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2018年12月 5日 (水)

ムンク展(東京都美術館)

混んでると思って平日に仕事休んで行ったが、そこそこ混んでいる。だいだいババアが多いよな。
ムンクはノルウェーの画家だって、初めて知った(おいおい)。

最初は「ムンクとは誰か」というコーナーで、自画像がよく並ぶ。ムンクは自画像が多かったんだって。最初の「自画像」は首だけのヤツ。「地獄の自画像」これ、いいね。この目や口があるようなないような感じがムンクってるぜっ。「スペイン風邪の後の自画像」病み上がりじゃなくて、単にヤバい顔のっぽい人。それから何やら写真が並ぶが、やっぱり絵の方がええ。

「家族 - 死と喪失」のコーナー。姉を亡くしたもんで、死ぬとかいうテーマが重要になる。「死せる母とその子」はエッチングだがなんとなくマンガ風。「臨終の床」はいい感じに病んできて、壁の模様が顔だったりする。「死と春」は油彩だが死んでるというより寝てる風。しかし何といっても「病める子Ⅰ」の連作。2つほとんど同じ絵が並んでいるが色合いが全く違う。ここで「ん?」と思ったのは、アレに似ているんだよ。アンディ・ウォーホル。なにそれ全然違うじゃんと思うかもしれないが、色味の違う「病める子Ⅰ」が2つ並んでいるところをちょっと離れてみると、おおウォーホルだ。しかもウォーホルも、マリリンとか電気椅子とか、死を彷彿させるモチーフを並べたりしているんだじぇ。もしかしてウォーホル、これを見たんじゃないか? と、時代も何も全然違うが、何か近いものを感じちゃうんだ。いろんな人の肖像画に手を出しちゃうのもウォーホル風だし。

「夏の夜 - 孤独と憂鬱」のコーナー、「夏の夜、渚のインゲル」……うむ、普通にうまい。「夏の夜、人魚」人魚だけど顔がムンク顔だ。おなじみ棒状の月もある。水面に映る月の光がつながって棒になっているヤツ。この月、なかなか好きなんだ。「幻影」小さい作品だけど、これはマジでヤバい。白鳥とこの顔! 「夏の夜、声」もなかなか病んでいてアウトサイダーアートっぽい人物がいい。「星空の下で」これもいいね。女の人を抱いているのは死神じゃん。「浜辺にいる二人の女」……って、これは女と死神じゃんどう見ても。「神秘の浜辺」では棒状の月が出ている。

いよいよ「魂の叫び」コーナーで、目玉の「叫び」が登場。展示方法はフェルメールの青ターバンと同じで、最前列は並んで移動しながら、その後ろにロープを張ってその後ろは好きに見ていい。並びは多くなかったんで、まず最前列で移動しつつ見て、その後ロープの後ろからも見る……ううむ暗いな。絵の雰囲気が暗いというんじゃなくて、照明が暗い。保存のためか……にしても、なんとなーく、コレジャナイ感がある。なんでだろうか。「叫び」は何種類かあって(解説パネルあるよ)、どうもこれは一番有名なヤツじゃないようだ。じゃあ何が違うのかというと、見たところ、橋の欄干の陰影と、あとは目なんだな。有名なヤツは目に点々があって、叫び声に震え上がってはいるものの一応生気があるが、今回のは、目は白い、なんとなくカラッポ。あとちょっとラフかな。印象はそれなりに違う。「不安」という「叫び」と同じ場所の絵があるが、木版なんだ。これ油彩のヤツ見たことあるよ。いい絵だったよ。いつのムンク展だったかな。西美だったっけな。「絶望」も同じ場所だ。

「接吻、吸血鬼、マドンナ」コーナー。ムンクこだわりのテーマを連打で見せるぜっ。まずは「マドンナ」、ムンクにしちゃまっとうな美女の絵。何種類もあるが、有名なのは精子と胎児がいるヤツな。石版の石もあるじゃないか。「接吻」もこだわりのテーマ。接吻で顔が溶け合っているというもの。これの非常に面白いのは最初のエッチング・ドライポイントのヤツ。多分一番最初のだと思うのだが、これがなんかスケッチ風でナマナマしい。男女裸だし。顔は一応溶け合っているが、この状態だと体も溶け合っていないとどうもおかしいが、それでは描きたいテーマと違うと見たか、あとの絵ではちゃんと服を着せている。絵は抽象に近くなり……かといって抽象は描かないムンクであった。「吸血鬼」も女が男にかぶりつくテーマだが、ナマナマしさがない。

「男と女」のコーナー。ムンクは絵を描くのには孤独が必要だとか言って結婚しなかったそうな。「目の中の目」は顔が病んでいる。男は死にそうじゃ。「嫉妬」「可愛い娘のところへ」の緑の部屋シリーズはイマイチ。なんとなく雰囲気が明るすぎ。「クピドとプシュケ」……神話がテーマのはずだがもうどうでもよくて、これってただのただならぬ男女じゃねーか。「マラーの詩」いいじゃん。ラフで裸婦で病んでいて、血が飛び散ってる。「すすり泣く女」……この女、デカいな。「すすり泣く裸婦」まあいいんじゃないの。顔もはっきりしないけど。「生命のダンス」これは面白いぞ。中央の男女は……ダンスしてねえじゃん。男は相変わらず目鼻のないような顔つき。なんだか女吸血鬼に襲われる寸前みたいだな。左右の女性がなんかしっかりしていて、主役をうまいこと引き立てている感じだ。

「肖像画」コーナー。ニーチェが好きだったそうで、そのニーチェを描いた絵。後は肖像画いくつか。「青いエプロンをつけた二人の少女」……萌えねえな……

「躍動する風景」コーナー。「太陽」は明るく眩しくてまっとうすぎる。「失踪する馬」は……馬のアクションをつけようとして……ウマくない。なんか素朴派の絵のようですな。

「画家の晩年」結構長生きしている。「浜辺にいる二人の少女」焼き直しっぽさが抜けねえ。「星月夜」これはいいですね。青い画面が。

ムンク全体を通して見るのにはいいが何か物足りない。なんでだ? 「叫び」に期待しすぎたか。
https://munch2018.jp/

余談だが少し前に池袋パルコでやっていた(今はやっていない)関連企画(みたいな)「ニュウ・ムンク展」に行ってしまい、がっかりした記憶も新しい。チャラいポスターを見て察しがつきそうなもんだが、つい行っちまってな。いやヒデエもんだった……いや全部が全部ひどくはないよ、面白いのもあったよ。でもね、JUN OSONとかいうヤツの作品は中指突き立てたいレベルで、だいたいムンクの「叫び」は叫んでる絵じゃねーんだよ(分かってやってるとか言いそうだが)。それだけならともかくなんだよあれは「みんな叫びたいでしょ、叫んじゃおうよ、みんな一緒だよ。きゃー」みたいな。この共感というかお仲間というかみんなお友達というかみんなでワイワイというか、いやそれだって悪くはなかろうが、それはもうムンクの孤独なる姿勢とは対極にあるじゃねーか。ぬぁにがインスパイアだっちゅーの。

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