« マルセル・デュシャンと日本美術(東京国立博物館) | トップページ | ルーベンス展(国立西洋美術館) »

2018年10月14日 (日)

フェルメール展(上野の森美術館)

P_20181014_105705_2 どうせ上野の森でしょー。アコギに詰め込めるだけ詰め込んだ上に中は阿鼻叫喚であろうと思ったが、さすがに2500円も取った上に入場時間指定でその事態はマズいと思ったか、いつもの上野の森を覚悟して行ったらマズマズである。混んではいるが殺人的ではない。時間指定の功は奏している。
私が行ったのは9時ちょっと前で、その時点で100人ぐらい並んでたか。9時過ぎると急に増え始めるようで、9時半頃だともう長蛇の列ですな。9時25分頃から入れ始めて、10分ぐらいで入れた。このポジションだと全員フェルメール部屋に直行であろうと思ったが、意外と最初から律儀に見ている人も見かける。

で、いきなりフェルメールルームへ突撃だぜっ。まだかぶりつける。初めて見る「ワイングラス」から、これは窓のステンドグラスが大変美しい。ステンドグラスが美しい柄ってんじゃなくて、その光の描写ってんですかね、こりゃあフェルメール作品の中でも上モノでしょう。見とれちまうぜ。次、「手紙を書く婦人と召使い」これは再会で、最初見た時はえれえキレイな絵だと思ったんですが、はい、キレイですよ。少し遠目で全体の雰囲気を感じた方がいいですかな。「牛乳を注ぐ女」いわゆるミルクメイド。見たのは3回目ぐらいじゃなかろうか。しかし、これはテーブルの上の描写がハンパない。写実だ……って、いや、写実で描ける画家なんて当時でもいくらでもいたでしょうに、やっぱ何かが違う。牛乳の液体っぷり(?)も見事ですなあ。あと全体もいい雰囲気ですね。名画と言われりゃ納得できる。「真珠の首飾りの女」これも再会だと思うんだが、小さめの品でも今回、意外といいな、と思ったのがこれ。この女性の表情が微妙な感じで魅力がある。表情ナンバーワン。あと「マルタとマリアの家のキリスト」これは大きいんだけど、あまりフェルメールらしくない。「リュートを調弦する女」「手紙を書く女」いずれも悪い絵じゃないんだけど、他に比べるとイマイチかな。手紙の方は再会だが、前に、ちょっと顔をボヤッと描いているのは、それは「人間」だからじゃないかとか、思ったりしたもんです。「赤い帽子の女」これはフェルメールなのか分からないって噂もあるようだが、フェルメールのよさって感じじゃないし、人気もあまりないようで、混んでる時でも、この絵にはかぶりつける。で、フェルメール部屋も混んできたので、最初に戻って他を鑑賞。

もちろん人ギッシリであるが、今回ナイスサービスなのは絵の解説冊子がもらえるとこと、遠目で見て、解説を見て、近くで身たけりゃ接近。音声ガイドもくれるが、全部に解説があるわけではないしな。で、最初は肖像画、おなじみフランス・ハルスの絵があるが……普通だな。それよりフェルディナント・ボルって人の「ある男の肖像」この表情はいいですな……と思っていたらこの人、レンブラントの弟子だそうだ。なるほどレンブラントの自画像の名状しがたい表情に似ている。ヤン・デ・ブライの集団肖像画は音声ガイドがあるぞ。

それから神話画と宗教画、ヤン・ファン・ベイレルトの「マタイの召命」音声ガイドでは光と陰のカラバッジョの影響とか言ってたが、カラバッジョっぽくはないぞ。ありゃもっとコントラスト強いし。パウルス・モレールセ「ヴィーナスと鳩」これは婦人が婦人がヴィーナスを演じているんだそうで(胸出してるが)、確かに人間っぽいんだな。わざとこう描いたんならなかなかのもんではないか。パウルス・ボル「キュデッペとアコンティオスの林檎」えー、ギリシャ神話のなんたらで、美少女だそうです。ちょっと微妙だが。それよりここんところがコーナー(角)で導線がハナハダ悪い。斬首の絵とかあったりして、次が風景画エリアなんだが、細い通路(中央は人が通るのであけて下さいとアナウンスが飛ぶ)だの、行き止まりの細い展示空間だの、上野の森美術館のクソッタレな導線に悩まされるが、主催者側も一応分かっているようで、細い展示空間には船とか建物とかどーでもいい……いやまあどーでもいいくもないんだろうけど、回転が早そうなヤツばかりで、別に見なくても大丈夫。次も静物画で魚とか死んだほ乳類とか、これもまあよく出くわすヤツラですな。

日々の生活:風俗画のエリア。まあフェルメールも風俗画なんで、ここはなかなか楽しめる。ユーディト・レイステル「陽気な酒飲み」なかなかだがもうちょっと飲んでほしいな。飲みが足りねえ。ヘラルト・ダウ「本を読む老女」これがなかなかすごい絵で、本に文字が全部書いてあるんだぜっ。新聞の文字を全部書いちゃうとかの今時の写実にこだわりのある画家が描く写実画みたいじゃん。ニコラス・マース「糸を紡ぐ女」あー、細かく描いているようだがフェルメールの緻密さには及ばんのう。クヴィリング・ファン・ブレーケレンカム「仕立屋の仕事場」これ窓辺だが、フェルメールと比べるとやぱし陰が弱い。ハブリエル・メツー「手紙を読む女」「手紙を書く男」対になっている作品。構図がフェルメールとよく似ているし、壁に絵とか貼ってあるのも同じ。でもフェルメールより魅力がない。やっぱり陰が弱いんだよね。でも一つ一つのものを見ていくと、バッチリ描いてあったりするもんで、こういう写実的な描写力ってのはフェルメールじゃなくても十分持っていたわけだ。あとは全体の印象の差か。そして風俗画といえばこの人、ヤン・ステーン。いつもいつもフェルメール展で抱き合わせみたいに持ってこられるもんで、知名度もなかなか上がらず気の毒だが、寓意に満ちたなかなかいい画家なんですよ。「家族の肖像」もうズバリ、ドキュンの子はドキュン、という絵である。「楽しい里帰り」も人間のヨレヨレっぷりがいいだろ。ヤン・ステーンは、それだけで展覧会やってもおかしくはないと思うんだが、いかんせん知名度が低い。惜しい。

それでフェルメール部屋に戻る。さすがに人が溜まってて近づくのは難しいが、待てばできなくはなさそうだ。あと今回は単眼鏡がフル活躍。2列目3列目でも単眼鏡を使えば十分鑑賞はできる。
あと音声ガイドの最後のところで、「フェルメールは今のSNSみたいなもの」などと言ってたが、何を言ってやがる石原さとみ~(別に石原の意見ではないだろうが)。

会場を出たのは次の時間帯の直前のなのだが、なんとまあまた長蛇の列。でも、次の時間帯トップで入ってもすいているのは最初のところだけで、フェルメール部屋は結局混んでいる。単に入場の時間を指定しているだけで、時間入れ替え制ではないのだよ(入れ替え制と思っている人がおるのか?)。指定時間前に来てがんばって並んで意味があるのは一番最初の時間帯、会場にだれもいない9時半だけである。もし他の時間帯の場合、指定時間前に並んでもあまり意味はない。入場指定時間1時間後だと入るのも時間はかからないんで、そっちの方をおすすめするよ。フェルメール部屋はすいてはいないが、まあ何とかなる。この指定時間制は上野の森にしては上出来なんで、来年のゴッホ展でもやってほしいものだ。
https://www.vermeer.jp/

|

« マルセル・デュシャンと日本美術(東京国立博物館) | トップページ | ルーベンス展(国立西洋美術館) »