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2018年7月 8日 (日)

ミケランジェロと理想の身体(国立西洋美術館)

彫刻はアウェーだ……が、まあこの手なら、ギリシア・ローマから続く彫刻美術の最も初期に近いもんなんで、別に難しいわけではない。「ミケランジェロと」となっているが。この「と」がクセモノでね、「フェルメールと」と同じでね、要するにミケランジェロは2つっきゃないの。しかーし、なかなか強力なブツを2つ持ってきた感じだ。

最初は「子供と青年の美」というコーナーで、もちろんミケランジェロはまだ出てこなくて、ほとんどガキの彫刻(※ガキが作ったのではない)。ええと、その前に、「コントラポスト」という用語が頻発するので覚えておこう……というかイントロビデオ見ればすぐに覚える。片足を浮かせて片足に重心を持ってくるポーズで、これで、ただ突っ立っているだけでもサマになる形になるんだってさ。がしかし、子供の体だとそれも通用しない……てとこがこだわりなんだって。最初の1世紀前半「プットーのレリーフ」プットーってのは有翼の童子だそうで、しかしこの子供がブクブクでぷっとー吹き出してしまう……ってこともないか。2世紀「蛇を絞め殺す幼児ヘラクレス」ギリシャ神話最大のマッチョヘラクレス。幼児にして蛇を絞め殺す有名な話だ。よくできてる。ヘラクレスの顔が既に強者。アンドレア・デル・カスターニョのフレスコ画「花綱を伴うプットー」花綱か……何のことか分からないが、背中のロケットで飛んでる絵ではなさそうだ。ニッコロ・ロッカタリアータの工房「6人の奏楽天使の群像」うん、それぞれよくできてるよ。2世紀末「弓を引くクピド」キューピッドのこと。天使と違うよ。上向いてるがなぜだろう。スケッジャという人のフレスコ(だったかな)「スザンナ伝」おお、これは定番画題の「スザンナの水浴」……ではなくて、その後の場面で、覗いてセクハラをしたジジイ二人が石打ちの刑にあっているところ。珍しい場面ですな。

「顔の完成」コーナーでバッカスが2つぐらいあるが、いずれもイケメンで……バッカス(酒の神)らしくないな。もっとご陽気でアル中っぽい方がいいよ。それから「アスリートと戦士」コーナー。やっぱり肉体美ったらスポーツ系だよな。紀元前4世紀「香炉を支えるディスコボロス」おお、円盤投げじゃないか。オリンピックでやってるんで、やっぱり歴史あるんだなあ。紀元前2世紀ぐらいの「レスラー」おお、小さいがよくできてる。紀元前1世紀の「アメルングの運動選手」ボディのみ。アンドレア・デル。ヴェロッキオの追随者「紋章を支える従者」……これは、わざとかな? コントラポストに失敗してて倒れそうじゃないか。と、この辺りで気づくのは……野郎のヌードばかりぢぁないか。腐女子大喜び……でもないか。とにかく女性の肉体美は今回どこにもないのだよ。

「神々と英雄」コーナー。ヤコボ・サンソヴィーノ工房「ネプトゥヌス」うん、なんか定番な感じ。フレスコ画、65~79年「子供たちを解放するテセウス」「ヘラクレスとテレフォス」絵としてもなかなかだが、フレスコがひび入って落ちそうに見えるのがヤバい。彫刻、紀元前4世紀後半「ヘラクレス」、1世紀「座るヘラクレス」……ここで一見サイテーの、しかし素朴な疑問。なぜ最強の英雄ヘラクレスの股間のブツが結構小さいのか? なぜヘラクレスサイズでないのか? 貴様何を言ってやがると思うかもしれないが、これ、結構普通に疑問でないかい? 強いといやあ性欲の、子孫繁栄の、それだけで象徴できるアイテムだぞ。で、思う理由は2つ。その1、表現方法としてカッコワルイから。そりゃあすぐ下ネタに走るお笑い芸はどうも安直だ。エロいシーンで客を呼ぼうとする映画も(それが目的の映画なら別として)、そんなんで客寄せかよ。やっぱそういうものを使わないでキメてこそインテリジェンスだしカッコイイ。その2、笑っちゃうから。江戸の春画でブツをデカく描いたのは有名だけど、あれは見るとつい笑っちゃうんで「笑い絵」とも呼ばれてたんだよね。転じてめでたい絵にもなった。がしかし、彫刻において強靱で美しい肉体を表現したいからってブツまでデカいとどうも姿が滑稽になってしまい、つい笑ってしまう。そりゃあいかん。印象として凛々しくないといかんよ。だからなるべく目立たないでいただきたい。それでヘラクレスでも小さいのだよ。多分。

「ミケランジェロと男性美の理想」コーナー。ここでやっとミケランジェロへの道が示される。ミケランジェロ周辺の芸術家「磔にされた罪人」おお人体。筋骨隆々ですな。2世紀初頭の「竪琴を弾くアポロン」これは筋骨隆々って感じじゃなくて、下半身は男でも女でもない感じに柔らか系。そして階段を下りていって、やっと目玉のミケランジェロ「ダヴィデ=アポロ」実は未完で、ダヴィデがアポロか分からんうちにシスティーナの天井画作成に呼ばれてしまって行くしかなくなった。しかし、その体のデキはシロウトでも分かるぐらい今までと違う。あーたしかに、ここにこう肉付いてるよな。こうなっているよな、という感じが分かって。こりゃミケランジェロ筋肉オタだわ。スゲエわとか思ってしまう。次のミケランジェロの「若き洗礼者ヨハネ」これは初期の作品だそうで、行方不明だったのが見つかって修復された(んだよな)。先と違って少年っぽさと、ただの少年じゃねえ感(?)が見どころですね。目つきがヤバい。次のところにある「若き洗礼者ヨハネ」はこれが見つかる前までミケランジェロ作じゃないかと思われていたものらしいが、だいぶ違うよな。それから階段上がって、ローマヘレニズム彫刻の傑作「ラオコーン」の模作がどどーん! 撮影可能な大盤振る舞い。もちろんインスタ蠅がぶんぶん。しかし解説を見ると、模作というより、細かいところが結構違っていて、作者が自分なりにいろいろ解釈したものらしい。って言われてみると、なんとなくデキがそうよくないように見えるんだな。情報のせい? 比較写真もあるけれど……やっぱオリジナルの方が、よくない? 

「伝説上のミケランジェロ」コーナー。もう終盤で、ミケランジェロの肖像とか。そう見るものはない感じだ。

順を追ってみていると、やっぱミケランジェロすげーなとか思ってしまう、いい演出ですな。2点でも満足できる。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018michelangelo.html

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