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2018年11月26日 (月)

ブルーノ・ムナーリ(世田谷美術館)

サブタイトル「役に立たない機械を作った男」とのことで、明和電気のナンセンスマシーンみたいな電動のメカニックなものが出ていると思ったアナタ(オレも)、そういうものは出ていないのじゃ。まあ面白い展示ではあるのだが。
ブルーノ・ムナーリは1907年生まれのイタリアン美術家。絵も描くしデザイナーでもあり子供用の絵本なんかも作ったんだって。
プロローグ「未来派の頃」とのことで、始まりは未来派だって。ん? 1930年代なんて、未来派はとっくに終わってたんじゃないかと思ったら、ちゃんと続いてたんだな。1909年にマリメッコじゃなかったマリネッティが「未来派宣言」をしたが、1915年にもバッラが何か宣言しとるんよ。
最初の「軽やかな機械」はボールとパイプみたいなのを使った立体ものだが……動かねえ。絵画「風景」がいかにも未来派的な動的色彩。それから「役に立たない機械」という作品がいくつも出ている。何か? ……モビールじゃん。いやモビールとはちょっと違って、糸で吊ってある形が風などで動いて組み合わさって、様々な印象の形状を形作る……ってなもんで、抽象的で、それはそれで面白い……んだけど、これを「機械」と言われると、うううむ思ってたんと違う、となってしまうな。いや、面白いんですよ。一応。それからこの機械のための素描とか。雑誌とかあり。

「絵はあらゆる箇所が生きている」というコーナー。「陰と陽」というタイトルの絵がいくつもある。平面を曲線とかで2つに分割。これもいろいろな表情を見せる。途中から四角形の組み合わせが中心となっていき、印象としては……あのう、ほら、あいつ……うおおド忘れしたぞ。あのデ・ステイルのさ……と思い出せぬまま悶々と時間が過ぎる。くそう、脳の、この、ド忘れのメカニズムってなんなんなんだ? なぜそこだけ脳の回路がつながらん。あ、そうだモンドリアンだ。印象はそれに近い。「無題」という形が整ったミロみたいなのが並ぶ。

「子供はすべての感覚で世界を認識している」とのことで、絵本の紹介。息子に見せたい絵本が無かったんで、自分で作ったんだって。絵本のページ全部を見せてしているわけではないので(いわさきちひろ展なんかだとよくあるが)、こんな絵本がありましたっていう紹介だけって感じ。見たところ、普通ではないちょっとシュールな物語を、絵本を切ったりくり抜いたりで自由に表現している感じだ。日本語版も出ていて、なんと訳が谷川俊太郎ではないか。おお詩人、仕事してるなあ。そうだなあ「闇の夜に」なんて一部出ているが全部見てみたいものだな。それから立体もいくつか。中でも「短い訪問者のための椅子」がジョークっぽくて分かりやすい。

「どんな素材にもファンタジアへのヒントがつまっている」ここはまず偏光板アートがある。偏光板を通して見るのだが、偏光板を回すと色が変化して見える「動的」アートだ。うちの上の娘が小学校の自由工作でやったのだが、東急ハンズなんかで偏光板(色付きのも)を売っているので、みんなも作れるんだじぇ。それから「直接の映写」というのはフィルムに直接貼るなどして、投影するとデカく見えるというもの。どっちも実物と映像があるぞ。

「考古学のアイデアを美術の領域に取り入れる」コーナー。解説では「ムナーリの機械」について書いてあり、「ムナーリの機械」という絵本があって、それの1ページが見れるが……機械というか、「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりというか、無理なピタゴラ装置というか、まあそんなものです。あと児童文学のジャンニ・ロダーリとのコラボ。ロダーリといえば知る人ぞ知る児童文学の名作「チポリーノの冒険」の作者。なぜかオレのうちに岩波文庫があって結構読んでたのだ。で、コラボというのが「『クリスマスツリーの惑星』のための挿し絵の習作」宇宙冒険ものっぽい。でも機械があの調子なんで、SFを期待できるものではなく、やっぱしどうもファンタジーよ。

「作品は無限の変化として出現する」木の描き方や、繰り返しによるパターン。中でも正方形を組み合わせたような「ペアーノ曲線」に興味津々な様子で。その作品がいくつもある。抽象的なデザインのあといきなり「みどりずぎんちゃん」という絵本のためのイラストが並んでいる……ううむ、これは、どういう意図なのだ? 木々の描き方のこだわりなのか? ずきんも緑だし、背景もほとんど緑なのだが。
「みんなの美術にたどりつきたかったら」ここの注目は「旅行のための彫刻」なんのこたーない、厚紙でできた折りたたみ可能な立体作品。中には金属で作ったヤツもあるぞ。金属のは面白いな。それから「オリジナルのゼログラフィーア」これは何か? コピー機を使うものだが、わざとコピー元を動かして動作させ、予測のつかない妙な平面を生み出した作品群なのだ。ナイスアイディアですな。この技術を応用したらしい絵本「きいろずきんちゃん」が出ていたりする。

「どれほど多くの人が月を見て人間の顔を連想するか」ここはまずフォークを手に見立てた作品。ヒッチハイクしたり、たばこほしがったり。これもナイスアイディア。あとは「祖先の重み」という顔っぽいドローイング。またロダーリとのコラボ「空にうかんだ大きなケーキ」のための挿し絵。これもいろいろな線などを使って顔のようなものを表現。そう、ここは顔コーナーなのだ。あとは「未知の国の読めない文字」文字通りなんだけど、漢字の「月」みたいなのがいっぱい。あとは「木々」という作品は。これも「木」という漢字を使ったもんなんで、我々にはおなじみすぎる。

最後に「アートと遊ぼう」ということで、遊べるコーナー。絵が描いてある透明プラスチックを組み合わせて、絵のレイアウトができたり、厚紙の板を立てて迷路にできたり。それより情報として驚いたのは、いまはなき「こどもの城」の1985年の開館企画が「ブルーノ・ムナーリ展」で、本人が子供相手のワークショップもやったらしい。なんと「こどもの城」はアート関係の部門も持っていたのだ。おい、誰だよ「役割を終えた」とか言ってぶっ潰したのは。役割を終えてはいないじゃないか。

そんなわけで極めて点数多し。なかなか面白い。子供連れで遊んでもよし。ただ「機械」じゃないんだよなあ。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00191

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