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2017年10月 2日 (月)

安藤忠雄展 挑戦(国立新美術館)

何を隠そうというか、隠した方がいいんだけど、私は建築学科出です(ほとんど忘れているもんで)。まそれはさておき、建築系の展覧会は当たり外れが大きいです。つまらんものは図面と模型少しとかでじぇんじぇんつまらんです。もちろん図面が読めてその建築の凄さが分かる人にゃそういうのも面白いでしょうが、まあそんな人は多くはないでしょう。近頃はCGを使っていたりして、見ごたえあるのもしばしばありますな。で、そういう意味ですと、今回のこの企画はかなり面白い。なんたって実物のコピーがあったりする。にしても、日曜朝一でもそれなりに混んでいた。

最初は住宅。私が学生のころに既に話題だった「住吉の長屋」というのがあって、その大きな模型や図面がある。家が中庭で分断され、部屋の移動にゃ一回外に出るという画期的な家。季節を、外の風を感じるゾ……まちょっと住みにくそうだが。あと、家じゃないけど「大淀のアトリエ」の空間再現もある。建築はその空間を感じるものであるからして、いかに感じさせるかが展示のポイント。その後、住宅がいろいろ並ぶが、解説が丁寧で一つ一つ大きくないもんで、人が列をなしていて動かない……なんで、ここは斜め見。まあだいたい「住吉の長屋」っぽい、バリアフリーじゃない感じの、というかあえてバリアーを作って空間演出するのが多い感じで。あ、あとほとんどコンクリート打放し。つまり灰色の壁。安藤忠雄といえばコンクリート打放しだよなあ、というぐらい定番。

ところで、ここで大事な話。建築学科の学生諸氏にぜひ注目してほしいのは「手描き図面」だ。現在、仕事で図面を描くのは全てCADつまり、コンピュータの作図ソフトを使う。進んでいるところではその建築データが3次元(3次元CADな)であって、そのままCGに持って行く(光とか計算して本物そっくりよ)。つまり現代において、手描きはラフスケッチぐらいしか存在しない、今回の企画においても、最近のプロジェクトでは図面は展示されていない。存在していないのだ。従って、手描きの建築図面、特に名建築のものは、見る機会がほとんどない。貴重だぞぉ。刮目しろぉ。ぜひ「手描き図面の味」を感じていってほしいぜっ。

住宅が終わると、今度は「光」というコーナーになり、ここで有名な「光の教会」の紹介。これも学生の時話題だった。正面のコンクリート打放しの壁が十字に切られていて、十字の光が射してくる神秘の演出。なんと実物大のものが美術館の屋外に再現されていて、建築空間がそのまま体験できるっ! これは見ものだ。目玉だ。これだけでも元は取れる。写真も撮れるんでインスタ蠅が群がっているが、まあ建築空間だからそんな気にならん。俺も1枚撮っちまったい。しかし、教会としてこういう簡素なつくりなんでプロテスタントかなと思ったらやっぱりプロテスタントだった(カトリックは絵画とか装飾使ってゴテゴテ演出してる)。プロテスタントなんだけど、なかなか粋な演出ではないか。あと教会の紹介では「水の教会」というのがあって、水の上に十字が立つこれも神秘。北海道にあるそうです。どこにあるのかな……え? トマム? ああっ、今年夏に行ったんだけど見てねえじゃん。知ってたら見に行ったのに。

後半の展示では結構規模のある商業施設とか。島にいくつも建物を建てた「直島プロジェクト」がデカい模型と映像で紹介される。他のプロジェクトも見ごたえあるデカい模型が豊富で、なかなか楽しい。あと、安藤建築は意外と身近にもあると知った。「表参道ヒルズ」これね、確かに安藤だ。今時の建築だから地域から浮いているかというと、意外とそうでもない。そうそう、表参道ヒルズは何回か行ったけど、結構表参道からの導線が自然で、入っていって気がつくと、不思議な大空間に出る感じだな。よくできてるじゃん。東京ミッドタウンにある、「21_21」も外面はちょい地味だけど、中で凝った空間になっている。安藤建築は外見は周囲環境からあまり浮かないようにして、中の空間で勝負というのが多いようだ。東急東横線の渋谷駅もそうで、中に球体というか、丸いものを抱えた空間演出をしている。それから上野にある「国際子ども図書館」も安藤らしい。行ってない。他に目立つのは「上海保利大劇院」という劇場で、外観は四角いけど、丸い穴なんかあいていて、中の空間は曲面が主体というような、これまたドラマティックな演出だな。あとは完成しなかったあるいは途上のプロジェクトもいろいろ。中之島の計画案は有名ですな。海外のプロジェクトも多く、世界の安藤を感じることができる。

最後は植林など緑を育てるプロジェクトもしているという紹介。いやあ、これは鑑賞してどうというもんじゃないけど、活動としては素晴らしいですねえ。

とりあえず実物大「光の教会」だけでも見もの。ただ、「建築は芸術」には違いないけど、芸術面だけを全うしてもダメなんだな。「形が美しいだけで音の鳴らないピアノ」じゃいかんと言ったのは、バックミンスター・フラーだったかな。あと形は凝っているがメンテがやりにくくて悪評とかな、そういう問題も出てくるのだ。
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/

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