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2018年11月20日 (火)

カタストロフト美術の力(森美術館)

災害や惨事でアートがいかに影響を受け、またいかなる作品を生み出すか。バリバリ現代的テーマ……しかしこういう攻めの企画を大規模美術館でやるってところはさすが森なのである。期間も長い。見応え十分。

セクションⅠ「美術は惨事をどのように描くのか -記録、再現、想像」
最初にトーマス・ヒルシュホーン。いきなり災害で破壊された建物のデカいインスタレーションで驚く。見ると瓦礫は明らかにハリボテだが。そこがテーマなのだ。なんだハリボテじゃんとスルーしていいのか悪いのか分からない。だって災害現場だぞ。クリストフ・ドレーガー。911のテロで破壊されたワールド・トレード・センターの写真がなんとジグソーパズルになっている。これも、いいのかこれ? という方向みたいだ。ヴォルフガング・ジュテーレ。911のその瞬間のライブ映像らしいが進行が遅くて見れず。畠山直哉こっちは311の東日本大震災の陸前高田の写真。個人的に撮っていたらしいが、鑑賞者は災害も結局消費できる「作品」としてしか受け取らないのだ。しかし、これはあらゆるものについて回るな。あまり関係ないかもしれんが、何年か前の紅白歌合戦で、吉永小百合が原爆の詩を朗読したんです。でもその前後は楽しい歌番組としてガッチリできているし、視聴者もそれに従う、つまり、その、いかなる惨事であれど、そのあまり見事な消費されっぷりに驚いたものだよ。そうでないかい? おめーらもどうせ美術館を出たら忘れちゃうんだろ? うむ、すごかったなーという「作品」としての印象は残るかもしれないが。次は堀尾貞治。震災がテーマのパステルドローイング。これも現場との乖離がキツい。グチャグチャの絵にしか見えん。これを見て、「すごい災害だったんですねえ」と感心する奴は偽善者であろう……いや、まあ、こうしか描けなかったということで間接的な印象は持つかもしれないが。宮尾隆司の神戸震災の写真があり、この辺で震災ものはいったん終わって、ジリアン・ウェアリング。道行く人に今の気分を表したパネルを持ってもらって、その写真を撮るが……「絶望的」とかネガティブなもの3つを展示。意外とそこらの人も不幸せなのか? ホァン・ハイソンの絵画。一見、子供の絵のように見えるが、わざとだ。家族全員顔を手で隠したクリスマス、新郎新婦とキーボードしかいない寂しい結婚式など、冴えない心情あるあるの絵画みたいな感じ。ヘルムット・スタラーツ。顔を覆って酸素を吸う、みたいな現代の息苦しさみたいな絵画。ミリアム・カーンは原爆を水彩の鮮やかなので描く。武田慎平は。311被災地に行って、そこの土を敷いて、印画紙に放射線で露光させたプリント。星空のようだが星空じゃないぞ。二本松城とはやま湖の放射線量はヤバいぜっ。平川恒太「ブラックカラータイマー」これは面白かった。何か? 108つの電波時計を黒く塗って、そこに原発の作業員(マスク付き)を黒で描く。108つ全部の時計が動いていて、カチコチ音を立てているのがポイント。耳を澄ませば何とも言えん気分になる。そうだ感じるんだ。ミロスワフ・バウカ「石鹸の通路」文字通り、通路の左右に石鹸の固まりが塗ってある。ナチスのガス室に行く時に石鹸を渡されたんだそうで、そのモチーフだそうで。アイザック・ジュリアンはインタビューもののインスタレーションだが……長いのでパスしちゃった。トーマス・デマンド「制御室」は福島の原発の制御室の実物大模型の写真。オリバー・ラリックは、ミサイル発射のおもしろ合成写真。政府が既に、写真で嘘コいてたんで対抗して。そして我が国の池田学「予兆」さすが、超細密画。北斎の「神奈川沖浪裏」がモチーフっぽいが、大画面かつ細かいもので、どの一部をとっても何かの表情がある一つの絵になっている。恐るべき画家よ。藤井光「第一の真実」アテネで80体の男達の死体が出た。それは遙か昔のものだが、なぜ死んだかは分からない。分かる範囲を現代の人で再現パフォーマンス、その映像。要は80人が、理由も分からず死んでいく。パフォーマンスは、かの折元立身の「処刑」を彷彿とさせる(オレ参加者だお)。モナ・ハトゥム「ミスバー(ランプ)」文字通りランプ。回転すると兵士が映る。どーせアラブといえば兵士なんでしょとお怒りの様子。

セクションⅡ 「破壊からの創造-美術の力」
アイウェイウェイ「オデッセイ」ギリシアの投機風の平面的人物で埋め尽くされた大規模絵画……なんだけど、デジタルプリントがミソですな。コピペとか使ってそうで。あと、ここにも「神奈川沖浪裏」のモチーフが。さすが北斎。ハレ・ホウラニ。「パレスチナのピカソ」というビデオ記録。パレスチナとイスラエルが入り乱れる。展示は困難を極めたそうだ。アメリカが嫌いだから、アメリカと仲のいいイスラエルは悪、パレスチナは善ってな認識の人がおるが、あれはそう単純じゃなかろうよ。エヴァ&フフランコ・マッテス「プランC」チェルノブイリの使えない遊具の回収再生など。シェバ・チャッチは反ダウリー制度の写真。インド(の一部かな)では新婦が新郎に大金を貢いだりする制度があったりして、貢げないと殺されたりするんだと。女性差別が厳し過ぎ。そして我が国のChim↑Pom。311の福島原発の敷地内に行って、白旗を揚げ、日の丸を描き、さらにそれを原子力マークにして振るハイリスクなパフォーマンス。やるじゃん。原発にイエローカードもストレートで面白かったがな。カテジナ・シェダー「どうでもいいこと」。これがさりげないが意外と面白い。夫と死別し、何もかもどうでもいいと思っている祖母。しかし金物店の全商品を記憶していたんで、それを一つ一つ描かせる。やがて、どうでもいいなんて言わなくなった。ドローイングは別にうまいものではないが、それにより生きる力を取り戻した事実がナイス。実はどうでもよくない、何か素晴らしいことが一人一人の中に眠っているのだよ、と気づかせる作品。うまい。CATPC&レンゾ・マルテンス。プランテーション労働者のアート集め。チョコレート製のちょっとキモい人形あり。「HYOGO AID '95 by ART」震災復興のチャリティーアートで有名どころが集結って話。あの衝撃の抽象画家、山田正亮がいるのが面白い。高橋雅子「アートで何ができるかではなく、アートで何をするかである」これは震災避難所でのアートワークショップ。こういうのを積極的にやった。じつはこういう活動が生きる力になったりするのだ。加藤翼。被災地のシンボルの灯台を模した構造物を、みんなで引き起こそう、という企画の映像。ジョルズ・ルース。部屋の中にドローイングしてある一点から見ると形が浮き上がる。宮城の被災したカフェでやった。再現のインスタレーションあり。片目で見よ。ヒワ・Kは武器の金属で鐘を作る。逆はよくあるのでリサイクルだ。田中功起。海外の人で反原発ソングを現代風にするワークショップ。どうでもいいけどカントリーというかフォークというか、そんな曲調がダセェーっ。もっとカッコイイ曲にしねえか。米田知子の写真。かつての被災地の今。なんか普通なんだけどかつてここはすごかったんだぞ、というもの。坂茂「紙の大聖堂 模型1/10」ニュージーランドで災害にあって消失した大聖堂に代わって紙で作られた。強化してあるので当分持つ。その大聖堂の模型……なんだけど、デカいし、下から潜って見て、中にいるような感覚になれる。面白い。宮島達男「時の海・東北」おなじみLEDのデジタルカウントダウンアートを東北のあちこちに。それがどんな感じかというものを展示。地面にカウントダウンを散らして置いてある。いやぁ宮島達男は「メガデス」を見てしまうと、それを越えたものにはまず出くわさないんだよなあ。スゥーンの心が痛い構造物。池田学の大作「誕生」……の映像。11/28から本物を展示ですって。そして最後、オノ・ヨーコ「色を加えるペインティング(難民船)」舟が置かれた部屋を青と白のパステルで参加者が自由に描き加えられる……ったって、部屋中もう相当塗り重ねられていて、何を描き加えてもまず目立つものは描けない。原子力マークを描いてみたが、完全に埋没してるのう。

まだ映像で見ていないのもあり、やっぱりこれも十分時間をとって挑んでくれい。
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/catastrophe/index.html

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