« バンクシー作品らしきネズミの絵(東京都庁) | トップページ | クリムト展(東京都美術館) »

2019年5月 4日 (土)

ジョゼフ・コーネル(DIC川村記念美術館)

時は今から約100年後、地球から0.6光年の位置に謎の天体が発見された。観測されたその姿から、その天体は「ヤヨイ」と呼ばれた。そして有人探査船が向かう。その宇宙船の名は「コーネル」。そしてその天体の衝撃の正体とは……ってなSFを書いてここで読めるんですけど、原稿用紙にして数百枚を読むほど暇な人もおらぬよ。ただ、草間彌生を特別なアーティストとして認識している私にとって、彼女の元恋人であるジョゼフ・コーネルをまとめて見る機会は、大いに待ちこがれていた次第です。特に「コーネルの箱」と呼ばれる一連の作品、これがお目当て。

この美術館に行くのは2年ぶり2回目。入ると、最初にコレクション展を見ることになる。何がよかったかな。前も多分見てるがね。キスリングの「姉妹」いいね。シャガールの「ダヴィデ王の夢」こりゃ大作だぞ。レンブラントの「広つば帽を被った男」これ自画像じゃないんだな(前も同じこと書いてると思うが)。あとこれは初めてかな。ジョージ・シーガルの「ガートルード(ダブル・ポートレイト)」家の壁とテラス……ベランダ(?)ごと作ってあるじゃん。そうそうこの部屋はポップアートが集まっていて、ウェッセルマンや、ウォーホルもある。ラウシェンバーグの「深掘り井戸の噴出」も大作。前はこの部屋日本美術だったかな。それからマグリットの「冒険の衣服」と再会。この絵は好きですよ。マグリットの裸婦ってあんましない……よな。エルンストのドアを使った「入る、出る」もなかなかだ。それからロスコルームへ。ん? 照明が色付きじゃん。本来の色じゃないじゃん。なんで? ……と前も全く同じことを思っていて、前の記録を見たら、絵の具がデリケートでこれ以上明るくできない、そうです。そうか、画家の意図じゃないんだな。ステラとかあるデカい部屋でオレしか客がいない。監視員が二人。ド赤字じゃん。でも別にいいんです税金じゃないし。そもそも、ここ客が多いんだけど、みんな無料の庭の方に行ってしまってな、美術館はそう混んでないのですよ。企画もマニアックだしな。すげえなDIC。金があってうらやましい。

いよいよ企画展。ジョゼフ・コーネルだ。箱だけじゃない。コラージュもやってるし、映画も撮ってるんだって。初期のコラージュは、エルンストのコラージュ作品の影響を受けていて、古い書籍の絵を切り抜いて作ってた。ずらっと並んでます。モノクロです。「無題」なんてのが多いです。エルンストはバキバキのシュールレアリストなんで、意外なものを組み合わせる衝撃をよくやったそうです。「デペイズマン」って手法だったかな。コーネルはそんなに意外な組み合わせじゃなくて、割と違和感の少ないもので不思議な画面を作る。例えは悪いがエルンストが覚醒剤ならコーネルはコカインみたいなもんですかね……って例えが悪すぎだろ(自己ツッコミは虚しいな)。さてさて、コーネルにゃお気に入りの女性がいて(草間の前に)。ロシアのバレエダンサーのトマノヴァである。コラージュ作品を捧げたりしているし、トマノヴァからも手紙もらったりして。「踊るタマラ・トマノヴァのコラージュ」これがポスターにもなっている。それからコーネルは雑誌の表紙のコラージュで活躍し、会社勤めをしなくてよくなったんだって。さすがの才能ですな。その雑誌「ヴュー」とか「ダンス・インデックス」なんぞが出ている。確かにコラージュだ。

そしていよいよ箱のコーナー。うおおおおっ各地からかき集めて十数個も並んでいるではないか。偉い。凄い。よくやった。鼻血ものだぜ。何がいいか? 全部いいんだが。まあ例えば、昔の建物とかで、壁が傷んでいるけど非常に風格があるってのがあるでしょ。あれを箱の内側に封じ込めるということをしている。壁とか床(?)とかが、腐食していたり剥がれそうになっていたり(運搬大丈夫なのか?)、繊細にして風格があり見て沸き上がるノスタルジイよ。床から古い釘が出ているとかもニクい演出。あと可動部がある(展示品に触れないから動かせないが)。上の方にシャフトが2本走っていて、その上に球体が乗っている。転がる。あるいはシャフトにリングが付いている。動かせる。楽しそう。もっと凝った奴は「ピアノ」という内装に楽譜を使っていたり、楽譜の小箱があったりのもんなのだが、なんとオルゴールを積んでいる。箱の後ろにネジがあって回せる。オルゴールの音は、ヘッドホンで聴けるよ。私の好みは「カシオペア」床の痛み具合がイイ。アンティークだ。壁の星のデザイン、レールと球体、背面に全展図(背面も見ろよ)素晴らしいですな。詩情ですな。「鳥たちの天空航法」も崩れた壁での演出がイケる。「ホテル」のシリーズでは、顔のついた太陽さん、そう、この顔。ちょっと濃いツラ。ニコニコ太陽じゃない。芸術作品の太陽はこうでなくちゃねという顔。この顔のピンバッチがあったんで買っちゃったよ。「無題(ラ・ベラ[パルミジャニーノ])」はパルミジャニーノの絵(印刷物)を使っているが、それにしても壁にゃひびが入っていて、ポロッといっちゃいそうなのが実に危うい。しかし、これがコーネルの箱の世界だ。堪能した。先日没後十年を迎えた清志郎じゃないが「ご機嫌だぜベイビー!」。

後半のコラージュ。モノクロからカラーになった。ポップアートっぽいのもあるかな。まあ、こういうコラージュになると、先日庭園美術館で見た岡上淑子なんぞもいい勝負してるから、コーネルの独壇場って感じでもない。それから交友関係のコーナーがあって、エルンストとの交友とか……おい、なんで草間彌生との関係について一言も書かれていないんだっ! 結構有名な話だと思うがね。こりゃあナニか裏事情がありそうだぞ。コーネルサイドにとっちゃあまり草間に触れたくないとか? まあ元恋人だったとはいえ、ホームレスみたいとかマザコンだったとか、電話攻撃がひどいとか散々な言われようだしなあ。あるいは先のトマノヴァを目立たせたいので、草間に触れたらトマノヴァものを貸さないとスミソニアンがゴネたとか。いやいやいやそんなこともないよな。まあいいや。よくないが。それから映画コーナーがあって少し見たけど、特に驚異的というもんでもなかった。全部見たわけじゃないけどね。

外に出て庭も散策。広いな。手入れも行き届いて噴水もある。芝生の広場にゃ、キッチンカーが出ていた。ショップ、レストランもあって、レストランは満席のようで人が結構待っていた。佐倉駅から往復無料送迎バス。さすがDIC、金が……まあいいや。

これだけ箱が集まることは、まずないと思います。あの閉じこめられた完成度の高い世界を、いくつも目にできる機会は今しかない!
http://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition/

|

« バンクシー作品らしきネズミの絵(東京都庁) | トップページ | クリムト展(東京都美術館) »