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2018年4月15日 (日)

横山大観展(東京国立近代美術館)

かつて横山大観をDISって(けなして)いた。若気の至りである。明治期に輪郭線を廃した「朦朧体」の日本画を描き、周囲に冷笑されつつも己のスタイルを貫き通した偉大な画家である……という知識も得て挑む大観展、印象もずいぶん変わるであろうと思ったが、結果的にあんまし変わらなかった。どうもオレは大観とは感覚が合わない。んー、がしかし、どこがどう合わないんだが、ちゃんと把握したいものだなあ。
展示はまず明治期の大観から。有名な「屈原」。はい、人物画では最高傑作ではなかろうかね。もっと狂気の目をしていたかと思っていたが、今日見たらそうでもなかった。次の「静寂」……うーん、なにこの太い線画の竹は。その上の葉がモヤモヤしてて妙な絵だな。大丈夫まだ初期だ。「秋思」一応美人画なのか? いやいやなんか顔がカタい。「井筒」おっとこれはなかなか装飾的でいいですね。「夏日四題のうち 黄昏」おお、これは朦朧体風景として傑作だ。小さく鳥が飛んでいるのもスケールを感じさせてよいね。朦朧体風景ならイケるぜ大観。「迷児」人物なんだけど子供を囲んで、孔子、釈迦、老子、キリストがいる。一応朦朧風人物画。「帰帆」これは朦朧過ぎる。何描いてあるかよく分からん。「ガンヂスの木」中州にある木々を描くも……木々というより黒煙みたいだぞ。「杜鵑」ううむ……なんかヘンだ。遠くの霞んだ木々はいいんだが、近景の木々も同じようにモヤモヤっと描いてあるんだよな。いやいや、モヤモヤじゃないな。葉が多すぎるんじゃないかね。「白衣観音」うむ人物だ。で、ここの解説で妙な記述を発見。「デッサンが不得手」ぬぁに? 大観ってデッサンが苦手だったとな? 「瀑布(ナイヤガラの滝・万里の長城)」おっと大作だっ。しかし……滝かあ……確かに滝だけど滝らしくないんだよなあ。滝壺がないじゃん。滝壺のない滝は耐えがたき。万里の長城……ううむその緑のカビみたいなのは何なんだろうか。「山路」うううううキタネエ絵……いや失礼、アヴァンギャルドな絵だな(文句ばっかり)。「彗星」おっと、これはいきなりいい絵だ。地上の山とハレー彗星を描いている。まあ彗星自体朦朧体的存在だからなあ。
大正の大観だお。「放鶴」……こ、これは何かがおかしい。鶴が飛んでいるんだけど、なんか飛んでる感じがしないんだよなあ。鶴ってああやって首曲げて飛ぶのか? ここで先の、デッサンが不得手っつーのを思い出す。もしかして鶴が飛んでいるの見たことないんじゃなかろうか。「山茶花と栗鼠」うん、これは普通に栗鼠がカワイイ。「瀟湘八景」連作。例によって霞む木々はよし。松はあかんな。「秋色」これは大観作品の中でもオレが最も好きなヤツ。大量の緑の葉が1枚ずつ紅葉の途中というもんで、異様な葉に囲まれた鹿の風景。ブッ飛んだ発想にしびれるぜっ。「群青富士」なんじゃこりゃと思うがポップアート風と思えば見れなくもない。「霊峰十趣」……これもまあ、富士山なんだがのう。なんじゃ。「霊峰十趣のうち 山」なんて、プリンかよ。「柿紅葉」おっと、これも画面右から左に紅葉していくナイスな画面。実はアヴァンギャルドでダイナミックな画面が得意なのだが、その手の作品の数が多くはないのが残念だ。「胡蝶花」……ええとこの生き物は、なんなのか? やっぱこの人デッサンヤバくない? 「雪旦」おっとこれは葉が丁寧に描いてあるぞ。やりゃできるじゃん。
ここから昭和だそうで。大観は皇室大好きだったらしく、宮内庁収蔵品などある。「朝陽霊峯」デカい屏風2つで、富士山に朝日というストレート直球。うーん、こういうところがなあ、合わないんだよなあ。岡本太郎言うところの八の字文化。つまり八の字を描いたら富士山っていうお決まりパターンを臆面もなくやるヤツ。こんなヤツは「今日の芸術」はなれねえってな。「龍蛟躍四溟(なんて読むんだ?)」は龍の絵だが、渦巻き多用でこれは面白い。「春園之月」と「春園之月 習作」なんか習作の方がイイぞ。習作じゃない方は銀とか使っていたらしいがもしかして退色したか。「海に因む十題のうち 波騒ぐ」「海に因む十題のうち 龍踊る」で朦朧体よりもぐっとリアルな路線になってきた。「春光る(樹海)」も富士山が霊峰というより高い山だ。
第二会場。ここは大作「生々流転」40メートル越えの水墨大巻物。重要文化財。下絵もあるよ。見てるとなかなかドラマチックに展開する。よーしやるぞー→キバって木をいっぱい描いちゃうぞ→ちょっと疲れたから水面で間を空けよう→あーそうだオレは朦朧体が売りだったからここらで朦朧体をやっちゃお→なんか自然ばっか描いてて飽きたんで、ここらで家々を描こう→もうあれこれ描くのめんどくせえ水面だけで濃淡で変化つけちゃえ→最後は渦巻きでキメだ。まあいいだろこういう鑑賞でも。
第三会場がある! 2階じゃ。「霊峰飛鶴」はあいかわらず八の字だ。最後の方「風簫々兮易水寒(中国語か?)」はイヌの右の後ろ足がなんとも不自然でな、あー最後までデッサンが不得手だったのかーと思ったりした。
売店があっておしまいなのだ。
巨匠の重厚な日本画というより、なんかハッチャケている作品の方が目に付くぞ。
http://taikan2018.exhn.jp/

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