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2018年5月21日 (月)

「ターナー 風景の詩」(損保ジャパン日本興亜美術館)

言わずと知れたターナーの風景画だらけの企画。すごくないわけがない……と言いたいが、ま、それはあとで分かってくる。
コーナー別になっていて、コーナーがそれぞれ年代順になっている感じかな。
 
最初は「地域的風景画」これ何かって言うと、絵から場所がちゃんと分かるものってことらしい。浮世絵の名所絵みたいなもんかな。最初に出ているのは「マームズベリー修道院」。19歳……にして既にデキあがっている! 朽ちた建築物の感じまでちゃんと出てる。むう天才じゃん。とはいえ、私なぞが驚嘆する半分抽象画につっこんだ「あの」ターナーではない。「ソマーヒル、トンブリッジ」がデカい。ちょいブワッとしている。水面グッド。水彩が多いが、版画も多くて「メゾティント」という技法が冴える。これで筆で塗った濃淡みたいなのを表現できるのだ。どういう技法かは解説を読めい。イギリスの、よく知らん風景ばかりだったが、「ストーンヘンジ、ウィルトシャー」おお、あのストーンヘンジぢゃないか。それにしても雷が描いてあり、雷に打たれて倒れている人、なんてのも描いてある。変な絵でもある。
 
次は「海景」のコーナー。いよいよ本領という感じですな。「インヴェラレイ城の見えるファイン湾」これは空がそれっぽい……とメモしてあるが忘れた。「風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様」これはなかなか傑作。人間が太刀打ちできない自然を描いたとか、なんだけど、まず波の表現すげえ。リアルだ。クールベさんに通じるものがある。しかし思うにクールベさんの絵は、人間にとって得体の知れない自然、という点でなんちゅーか自然の凄みみたいなもの(人間の視点から)を感じるが、ターナーのこれは絵のテーマがそうであってもイメージははっきりしているので、なんか神の視点っぽいですな。うんまあ、どっちもいいよ。「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」うむ、デカい絵だ、それに、そろそろ「あの」世界が来そうだぞ。「海と空の習作」キターっ! これはモノクロだが、来ましたよあのターナーの世界が。1925年。50歳。そう、この年齢ぐらいから「あれ」が始まるのだ。「海岸で救難作業をする人々」これも「あれ」だ。空と海の境界もあいまいでヤベエ。「海辺の日没とホウボウ」先の絵もそうだが、水彩でいわさきちひろっぽい。つまりちひろはターナーも参考にしてるんじゃないだろうか。「オステンデ沖の汽船」おおこれぞ! これぞ「あの」ターナー。風景画でありながら、抽象画の感触を持つ。そしてこの時、ターナーの絵は時代を飛び越えて現代アートとしても鑑賞可能となる。私の好きな抽象画家にザオ・ウーキーという人がいますが、このターナーの絵はザオの絵と感触が非常に似ていて、例えばこの絵に、ザオ・ウーキー作、と書いてあっても普通に納得してしまうくらいです。
 
「イタリア-古代への憧れ」というコーナー。まず円形のキャンバスの「キリスト教の黎明(エジプトへの逃避)」晩年風である。「風景タンバリンを持つ女」これも晩年風だが惜しい。ブワブワッとしているのはいいが、何が描いてあるか分かるので印象はイマイチ。そう、ターナーは何が描いてあるのか分からなくなってからが本番だ! あとは何か小さい版画がいっぱい。
 
「山岳 - 新たな風景日を探して」ということで、当時は山岳の絵を描くのは少なかったそうです。でもターナーはやった。「サン・ゴタール山の峠」高所恐怖症にはちょっと厳しい絵だ。これもコーナーの晩年のあたりに注目「古都ブレゲンツの眺め」うむ、「ルツェルン窓越しに見えるピラトゥス山」これはギリギリの感じ、とメモってあるがどんなんだったかな。あとは常設展示でおしまいなのだ。
 
ほとんどが普通の、うまい風景画であるが、その中に「あの」時空を飛び越えてくるターナーがいるのが嬉しいじゃないか。
https://turner2018.com/
 

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