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2017年12月17日 (日)

第7回九条美術展(練馬区立美術館)

「九条美術の会」というのがあるそうで、もちろん憲法九条である。その定期企画らしい。場所貸しだからなのか、ネトウヨの抗議対応が面倒なのか、あるいは国家権力への忖度なのか知らんが、ホームページに案内は出ていない。
私自身はてんで九条信者ではなく、どっちかというとネトウヨに近くて、あんなお花畑思想じゃ平和は守れねえよケッケッケなどと考え、Twitterでのサンデーモーニングへのツッコミを喜んで見ていたりする(番組は見ていない)。
じゃあなんでこんな企画に行くのかというと、こんな企画だからこそ行くのだよ。「表現の不自由展」と同じ。思想の違いを越えて迫ってくるものがあれば、それこそ本物。本物のアート作品なら見たいじゃないか。期間が短くて今日までなんで慌てて行ってきた。

2階の企画展示室全部使っているので、点数も多く豊富にいろいろあるのだが……実はお花畑感満載のイタいアートが並んでいるのかと思ったら意外とそうでもなく、抽象画から人物画など、まっとうな美術作品がほとんど。うん、発起人の一人が高名なる野見山暁治だからか、そうダメなのはいないようだ。いや、あまりにアート的にまっとうなんでかえってツマンネーなとか思ったぐらいである。私としては脳天気な平和ポスターみたいな見ていてハラワタが煮えくり返るようなおバカな作品を見たかったのだが、そういうのはあんまりなかった。

多数の作品から目に付いたヤツ。日比野正*「宇宙船シリーズNo-17-01」なんて兵器で子供が泣いてる、みたいなのはストレートで分かりやすい。中里繪魯洲の電動立体「世界は狂狂と回る」も核の恐怖ものであった。普通に面白いし意図も分かる。花田伸「知ることの意味2」は日本をディスる新聞記事が鞄からズラッと出てくる……あーちょっとムカつくなこれ。でもそれもよし。それから思想を訴えたいのは分かるが表現としてイマイチというのが、柳賢男「立憲主義」いやーガンバレ。もっといってくれ。九条の文字にもっとパワーがほしい。伊藤正昭「悪夢」ええと……もっとサイズを大きくしてほしい。ちぎり絵の松田光子「こどもたちに核はいらない」子供達が平和の中で遊んでいるわけで、こういうのはまあ微笑ましい。最後の方にあった「美しい日本Ⅰ高江」これも稚拙な感じがするが味があるぞ。みんながんばってくれ。あと、抽象画も少なくなかったが、抽象性とメッセージを両立させるのはなかなか難しいようだ。

憲法九条が世界平和に貢献するためには条件があり、それは、戦争を仕掛ける国は日本だけということです。仕掛けられたらどうするか? 応じるなら結局戦争になるし、応じるためには兵器を持ってなきゃいかん。つまり武器買って戦争の準備しないといけないんで、それじゃ仕掛ける国家と同じじゃん。そりゃいけません。じゃあ仕掛けられても応じないか。いやいやいや日本無くなっちゃう。戦争に巻き込まれるなら侵略された方がいいんです、なんて考えもあるが、賛同する人は少ないであろう。ということはもう、周辺国が戦争を仕掛けてくることはあり得ません。仕掛けるとしたら日本だけです、日本さえ九条を掲げておとなしくしていればいいんです、という考えを持たざるを得ず、その確証となるニュースや情報だけをせっせと集めて拡散することになる。日本をディスってるように見えるが、結局そうしないと憲法九条は平和憲法にならない。宿命です。周辺国にも九条と同じものを採用させればいいが、まあそういう動きもできんでしょう(そもそも周辺国は戦争を仕掛けてこないという前提だし)。

と、そういう目で見て、今回の展示のナンバーワン。滝清子「きみがよは ちよにやちよに」九条信者が吸収したであろう今の嘆かわしい右傾化日本、おお今こそかの戦前を彷彿とさせる恐怖の時代よ。その日本に対する怒りをぶつけて表現。このパワー、この悪意、日の丸をモチーフとしたデザイン、戦争の犠牲者達、放射性物質のマーク(反核&反原発か)、悪の巣窟国会議事堂、そして国歌がタイトル。ネトウヨが見たら脳天爆発しそうなほど迫ってくる。私も見ていてなんかムカついてきたが、だからこそ本物。よくぞこれを描いた。調べたらギャラリーで個展なども行っているようで、機会あれば行ってみたいものだ。他の人もこのぐらいの表現をやってほしい。

内容的に開催しづらいのか期間が短いのが残念。もう終わった。
http://www.9-bi.com/information/news11/

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