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2018年10月25日 (木)

ルーベンス展(国立西洋美術館)

ルーベンス展、というものはかつて無かったんじゃなかろうか。大巨匠なわけだけどそうそう持ってこれるものじゃないし、いい絵はデカい。それがこのたび実現したとなっちゃあ大騒ぎだぜっ。ある意味フェルメール展よりスゲエことである。
ルーベンスじゃないヤツもチラホラいるし、模写も工房作もあったりするが、ほとんどはご本人で、ルーベンス展と呼ぶに十分である。ルーベンスはイタリアに学んだことが多く、今回もイタリアの画家としての展示だそうだ。

最初は小物、ただ「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」なんて、これ長女5歳だって、血色いいよな。たぶんこの絵は再会だが。「眠るふたりの子供」もプクプクしとる。「幼児イエスと洗礼者ヨハネ」も子供ふたりだ。

ここからいよいよイタリア美術のエキスを吸収した作品が炸裂してくる。「《ラオコーン群像》の模写素描」うむっ、ギリシアヘレニズムの傑作彫刻を、オレもこういうのやりてーと模写したとな。確かにバロックの仰々しさとヘレニズムは通じるところがあるよな。それからカメオが2つ。そんで絵画があり「髭を生やした男の頭部」や「老人の頭部」は特にこれ誰ってもんでもないらしいが、それでもバッチリ描いて消化し、大作に使ったんだって。「毛皮を着た若い女性像」おっと見たことあるような、と思ったらティツィアーノの模写だお。腕が太いぞ。そのティツィアーノと工房「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」これもちょいデブ。ルーベンスは細いヤツよりもボリュームタプーリの方が好みだった。ラファエロの模写までしている「賢明」。こうして見るとやっぱ勉強して努力してるんだなあ(当たり前か)。こうしてイタリアの人体描写まで吸収し「セネカの死」なんて絵ができたりする。男のリアルというかごつい肉体描写だ。

ここから宗教画。この手は当然何が描いてあるのか、何のシーンなのかが分かった方がいいのだが、別に分からなくってもいいと思わせるほどルーベンスはドラマチックに迫る。なんたってカトリック。宗教の力を絵で演出して布教しようぜってんで、派手にやっちゃうんだ。「聖ドミティラ」これもちょいデブ。それで地下の展示室へ行くと、天井の高さを利用して大型の絵が9枚も並んでいる……って、全部がルーベンスではないが壮観だ。ヨーロッパの美術館とかこんな感じだよな。「アベルの死」はカラバッジョ風のコントラストだ。傑作としてまず「法悦のマグダラのマリア」カラバッジョが同じようなやつを、マリア単体で描いてたと思うが、こっちは天使が二人おって演出に手を貸している。マリアが生きてるんだか死んでるんだか分からない状態で法悦しておる。「キリスト哀悼」これも仰々しい。なんたってキリストがマジ死んでる。いや、死んでるんだから当たり前だけど、死んでるんだぞという容赦ない血色の無さで迫ってくる。マリアが目を閉じさせようとしている演出もニクいぜっ。「聖アンデレの殉教」X字の磔の様子。てんこ盛りのバロック。人間いろいろ、空には天使……じゃなくて羽の生えたガキンチョ……なんつったっけ? ピットだっけ。中央にヴェルデーレのトルソ。元は1世紀のものだけど、参考にしているんだって。

階段上がって、「神話の力」ってことで、男女のヌードコーナー……の前にルノワールもルーベンスを模写してたって話で、ルノワールの模写絵1枚。確かにルノワールもデブ女好きだしな。で、ヌードはグイド・レーニの「ヒュドラ殺害後休息するヘラクレス」へえ、グイド・レーニってルーベンスと同時代だったんだ。もっと最近だと思ってた。ルーベンスは「ヘスペリデスの園へのヘラクレス」なんか巨人族みたいな、いや、なんちゅーか「男」だ。女性ヌードは、おなじみテーマ「スザンヌと長老たち」しかし、やっぱり尻の肉付きとか、そっちの方に重点を置いているようですな。「バラの刺に傷つくヴィーナス」顔が「いてっ」と言ってるぜ。さっきのヘラクレスと対になる感じで展示されている「『噂』に耳を傾けるデイアネイラ」これは、そんなにデブじゃないぞ。

「絵筆の熱狂」というコーナー。大きくはないが傑作がある。「聖ウルスラの殉教」幻想絵画っぽい構図でキメる。「パエトンの墜落」は馬と人が入り乱れて、いやしかし、よくこんなの描けるよなあ、と感心。あとはルーベンスじゃないルーベンスっぽい絵がいろいろ。コルトーナの「ゴリアテを殺すダヴィデ」なんぞは明るい画面だが……もうルーベンス風でも何でもない感じだぞ。

寓意と寓意的説話のコーナー。「マルスとレア・シルウィア」これは「いいだろ」「いやよ」の絵だな。「ヴィーナス、マルスとキューピッド」キューピッドの口に母乳発射。別んとこでも同ような絵を見たが、遠隔母乳って昔の絵の定番なのか? 「ローマの慈愛(キモンとペロ)」鎖につながれて飢えた父親のため、娘が母乳をあげるシーン。これが慈愛なんだそうだが……そうなのか? 娘を持つ親としては、娘の母乳はできれば飲みたくないもんですなあ。「エリクトスを発見するケクロプスの娘」これは珍しくキレイキレイなルネサンス風。これで最後のキメだ。

なんかこう、ごちゃごちゃ書くより、いいから行けよ、という感じ。有無を言わさない。西洋絵画こってりメチャ盛り系、いや海外にゃもっとスゴいのはあるんだが、日本でこのレベルの展示はめったにないんで。四の五の言わずにとにかく行っておけ。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018rubens.html

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