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2019年2月26日 (火)

アルヴァ・アアルト もう一つの自然(東京ステーションギャラリー)

建築家です。建築系の展示は当たりはずれがあり、当たりなら、再現CGやらデカい模型やら実際の部屋の再現やらで異空間を体験できるが、はずれは見ても分からん図面が並び、専用用語多数の解説が多く、模型もちっこい。今回は、どっちかというと後者かな。いや、部屋の再現も一つあったし、デザインした椅子とかの実物は結構あったな。それにしても個人的にはしみじみした。
私は建築学科出なのだが、ロクに勉強しなかった。いや、成績は悪くなかったんです。要領はよかったから。でも課題をそつなく出すだけで、建築に本気で向き合ったり取り組んだりしなかった。あれだけ時間があり、あれだけ専門家がいて、あれだけ環境があったにも関わらず。なんと愚かな! なんともったいないことをしてしまったのか。
しかしそれはそれだけではない。当時はバブル時代。そして建築はポストモダンがもてはやされた時代。モダニズムが死につつあった時代なのだ。合理的建築なんかつまらねえ、とばかりにヘンテコな建築が出てきた。住吉の長屋とかポンピドーセンターとか、シドニーのオペラハウスとかな。それも、なんか私が引いてしまった原因って気もするんだなあ。なじぇなら、バックミンスター・フラーの考えを知って感動したからである(卒業後な)。アアルトは名前は知っていたが、よく知らなかった。モダニズムの優れた建築家なのである。あー当時でもアアルトをちゃんと知っておけばなあ……それがしみじみした理由なのですよ。

アアルトはフィンランドの建築家です。最初に「墓地礼拝堂」の図面がある。しかし見たまえ、この「手描きパース(透視図)」を。今でこそ3次元CADで簡単に作れるが、当時は線遠近法でせっせと作っていたのである。鉛筆描きだぜ。それから写真のスライドがあって、モノクロの。モダニズムだなあ、みたいな。いや、モダニズムって何のことだから分からんと言う人はですね、「パイミオのサナトリウム」の解説をじっくり読むとよいでしょう。病室の内装と家具もありますぜ。利用者主体で建築的機能から考えていく作り方、それでいてちゃんとデザインを洗練させる。おお、これぞモダニズム。地面に巨大な卵を埋めた造形をしました、なんていうファッキンアンドーとは対極じゃねえか(まあアンドーも造形だけ考えているわけじゃなかろうが)。
結構美術にも関心があって、「無意識」の中に建築と美術の云々のと言っているのは意外だ。仲がよかったらしいフェルナン・レジェの絵が2つあるが……小さいね。もっと大きなもんがあるでしょに。「ルイ・カレ邸」の解説も利用者主体ですね。どんな形かよく分からんが(おいおい)。「ウィーブリ(ヴィーボルグ)図書館」の写真(アルミン・リンケ撮影)あり。そう、ここで注目していただきたいのは、中から窓を撮ったもの。天井の曲面、いいですなあ。で、そこを外から撮ったところ、そう四角い窓が並んでおるだけなの。凡人は曲面を外までやらかしたくなるが、モダニズトのアアルトはそういう余計なことはしなかったのだよ。そう、これだよこれ。効果は最大に、手間は最小にすべし。

階段を降りて、1939年のニューヨーク万博のフィンランド館。写真がいいだろ。このデカいカーテンみたいな。オーロラをイメージだって。でも外装はただの四角い箱なんだぜ。それからアアルトデザインの照明いろいろ、椅子もいろいろ。板を曲げて作った定番の椅子。あと積み重ねられる丸椅子な。それからガラスの器、「5点組の器 リーヒマキの花」ただの丸いガラス器を積み重ねただけだけど、これがなかなか花っぽい。「サヴォイ・ベース」花瓶か。その型と、作成行程の映像。吹いて膨らんだヤツを型に入れて作るのさ。

それから大規模な「総合的建築」コーナー。たいてい模型があって、図面は引き出しを引き出して見る形。頓挫した建築もある。「国民年金局」や「フィンランディア・ホール」の模型なんぞを見ると、形の組み合わせでできていて、俯瞰すると全体的にはなんとなくガチャガチャした形状に見える。しかしこれも、機能から考えていった結果で、内部空間はきっと快適であろうと想像できる。そう、これもまたモダニズムだ。

そんなわけですから、「建築は芸術だ」と考えている向きにはぜひ足を運んでほしいものだ。あー俺も30年前にこれに行っていればねえ。その後の人生は違ったかもしれないねえ。
ちなみに、この東京ステーションギャラリーは年間パスポートがあって、4000円だって、私はパスポート持ってなくても、ここんとこ毎回行って払ってるもんで、パスポートなら大いに得だったじゃん。いや、今回も別にパスポート買わなかったんだが。多分買った方がいいんだよなあ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201902_aalto.html

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