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2018年9月22日 (土)

2018年のフランケンシュタイン バイオアートに見る芸術と科学と社会のいま(EYE OF GYRE)

表参道にあるGYREという建物にある展示スペース。無料です。写真も撮れます。しかしここがまた、1階にシャネルがあるようなこじゃれた建物で、ブクロ(池袋)が一番居心地がいいなんちゅー私なんぞはてんで落ちつかない。見てる間もファッションもキマった意識高い系カップルが入ってきたりして、軽く英文読んでたりして、なんかもう人種が違うじゃん。

しかし展示は実際のところ結構面白いんです。近頃のバイオテクノロジーをテーマにしたアートで、社会問題もちょっと入っている。最初何の解説も無くて(しかも英語まんまが多い)、意味分かんねーよ意識高い系以外来るなってことかよとか思ったが、解説の紙がちゃんとあった。今回の展示物は感性だけで見るもんじゃなくて、情報も加味しないと意図が分からないぞ。

3コーナーに分かれていて、第1章は「蘇生」。テクノロジーで死者あるいは死んだ何かを蘇らせる。ティナ・ゴヤンクによる一見革でできたカバンだのジャケットだのがある。さて何か? なんと人の皮膚を幹細胞技術で再生し……って培養か? 要は増やしたんだが、それで作ったというのだ。うぎゃああ……一応ここにあるのはフェイクらしいが、実際にやろうともしているらしいぞ。次に平野真美。ユニコーンが横たわっていて、なにやら生命維持装置っぽいもんが付いていて内蔵を見せて蘇生の最中。うぎゃああ……うーん、ちょっと作り物っぽさが目立つな。特に内蔵とか。もちっと本物そっくりにもできたんじゃないだろうか。それからディムット・ストレーブのゴッホの耳の再生プロジェクト。生きていて、音に反応するらしいが……本物が置いてあるわけじゃなくて写真と映像だけ。しかも映像は英語で字幕も無くてよく分からない。表参道ヤングにはどってことないかもしれないが、オレは英語なんぞ聞いても分からぬ。

第2章「人新世」。人間が出てきて地質を荒らし回ったので、地質年代も変えちゃえってのが「人新世」なんだって。展示はロバート・スミッソンの、ドラム缶の中の工業用接着剤を倒して流れ出したところ、の写真。衝撃の自然破壊の象徴よ。でも写真だけじゃイマイチだな。マーク・ダイオンのタール漬けになった鳥の彫刻。ええと、これは分かりやすい。AKI INOMATA「やどかりに「やど」をわたしてみる」これも面白さは分かる。水槽があって、ヤドカリがいる。ここで、ヤドとして提供するのは3Dプリンタで出した透明のプラスチックの貝殻。おお、透明なんで中が見えるぞ。面白い。本田沙映、一見きれいな石ころ。でも実はそこらのビニールやプラスチックを高温で溶かして混ぜて固めたもの。材料の説明が面白い。どこそこのビニールとか、何々のプラスチックとか。一つずつ解説が入っているぞ。

第3章「生政治」。ここもそれぞれテーマがある展示。ヘザー・デューイ・ハグボーグは、リアルな人形の顔が3つ。何か? その下に箱がある。どこそこで取れたガムの残り、たばこの吸い殻、とか、要はそこからDNAを採集し、情報を読みとって顔を再現させたんだってお。おおおおお。もちろんフェイクだとは思うがそんな時代はすぐそこだ。最後、BCL「DNAブラックリストプリンター」。プリンタが文字を出している。何か? これなんと、合成禁止となっているDNAだって。それらをサクッと出しちゃうって怖いじゃないかって話。
関係あるかどうか分からないが、例の障害者殺害事件で、今また再び優生思想が問題化しているのだが、いかなる状態であれ、人として生きている命を殺さない、なんてことは当たり前だし、ほとんど人は同意できるはずだ。がしかし、優生思想の主戦場はもはや出生前だ。疾患を持った胎児は、胚は、DNAは、生むか生まないか、それは命の選別なのかそうでないのか、どこからが命か、は人それぞれで簡単に結論も出ない。受精前、受精後、胚、胎児の何週間、新生児、さて君はどこに線を引く? それはグレーゾーンでの戦いなのだ。

企画のコンセプトは面白い。あとは、がんばってここに足を運んでくれ。
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/bioart/

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