« Chim↑Pom グランドオープン(ANOMALY) | トップページ | 「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」(渋谷区立松濤美術館) »

2018年12月22日 (土)

フィリップス・コレクション展(三菱一号館美術館)

フィリップス・コレクションといえば、森アーツセンターで見たルノワールの最高傑作(の一つ)であるところの「船遊びの昼食」を所有するところのもので、それが来ないんじゃなあ……とタカをくくっていたんですが、なかなかどうして、さすがのコレクターで、唸るような作品が並ぶ。
普通アーティストの年代順に展示するところを、あえてこの名コレクターの所有した順(だよな)に展示し、フィリップス氏の生き様と共に紹介するという異色にして攻めの展示がナイス。湯水のように金があったわけじゃなく、売っては買いしてコレクションを洗練させるドラマはエキサイティングだぜっ(……って、実はあんまし読んでないんだけど、諸君ならきっと大丈夫さ)。
出品リストのほうは年代順で、展示がこうだからメモるのが大変なのだ。でも展示してある順に話を進めます(全品じゃないが)。

最初はモネ「ヴェトゥイユへの道」うむ、手堅く開始ですな。ドラクロワの「パガニーニ」おお、あのヴァイオリニストのパガニーニですか。こんなヤツでしたか。ちょっと雑っぽいがよき小品という感じで。何しろ三菱一号館なんで、大物をババーンと展示する感じじゃないしな。そもそもドラクロワって大きなヤツがまず日本に来ないんだよなあ。クールベさん「地中海」うん、例の波が描いてあるね。雲もいいね。でもクールベさんならもう少しイケるはずなんだか(……って鑑賞者は勝手なものだな)。シスレー「ルーヴシエンヌの雪」シスレーが雪なんて珍しくない? だいたい川辺なんだが。いや、なかなかいい絵ですよ。シャルダン「プラムを盛った鉢と桃、水差し」出たなロココ時代にあって孤高の静物の巨匠。背景の色いいね。ボナール「犬を抱く女」色を見てボナールかなと思ったらボナールだった。モリゾ「二人の少女」色があの、パステルカラーってヤツ? クールベさん「ムーティエの岩山」筆でザザッと描いてある感じだけど、そこはクールベさんで渋くて暗くて深い。コンスタブル「スタウア河畔にて」ええっ? なにこれ? コンスタブルってこんなアヴァンギャルドなの描いてたの? 白が飛び散ってるぞ。セザンヌ「自画像」時々見るヤツだ。マネ「スペイン舞踊」おっと、何かこれ有名な絵っぽくない? マネのいい感じの人物の存在感。

移動して広い部屋へ。あのう……ところどころにフィリップスさんのコレクター活動記と絵や画家についてのコメントもあるんで、がんばって読んでくれ。ここでは絵についてしか書かんの。さて、ゴヤ「聖ペテロの悔恨」ううむ、いいな。目がいいな。で、その隣がなんとピカソ「闘牛」何描いてあるかよく分からない、でも何かスゴい。というのも実は「ゲルニカ」は同じテーマなのです。牡牛におそわれる牝馬。ピカソは牡牛なもんで、このテーマはなんか悔恨の絵っぽいところがあるのだ。それを意図して並べたんならグッドジョブだぜっ。ルソー「ノートル・ダム」小品ながらなかなかいいぞ。人が一人で寂しいが、それがまたよし。ボナール「棕櫚の木」デカいな。しかしボナール好きなようですなあ。パウル・クレー「養樹園」いい色といい線です(こう書いたって何だか分からんよなあ。いやクレーの「例の調子」なんだが)。ゴッホ「アルルの公園の入り口」全体はイマイチだが部分ではノリノリのゴッホ描線。ジョルジュ・ブラック「レモンとナプキン」このあたりブラック多い。

移動してまた小部屋の連続。ロジェ・ド・ラ・フレネという人、「エンブレム(地球全体)」キュビズムの人らしいが、シンプルな形を組み合わせてなかなか面白い絵を描くじゃないか。今回、知らん画家の絵が結構面白く、フィリップスに選ばれるということは、それだけで何かイイところある、と感じさせるに十分だ。セザンヌ「ザクロと洋梨のあるショウガ壷」おっと手堅い静物。キマっているセザンヌだ。マティス「サン=ミシェル河岸のアトリエ」何がいいのか分かんないけどマティスだな。ラフ裸婦ですな。コロー「ジェンツァーノの眺め」小さい。コローが小さくっちゃあなあ、とか思うけど、絵を見ると照らされてる壁なんかうめーもんだな。いい絵だなとか思っちゃうな。さすがフィリップスさん目利きですなあ。ドガ「稽古する踊り子」ドガにしちゃなかなか大きめの絵ですね。らしいし。シャイム・スーティンって人「嵐の後の下校」ルオー風か、いやフォーヴか、いやこういうものだ。いいよ。ドラクロワ「海からあがる馬」これも小品だが……やっぱお高いんですかねえ。デュフィ「画家のアトリエ」一瞬誰の絵かと思ったがなるほどデュフィか。水色がいい味出してる。カンディンスキー「連続」字みたいな生き物みたいなのが並ぶヤツ。

撮影可能部屋を通り、階段を下りて、ゴッホ「道路工夫」レモン色系でクセのない味わいのゴッホです。アングル「水浴の女(小)」有名な「トルコ風呂」の一部でもある背中向けた裸婦……え? これの大きめのヤツもあるの? まあいいや。小さいがエッセンスは感じる。モディリアーニ「エレナ・パヴォロスキー」おや、なんとなく目玉が描いてあるぞ。いつも白目なのに。ブラック「フィロデンドロン」おおっ。なんかイイぞ。キュビズムじゃない。平面的にして面白い。ブラックは結構あるが、実は我々、ブラックを知らなすぎではなかろうか。キュビズムでピカソとつるんでたオマケの人、ぐらいしか認識がないのは、ちょと過小評価じゃね? こないだ見たジュエリーもなかなかだったし。要再評価だ。ルオー「ヴェルレーヌ」彼らしい。なかなか大きい。人物だ。ブラック「ウォッシュスタンド」これも見事だ。

移動して最後の部屋の並びへ。ゴーガン「ハム」ちょっとハムっぽさが……それより次のスーティン。「雉」おおっ、死んでる。死は暴力だと、モランディ「静物」例のヤツ。ユトリロ「テアトル広場」例の……いや、ちょっと黄色っぽい。ここでグループ「青騎士」の3名。カンベンドンク「村の大通り」なにこれいいじゃん。シャガール風で単純化してて。マルク「森の中の鹿Ⅰ」うむ、カンディンスキー「白い縁のある絵のための下絵Ⅰ」幾何学形状を使ってなかった頃。ブラック「鳥」おや、これはアクセサリーにしてなかったか。ジャコメッティのデカい頭あり。モネ「ヴァル=サン=ニコラ、ディエップ近傍(朝)」淡いな。ピカソ3つ「横たわる人」女だ。何だか分からないが色がよい。お尻目立つ。「緑の帽子をかぶった女」立体顔。「グラスと果物のある静物」うむ。最後はドガ「リハーサル室での踊りの稽古」おお、小さいけどイイね。この部屋に差す自然光よ。

手堅い絵から小粒な名作まで、何しろ知らなかった画家まで面白い。絵だけ楽しんでもよし。フィリップス氏の目利きっぷりが十分感じられる。
https://mimt.jp/pc/

|

« Chim↑Pom グランドオープン(ANOMALY) | トップページ | 「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」(渋谷区立松濤美術館) »