« 「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(東京都美術館) | トップページ | 北斎とジャポニズム(国立西洋美術館) »

2017年11月11日 (土)

オットー・ネーベル展(Bunkamura ザ・ミュージアム)

うむ、知らん人だ……知名度がない。企画側もそれを分かっているのか、同時代近くにいたシャガールとかクレーとかカンディンスキーなぞをほどよくブレンド。しかしなー得てして知名度がないヤツはそれなりの理由があるんだよなーと期待もそこそこであった。
オットー・ネーベルはワイマールのドイツにいてバウハウスにいて、ナチスに追われてスイスに亡命。マイスターであるところのパウル・クレーとたいそう親しかったそうです。

展示の最初はワイマールの美術と建築の学校バウハウス関係です。当時の美術教育とはにゃんであったか、をまじめに鑑賞するより、建築を中心とした美術教育と、クレーやカンディンスキーの抽象が入り乱れる一種独特の世界がいかに切り取られて展示されているか、をエンジョイするのがオレ流だ。おなじみ混色独楽や、積み木や、銀製のティーポット、木が組み合わさって掃除がめんどくさそうな椅子や。水平のガラス板を使って埃かぶりそうな照明などを鑑賞。

それからいよいよオットー登場。まず初期。水彩の「山村」とか「アスコーナ・ロンコ」は派手目でなんかシャガール風だな……と思ったら次にシャガールの作品が3つほど。なるほどオットーはシャガールの影響をしっかり受けてたようだ。シャガール「夢」は、らしい絵で青色が美しいぜっ。それから時代はナチスが台頭してきて、抽象画が退廃芸術とか言われたんでドイツにいられなくなりスイスに亡命、そのあたりの政治的な作品「避難民」……クレーみたいだな、と思ったら隣にクレーの「移住していく」とか「恥辱」とかいう線画がある。

それから「建築的景観」とかいうコーナーで色分けされた建物が並んでいるような作品群。クレーが描きそうなもんなんでクレーかと思っちゃう。「プロイセンの塔」はシマシマ模様が目に付きますな。それから「大聖堂とカテドラル」というコーナーで「煉瓦の大聖堂」「高い壁龕(へきがん)」は、いずれも教会の柱とその間から見えるステンドグラスをデザイン的に描き、これが結構イイ! おお、この手があったか、という感じ。次に「イタリアの色彩」というコーナーで、オットーはイタリアの各都市について、色の印象を色でまとめる。これが「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」オットーのバイブル的なブツになっている。こうした都市の印象をもとに「トスカーナの町」とか、そういう作品が描かれる。それから「音楽的」作品のコーナーで音楽用語をタイトルにした抽象画。よくできているが、やっぱりクレーとかカンディンスキーと似てるし、音楽的な点で言うとデュフィとはまた違うし、デュフィのがオレは好みだ。カンディンスキーの絵もあったりする……

うーんしかし、なーんかオットーは中途半端だなー 知名度もないわけだわHAHAAHとか思っていて、なんとなく流れている藤井隆ナレーションのオットー紹介ビデオを見るともなく見ていた。すると、オットーの絵を顕微鏡で見ると塗りつぶし部分も線が重なっていて非常に細かい、それがクレーとの違いだとかいうのをやっていて、へーそうなのかと見てみると……うむっ、なんだこりゃ! 確かにその通りで、絵の具で塗りつぶしてあるだけと思っていたところが、ほどんど細かい色付き線のハッチングでできているではないか。おいおいおいなんかマズいものを見落としてるぞ、と会場を逆流し(別に人は少なかったが)、前に戻って再度見てみる。すると、先の「避難民」からして細かいハッチでできていて、「建築的景観」、「イタリアの色彩」いずれのところの絵もこの細かいハッチングが炸裂している。特に「音楽的」作品はどれも充実。絵としては大きくはないがかなりの密度だ。遠目の印象ではオットーの絵はクレーやカンディンスキーと同類みたいで、そう大したものではないが、近づくとこれがまあ、病的なまでにハッチングでパターン塗り分けをしている。適正鑑賞距離10cm! えーつまりですな、ササッと描いたような模様の模様部分と地の部分とを丁寧にパターン分けしてるわけで、これ解説ビデオでも「堅牢」って言ってたけど、まさに非常に「堅牢」な印象のものです。つまり動かしがたくガッチリキマっている。線の交差だけではない、線を交差させて、その囲まれた部分を細かく塗りつぶしまた別のパターンとする、みたいな凝ったのも少なくない。あとレンガ模様みたいなものもある。話は逸れるが、同じように堅牢な印象があったのが意外にも村上隆なんですよ。アニメ風のキャラをポンと描いているようで、近づくとアクリル絵の具でガッチリ描いてあるのが分かって、意外と堅牢な印象をおぼえたもんです。

さてさて、展示は抽象のコーナーとなりオットーが続く。遠目ではカンディンスキー風やクレー風が多いが、そのカンディンスキーも出てくる「複数の中のひとつの像」なんて大きめ作品で、オットーに比べるとカンディンスキーは分かりやすく(感じやすく)親しみやすい感じ。なによりこの絵は明るい。楽しい。クレーの晩年の絵もいくつか。あとオットーがルーン文字を導入したコーナー。ルーン文字といえば魔法の世界の文字みたいで神秘的だが、オットーはおもしろデザイン風に扱っている。「照らされて」という作品があって、これも遠目ではやっぱしクレー風なんだが、近づくとなんと、絵の具がきれいに凹凸の縞を作っているではないか。ナイステクニック。あとは近東と演劇とリノカットのコーナーがあっておしまいなのだ。

その細かさに気づかないと気づかないまま、クレーやカンディンスキーのパチモンみたいに感じてしまうだけかもしれないが、ここはよーく見てみよう。違いが分かるよなあ。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/

|

« 「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(東京都美術館) | トップページ | 北斎とジャポニズム(国立西洋美術館) »