« 2018年2月 | トップページ | 2018年4月 »

2018年3月19日 (月)

サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法(練馬区立美術館)

実はさほど期待していなかったが、なかなか面白かったぞ。サヴィニャックって人の名前なんですな。20世紀後半フランスでポスター画で活躍。
冒頭の「マギー・ポトフ・ブイヨン」で、もうつかみはオッケーさ。このブイヨンポスターのインパクトが全てを表す。どんなんかって? うーん、書いちゃおうかなもったいないけど。鍋のブイヨンのいい香りを目を閉じて嗅いでいる……牛! しかもオマエ下半身ねえじゃん。自分の下半身が煮込まれた香り嗅いでるじゃん。こう書くと陰惨な感じに思うだろうが、ポスターにゃ全くそんな雰囲気はなく、むしろほのぼのしてて温かい。この技巧がサヴィニャックの魔法だ。「デクーヴェルト/発見」も犬が目の前の犬の尻穴を覗いているが、それ自分のなんだ。しかも胴体が世界地図だ。これも傑作だお。
こっから一応経歴の紹介。小さい頃の写真などがあるが、まあどうでもいい。それより、おなじみカッサンドルに学び、助手もやっていたそうで、カッサンドル作品の「北部鉄道」とサヴィニャックのカッサンドル風「北部鉄道」がある。あまりにもカッサンドルだお。それから出版物いろいろ(あんまし見てない)。
で、ここからが展示のメイン「10の項目から見つめるサヴィニャックのポスター」ということでモチーフごとにまとまった作品群を展示する。最初は「動物たち」。牛がいて、そのお乳が下に落ちてそのまま石鹸になっている傑作「牛乳石鹸モンサヴォン」。同じように牛から牛乳発射で「ヨープレイト」。なんと日本の「としまえん」がポスター依頼していた。それが2枚。いすれもプールで動物もの。手堅くうまい。「チンザノ」はお酒なんだけど靴を履いたシマウマで、その縞も黄色と白だ……って書いたってわかんねーよな。実物を見たまい面白いから。階段を上がって「マギー・チキン・ブイヨン」これもまあ、鶏が鍋になっていて、その体液(?)を自分で飲んでる。「トレカ:ウールとスプリングのマットレス」マットレスからスプリングと羊が出てきた。
今度は人物「オトコの人、オンナの人」。オランジーナのポスター。へーオランジーナって本当にあるんだフランスに。今まで疑ってた。「フランス国有鉄道:半額料金バスで旅行を」これは人間が半分になっていることで表す。「カフェDYA:すばらしいアロマ」これも凄いよポットから出た香り高い湯気が、人の鼻にダイレクトイン! 「ギャラップ」という謎めいたポスター。これは二段階戦略。ポスター出して、しばらくして、何のポスターか明かしたんだって。他もいろいろ。
「働く人」ここでは働いている人いろいろだが、そこは商品の広告。ペンキ屋の店名をペンキで塗りつつあるとか、ガス会社の広告で、人がバスタブからこんにちはとか、種から育った花が、そのまま種の袋の絵とか(見なきゃ面白さが分からんな)。クレーンで作業着ごと人が吊されている作業着の広告(丈夫ですな)。分かりやすい。
「製品に命を吹き込む」。これは要するに製品の擬人化。新聞社の広告で新聞が顔になっている。「火事に電力を」手がプラグになっている奥さん。「パン・ジャケ」のパン君、「アネージ・パスタのパスタ君」。いずれも商品を使って。人を形作る。サントリー・ビールではビールの器とポット(?)が仲がいい。
「子供たち」はい、子供の出ているポスター。「森永ミルクチョコレート」ほほー、やってたんだ1958年。「クリームデザート モン・ブラン」子供が食っている……がデザートには見えん。カレーに見える。おフランスにはカレーライスはないのかね?
「指さす人」のコーナー。これは文字通り、製品はこれだ! と指す。「フリジェコ:良質の冷蔵庫」では、開けた扉からの冷気で半分凍ってますやん。でも特徴を見事表してますよね。
「自動車とその部品」コーナー、まあ文字通り。ルノーのお山の絵が目を引く。「早く! アスプロ」は、頭の中に自動車が通過。これはなんと、頭痛の鎮痛薬の広告。この表現は思いもよらない。次のコーナーは「タバコ」うむ、どれもうまそうだ。オレは吸わないが。次は「ピック」の広告群コーナー。ピックはボールペンで頭がボールになっていたりする。最後は「パリ」のコーナー。「セーヌ左岸高速道路反対」など、珍しくメッセージ性の強い作品もある。「ビルに気をつけろ」は文字通りビルが座って凱旋門を潰しているストレートな表現。
結構分かりやすく、フランス人のユーモアが感じられる。おすすめだ。
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201709181505718201

|

2018年3月11日 (日)

プラド美術館展(国立西洋美術館)

「ベラスケスの絵画と栄光」というサブタイトルにて、ベラスケス7点来日と堂々の宣伝を打っている。確かに7点は多いですよ。それだけで胸張れる。しかもそれだけじゃなくて、ティツィアーノやらルーベンスまで来ているときた。
広告になっている馬に乗った少年は、私が子供の頃、実家でジグソーパズルをやった記憶がある。40年ぐらい前だからなあ、その頃から知られた絵だったわけだ。
入って最初は「芸術」というコーナーで。解説が長いんであんまし読んでなくて、最初にもうベラスケス「フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像」……ええと、ヒゲ、としかメモってないな。ああ、そうなんだヒゲ面でもイイ表情だ。うん、ベラスケスの絵は顔をじっくり見てりゃいいよってところで。ホセ・ガルシア・イダルゴ「無原罪の聖母を描く父なる神」……天使の羽が固そう(だけかよ)。あー私は印象派以降が主戦場なので、この時代のヤツはちょっとテンションが上がらなくてね、じゃ行かなきゃいいじゃん。いやいや大ベラスケス7点ならそれだけで行きだろ。まあいいや。次、フランシスコ・デ・スルバラン「磔刑のキリストと画家」これはいいね。手に釘で打ちつけるだけでは体重を支えられないというのは有名な話なんだが、それを無視してもこのキリストはちゃんと「死んでる」感がありますよね。スルバランって知名度はイマイチながら結構凄いんよ。アロンソ・カーノ「聖ベルナドゥスと聖母」。おお! これはっ! 聖母像から母乳鉄砲(としか言いようがない)が発射され、聖ベルナドゥスの口にダイレクトイン! たまにこういうオモシロイ妙な絵があるんで(しかもまじめに描いてる)、この時代も捨てがたいんだよな(ちなみに知識主体で鑑賞するとこういうふざけたエンジョイは難しいであろう)。次のフアン・アンドレス・リシ「偶像を破壊する聖ベネディクトゥス」タイトル通りなんだけど、破壊されている偶像にとりついているウネウネのようなものは何だ? 布か? 岡本太郎か? なんとなくシュールなセンスも感じるぞ。
次、「知識」のコーナー。ベラスケスの「メニッポス」。目力……としかメモっていない。そうだよベラスケスは顔だよ。ヤン・ブリューゲル(父)「視覚と嗅覚」出た! ヤン1! ブリューゲル一族展で覚えたぜっ。ピーテル1の才能を最も受け継いだ次男坊。この絵は絵画中絵画といったおもしろ絵だ。
次は「神話」のコーナーだお。ベラスケスの「マルス」。大した絵じゃない……と言いたいがこれが実は大した絵なんだよな。なんたってマルスですよ。戦いの神ですよ。それが武器も防具も置いて裸でくつろいでんだから、これすなわち平和なんだよ。マルスの絵にしては斬新ではなかろうか。もう神様っぽくなくて、甲冑を着るバイトのおっさんが一休みしている感じ。次、ティツィアーノ「音楽にくつろぐヴィーナス」。得意のヌード画。ティツィアーノにしては太めじゃなかろうか。オルガン弾きの目線がヤバいぜっ。ルーベンス「アンドロメダを救うペルセウス」定番テーマ。たいていアンドロメダが裸で岩にくくりつけられているヘンタイ画で、これも同様。手堅い。外さない。ルーベンスの裸女にしてはデブじゃなくて普通じゃなかろうか。それからルカ・ジョルダーノ「メドゥーサを倒すペルセウス」これな。カラバッジョのメドゥーサを見ちゃうとなあ、もっとガッツリメドゥーサ描いてくれ。ビセンテ・カルドゥーチョに帰属の「巨大な男性頭部」マジデカくて驚く。大首絵だ。モデルはチェ・ゲバラだ(んなわけはない)。
えー「宮廷」のコーナー。ベラスケス「狩猟服姿のフェリペ4世」アゴ……としかメモってないな。まあベラスケスは顔見てりゃ(後略)。なんかいろいろあって階段下りてファン・バン・デル・アメン「矮人の肖像」低身長の人の肖像。ちゃんと描いてる。ベラスケス「バリェーカスの少年」子供なのに貫禄あるじゃん。壁にデカい絵。アントニオ・デ・ベレーダ「ジェノヴァ救援」。その左右にスルバラン「ヘラクレスとクレタの牡牛」、「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」迫力あり。スルバランいい味出してるお。しかし私が注目したのはジュゼペ・デ・リベーラ「女の戦い」なんと美女同士が武器持って戦っている。しかも、格好が甲冑でも戦闘服でもなく、動きにくそうな長いスカートで。でも剣と盾持ってるし、血も少し流している。思うに要するにこれ美女バトル萌え絵画だろ。アニメの美少女戦士とか見て「そんな格好じゃ戦えねえだろリアルじゃねえなHAHAHA」とかいう嘲笑をよそに、それでいいんだバカヤロウ萌えの世界なんだと言っちゃうぞ、と…………いや、もしかして当時リアルでこういうことさせてたのかもしれないけどね。それはそれでそれも萌え目的じゃないのか。誰かやれよ萌え美術史。
「風景」のコーナーにベラスケス。「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」。アゴ(フェリペ4世)の息子だけど王になることなく16歳でお亡くなりだそうだ。さすがベラスケスで子供だけど顔が凛々しいよ。ベラスケスは顔(後略)。親とやったジグソーパズルで、我が父が1つのピースを「これは絶対鼻の穴だ」と言い張って結局目だった思い出よ。クロード・ロラン「聖セラビアの埋葬のある風景」いかにもロランの古代理想風景。でもまあ風景はたいしたもんねーかなと思ったらデニス・ファン・アルスロート「ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡(オウム)の祝祭:職業組合の行列」これがまあ人がきっちり行列で並んでいて壮観。なんとなく現代アートっぽい雰囲気があるね。
「静物」のコーナー。スペインで飲食関係の静物と人物を一緒に描いた絵画をボディコンじゃなかった「ボデゴン」と言うそうです。アレハンドロ・デ・ロアルテ「鳥売りの女」というのがそうなんだが、ああなるほどという感じで。ここはやはりヤン1(ヤン・ブリューゲル(父))の「花卉(かき)」これがまあウマイこと。写実ってんですかね。あとはイソップ童話の有名な犬が橋の上から肉落としちゃうヤツを描いたパウル・デ・フォス「犬と肉の寓話」。こういうのをマジで描いてるの、いいね。
最後は「宗教」のコーナー。ベラスケス「東方三博士の礼拝」やっぱりこの子供ことイエスの顔ですかね。ベラスケスは顔(後略)。グイド・レーニ「使徒聖大ヤコブ」やスルバラン「祝福する救世主」なんてのは大きくはないながら、非常にうまく、手堅く描いていて好感が持てるね。こうして見るとスルバラン大活躍じゃん。最後はムリーリョ「小鳥のいる聖家族」なかなかいい絵だけど、ムリーリョは「無原罪の御宿り」の印象が非常に強く。他の絵を見てもあれをつい思い出しちゃうぜ。昔の都美で見たもんです。
そんなわけで、いや結構見応えあるじゃん。さすが西美だ。混まないうちに行っちゃえ。
https://artexhibition.jp/prado2018/

|

2018年3月 3日 (土)

ルドン - 秘密の花園(三菱一号館美術館)

この美術館が、ルドンの大型パステル画である「グラン・ブーケ」を入手した時のハシャギっぷりに満ちた広告は記憶によく残っている。で、それが15枚のうちの1枚ということも知っている。残り14枚が来るとなりゃあ見に行こうという気になるじゃないか。しかし……

最初に木のスケッチみたいなヤツ多数。「木々の習作」という木炭画が妖しくてよい。「茨の冠の頭部(キリストの頭部)」なにキリストだと? とてもそうは見えない。女の人かと思った。目がつぶらだ……うん、つぶらな瞳のキリストってのもいいな。「キャリバン」という妖怪かと思ったら、シェークスピアの「テンペスト」に出てくる奇形の奴隷だと。「ヤコブと天使」なんてモロー風な感じがするが、だったらモローの方がいいな。植物学者のクラヴォーとは友達だったが、クラヴォーは自殺しちゃう。思い出に捧げる版画作品数枚。

ここでいよいよ広い展示室で「グラン・ブーケ」があったところであるところの、ドムシー男爵の食堂にあった残り14枚と対面だー! ……ではない。10枚だけがある。「グラン・ブーケ」と残り4枚は下の階の別室。一応壁ごと絵の位置を再現した展示となっているが、「グラン・ブーケ」の位置にはなぜかグレースケールの写真。あと、壁は部屋として囲まれてもいない……スペースは十分にあるのに、なんでこんな意味不明な展示をしているのだ? 食堂の絵画なんだから、食堂の再現ぐらいしてもいいんじゃねーかい。それにしても、グラン・ブーケ以外の絵って……暖色でまとめていながら、なんか地味なんだな。だったらなおさらグラン・ブーケをここに持ってこいやあ! ……って、演出に長けた三菱一号館なんだから、こういうことを考えていないわけはないはずだ。なんか理由があって持ってこれないのに違いない。グラン・ブーケだけパステル画だそうで、繊細なんであの常設の場所からじぇったい動かせないとかか? しかしなんかモヤモヤするなあ。

えーそれから廊下を移動して、黒のシリーズ。「起源」の絵とか、おなじみ過ぎる。カラーの絵もあったりする。蝶の絵があったりするが、何となく中途半端で、これは昆虫学的描画をやりたいのか、あるいは色あいを見せたいのか。昆虫学的にしたいなら適当だし、色合いにしては昆虫が細かい。いやあ、これ見ると速水御舟の蛾とかは凄かったんだなあ。

ここでフォトルームという撮影可能な部屋がある。なんてと今回揃った15枚を食堂レイアウト。原寸大ではないが。これを、そう、これを実物でやってほしかったんだなあ。

下の階に行って、ドムシー男爵の食堂の続き。残りの一面の4枚と「グラン・ブーケ」の部屋。グラン・ブーケだけ花様々で色とりどりな感じ。この絵以外は食堂から途中撤去されちゃったらしいんで、推して知るべし。

また長い廊下を移動し。カラーの油彩やらパステルやらいろいろ。「オジーヴの中の横顔」とか幻想的なのから、「ステンドグラス」はいいんだけど色がちょっとくすんでいる(そういう風に描いている)。それから花の絵がいろいろ並んでいます。グラン・ブーケを彷彿とさせる色づかいだお。だからグラン・ブーケが好きならここは見どころだ。最後は装飾プロジェクトだかで、家具があっておしまいなのだ。

ドムシー食堂よりも終盤の花の絵に期待して行こう。
http://mimt.jp/redon/

|

« 2018年2月 | トップページ | 2018年4月 »