚約者たち」もいろいろな方向から見れる。つまり立体でありながら「絵画的」に楽しめるのだ。うーん計算して作ってある。これら立体の構想下絵もあるぞ。

ここから「立体への志向」ということで、どんな立体をどういう傾向で作っていたかをコーナーごとでまとめている。最初は「動物モチーフ」でもちろん動物なんだけど、「空想の動物」なんていう何だか分からないけどシャガールワールドの動物がいて、そのブロンズとかね。「ラ・バスティーユ」という絵があって、これはシャガールの色彩ど真ん中で私は好きだな。やっぱこの、青、赤、紫の入り乱れて深い感じだよな。

階を移動し「肖像、二重肖像」のコーナー。愛しているから顔が溶け合ってくっついちゃったのだ……というホラー的シチュエーションもシャガールの絵画だと美し……いや、ま、ちょっとキモいが。いや、キモいっていうか、絵画「二つの顔を持つ紫色の裸婦」なんて幽霊的な、「二つの顔のある頭部」なんて心霊的な、つまりそのう、生理的な何かではなく霊的な何かを感じる次第である。立体では「二重の横顔」という、文字通り顔二つなんだけど、これ変な立体だなあと思ったら羊の骨だってお。

「重なりあうかたち」コーナー。これは意外なものを一つの画面に入れ込む「デペエズマン」って手法……を集めたらしいが、見ていてもよく分からん。まあシャガールの絵が総じてデペエズマンみたいなもんだしな。絵画では「緑の目」というのが靉光みたいで面白い。全体緑で。立体では「女と動物」大理石のどっしりした感じ。大理石ものは彫刻で彩色はしていない。なもんで、私としては彩色された立体の方がシャガールらしさがあって好きなんだが、この大理石ものも悪くはないですよ、うん。シャガールが材料の特性を理解して作っているのが分かる。

「垂直性」のコーナー。ここも石削っているのが多いのだが、要するに「柱」っぽいもの。石はちょっと石柱っぽさがあった方がイケる、ということに気づいたシャガール。「アダムとイヴ」は円柱、「キリストの磔刑」も石灰岩で柱っぽい。磔刑ったって十字架じゃなくて顔のところだけど、なかなかよい。絵画では、やはりキリストものが多いのだが、「キリストと雪の村」のキリストは……これはなんか緊張感がなくてイマイチだな、「橋の上のキリスト」も磔なんだけど、表情が穏やかなもんで、一見腕を広げてウェルカムしているようにも見える。これで「立体への志向」コーナーはおしまいなのだ。

「平面と立体の境界 聖なる主題」コーナー。文字通り宗教ものイパーイ。絵画と立体と、板への浮き彫りが入り乱れる。「エルサレム(嘆きの壁)」は手堅い絵画、「モーセ」は石でできた柱もの、「パテシバⅠ」「パテシバⅡ」は、伏せたドーム型っていうんですかね、丸いのね。あとは「『聖書』のための挿し絵」ということで、版画ができあがっていく課程を展示していたり。次が「素材とヴォリューム」のコーナーで、絵画「赤い背景の花」はなかなかの大作。隣の絵画「画家と妻」で妻は分かるが画家はどこだ? おっと背景の赤色にまぎれておる。彫刻「女=雄鶏」大理石とブロンズでそれぞれ浮き彫りで、いい感じではある。最後の方の絵画「紫色の裸婦」も大きめ作品。「アルルカン」は下絵で適当にそこらの布なんかを千切ってコラージュで作った人物を拡大してキャンバスに描いた面白もの。

最初の彩色陶器の立体絵画っぷりがあまりによかったもので、後半というか終盤はやっつけぎみな鑑賞になってしまった。いや、シャガールがこれだけ立体にこだわって優れたものを作っていたとは知らなかったし、知らない人も多いと思う。これは「行き」だぞ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201709_chagall.html

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