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2019年5月 2日 (木)

バンクシー作品らしきネズミの絵(東京都庁)

港区の防潮扉の一部で見つかったバンクシーらしき絵である。この騒動がなかなか面白いことになっていて、小池知事が一緒に写真を撮り、その後扉は取り外して保管して、現在5月8日まで都庁で展示されている。
意識高い系のアート好きが、あれはバンクシーを冒涜してるとか、無効化してるとか、アートをよく知らないで並んでいるのは愚民の群だとか、なんでバンクシーはよくて、普通のグラフィティアートは消したり逮捕したりするんだよとか、それを含めてバンクシーなんだよとか、まあ百人いりゃあ百通り言いたいことが出てくるが、それを含めてバンクシーで……なに? あれがバンクシーじゃなかったら? ふふん、それでもこの騒動そのものがバンクシーの名によって起こっているから、これもバンクシー作品の一部になっちゃうんだなぁ……ってなこと言ってるときりがありませんな。

この騒動に「乗る」ために都庁に行ってみた。ツイッターとかでよく見る案内の紙を見る。これもなんとなく作品みたい。「バンクシー作品らしきネズミの絵」そう、あくまで「らしき」。それが権力の中枢の建物の中で客を呼び込んでいて、実際、客も押しかけていて並んで見ることになる。「グラフィティアート(アートレベルのストリートの落書き)」なんだから、現場からここに持ってきたら絵が死んでしまう……とは私は思わん。バンクシーはこれまでも騒動を起こしていて、有名なのは知ってると思うが、絵画がオークションで落札の瞬間に仕掛けられたシュレッダーが絵を半分刻んでしまった。現場は騒然となったが、その作品はさらに価値が上がってしまったのだ。ただのグラフィティアーティストではない。なもんで、バンクシーの絵は現場を離れた瞬間に別の価値を持って動き始める。コンセプト・アート(こんなヘンなことやったらアートっぽいだろ)の位置になるのだ。これは普通のグラフィティ・アーティストには無理。

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並んでいると、何となく有名っぽいから来ている人が多いようで、ほぼ全員スマホなんかのカメラを準備していて、誘導する職員も写真を撮りに来ているものとして誘導し、「詰めて並ぶと早く写真が撮れますよー」なんて言ってる。全員まとめて「この愚民どもがぁっ!」と言いたい人もいるかもしれない。あるいは「小池の人気取りに乗せられやがって」と苦虫を噛み潰している人もいるかもしれん。でも私思うに、芸術家は常に反権力でイキっていないといけないって誰が決めたんだい? いや、反権力は結構だけどさ、それをイキって押しつけて、その行為が「アートを分かっているヤツ」ってことになるなら、それ権力そのものじゃん。バンクシーがオチョクるとしたら、よく分からんで来ている善良な市民ではなく、権力者みたいに偉そうに反権力こそ芸術とか言ってる玄人じゃなかろうかね。そうなると、この展示は実に痛快ではないか。ついでにバンクシーから小池にサンキューレターが送られ(それも思いっきりベタなヤツ)、真に受けた小池が満面の笑みで自慢でもしたら完璧である。ハナモチならない意識高い系がこぞって「バンクシーには失望した」と嘆く様を見てみたいねえ。まあそうはならんだろうけど。

そんなわけで、私もミーハーっぽく写真を撮った。絵そのものは、型紙を使ってスプレーで吹いたものなので、特にどうというものではない。ネズミは普通にかわいいところはあるが。スプレーの使いかたがうまいとか、そういうもんでもないし。展示は美術作品らしくなく通路に置かれていて、一応説明のパネルはあるが、バンクシーがどんなアーティストかとか専門的なことは書いてない。確定していないからかな。

私が都知事だったらどうするか? うん、現場にあった時にアーティストに消させる。一応落書き禁止という決まりなのでね。かといってバンクシーらしきものをただ消すのももったいないし、やっぱり権力者は価値が分からねえとかバカにされるのもイヤなので、「バンクシーらしき絵を消す」というパフォーマンスを誰か他のアーティストにやってもらいます。Chim↑Pomあたりやってくれないかな。もちろん「権力の犬」と書かれたTシャツを着用して。その様子は記録され、東京都現代美術館のコレクションにして常設展で流そうぜっ。

しかし素朴な疑問として、なぜ都の美術館じゃなくて、都庁に展示してあるんだろうか? これも思うに、美術館側が突っぱねたんじゃなかろうか? まだバンクシーと決まったわけではないし、そもそも現場にあるべきグラフィティを外して持ってきて展示するなんて、そんなみっともないことできねえよ、というところであろうか。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/04/19/09.html

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