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2018年5月12日 (土)

プーシキン美術館展(東京都美術館)

「旅するフランス風景画」とのことで、あんまし期待していなかったがナカナカといったところだ。うん、悪くないよ。
 
年代順で、まず「近代風景画の源流」ってことで、最初にガスパール・デュゲって人の「ラティウムの小さな町」うっ……なんかショボいんで先行き嫌な予感がするが、次がおなじみクロード・ロラン「エウロペの掠奪」得意の大画面でまずまずのもん。人物というかここでは事件が小さく描かれ、景色を雄大にってやつだね。さすが理想風景画家。近いところの他の絵も概ねそんなもの。ジャン=バティスト・マルタン「ナミュール包囲戦」なんてのは史実が分からんと、イマイチよく分からない。純粋な風景画ってわけではないのでな。えー次、ジャン=バティスト・フランソワ・バテル「五月祭」。これがフェト・ギャラットいわゆる雅宴画。つまり18世紀フランスのロココ時代のゆるゆる貴族絵画なんだけど、この絵はイマイチ(というか思い出せん)。次のニコラ・ラングレ「森のはずれの集い」。これもさっきよりはいいが……うーん、雅宴画たるもの、もっとさー「貴族でーす」「バカでーす」って感じにしてほしいよなあ。次のジャック・ド・ラジュー「狩猟後の休息」これはなかなかいい雅宴画。おバカではないが、大きめの絵だし、なんたってブランコ。そうそうこれこれ。ブランコがあると雅宴気分がググッと増しますな。それからロココのブーシェが珍しく「農場」なんていう農家の絵なんか描いちゃって……意外とウマい。さすが名が知れてるだけあるな。クロード=ジョゼフ・ヴェルネ「日の出」と「日没」対になっている。どっちもオレンジに染まっていてなかなかだ。あとはユベール・ロベールって人、「廃墟のロベール」って呼ばれてたんだと。だから廃墟の絵な。ニコラ・アントワーヌ・トーネー「アルカディアの牧人たち」デカい絵だ……がまあ普通だ。
 
「自然への賛美」ってコーナー。おなじみカミーユ・コロー「嵐、パ=ド=カレ」は……灰色基調で小さいな。次もコロー「夕暮れ」おお、こっちの方がコローらしい。夕焼けに映える木の細かいシルエットだお。ジュール・コワニエ/ジャックレ・レイモン・ブラスカット「牛のいる風景」おお写実だ。牛がきっちり描いてある。うまいじゃん。クールベさんの「水車小屋」描き方がラフで、原色でない印象派のような作品。うん、やっぱりクールベさんは時代を先取りしてるじゃん。同じクールベさんの「山の小屋」というのもで出ていて、こっちは晩年の代表作なんて書いてはあるが、ちと小品だし普通ですな。
 
「大都市パリの風景画」コーナーだお。いきなりルノワールの「庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰」。例の有名なデカいヤツ……の一部っぽい感じで、実際一部を独立した絵にしたんじゃねーかって思う次第である。ジャン・フランソワ・ラファエリ「サン=ミシェル大通り」は雨上がりのパリの雰囲気よし。エドゥアール=レオン=コルテスの「夜のパリ」も雰囲気もので、ま、このコーナーは絵がどうこうよりもパリの雰囲気を楽しんでくれい、というものですかな。アルベール・マルケ「パリのサン=ミシェル橋」ん、どこかで見たぞ。練馬区立美術館のパリ企画だったかな。平面的でなんとなく覚えている。マルケはもう1枚あるぞ。ルイジ・ロワール「パリ環状鉄道の煙」はデカい。タイトル通り、煙漂う画面だす。いや、悪くないよ。
 
「パリ近郊 - 身近な自然へのまなざし」ってことで、まずはある1枚の絵が解説パネル充実の特別展示。うむ、これが目玉かな。クロード・モネ「草上の昼食」。公園かどこかで紳士淑女がランチ食ってるところ。同じタイトルの、マネの大変有名な絵があるのだ。なぜに有名かというと女が一人裸なもんで、当時はスキャンダル画だった。これにインスパイアされてマネのまねをした……だけじゃなくて、他にも同じようなテーマの絵とか、あるいはロココの雅宴画とかにも影響されて描いたのがモネのコレだ。……が、見た限りではあまりモネ向きの画題ではないと思うぞ。モネはバリバリの印象派で、屋外風景には向いているが、人物にゃイマイチ感が漂う。これは、アレだ、アレに似ている。尾形光琳が俵屋宗達にインスパイアされた「風神雷神図」まあ、あれはまんま劣化コピーで(というか不得手なんだと思う)これとは違うんだけど、自分なりにオリジナルを消化してがんばって描いたってことでは似たようなもんではなかろうか。モネは他にも何点かあり「白い睡蓮」が、例のモネに庭の橋の絵で定番なんで安心して見ていられる、あとは印象派、シスレー3作を手堅く展示。ピサロもあるがイマイチ、セザンヌ「ポントワーズの道」も普通だな。マティスの「ブーローニュの森」はちょいフォーヴ。モーリス・ド・ヴラマンク「小川」いや、好きだよヴラマンク。ゴッホを超えた男。緑が基調でよし。「オーヴェールの風景」も奥行きが感じられてよし。ピカソ「庭の家(小屋と木々)」うむ、ピカソだな。
 
「南へ - 新たな光と風景」ええと……ここはセザンヌが3つほど「庭園の木々」大きめ。「サント=ヴィクトワール山の平野」セザンヌらしい定番。黄色基調。「サント=ヴィクトワール山、レ、ローヴからの眺め」これの解説ではキュビズム誕生のもとになったとかなんとかでまあ分からんでもない絵だ。おっとボナールかなと思ったらボナールの「夏、ダンス」大き目の絵ですな。色がおなじみな調子ですな。ドランのフォーヴもんが2つほど。ヴラマンクは好きだがドランまでくるとちょっと引き気味な私です。ルイ・ヴァルタ「森の小屋」「アンテオールの海」うん、ちょっとよく分からないけど面白い。
 
最後、「海を渡って/想像の世界」いよいよクライマックスだお。ゴーガン「マタモエ、孔雀のいる風景」タヒチ萌えのマタモエじゃ。タヒチもんの中じゃなかなかじゃなかろうか。孔雀がいいよな。しかしだ、次のアンリ・ルソー「馬を襲うジャガー」……な、なんだこれはっ! いや、どう見てもルソーの絵だよ。しかし馬を襲うジャガーって……馬が普通の、というかカワイイ系の顔してて表情も特になくて、それって襲われてねえよ。ジャガーも馬にくっついてはいるが何してるかよく分からない。ジャングルではなく、どう見ても南国植物園でスケールも適当。要するに妙ちきりんな絵なのだが、逆に、それが幻想性を高めている。「素朴派」と呼ばれているルソーだが絵は全く素朴ではなく、ジャングルで馬がジャガーに襲われている絵を描きたい、という動機が素朴でそれを技量も適当にムリヤリ押し通したのである。結果予想外の非日常的な、幻想的な絵画になっちゃった。世の中にはそういう姿勢でヒットを飛ばしたアーティストもいるのだ。だからYouもやりたいことをやっちゃいなYo! えー、あとはドニの「ポリュフェモス」例のドニ。らしい人物。あとは何とかでおしまいなのだ。
 
超ド級の目玉はないものの、まずますのヒットがある。特にルソーにはやられたぜっ。
http://pushkin2018.jp/
 

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