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2020年5月18日 (月)

雑司ヶ谷霊園

またまた週末に行くところがなくなってしまった。いいかげんにしやがれコロナよぉ……まあ下火にはなってきたようだが、東京の美術館の再開が遠いのう。哲学堂公園もあれだけ行くと「もういい」という感じなのである。
で、この雑司ヶ谷霊園、自転車で行ける距離だが、行こうかどうしようかと思って、前に簡易地図の印刷をしておいたものの……なかなか行くテンションが上がらない。だってぇ、墓なんぞ見て面白いのかぁ? 人によれば、ああこの人がここに眠っているんだとシミジミするみたいですが、多分私はそういうタイプの人間ではないのです。墓地だってなあ、墓が並んでいるだけなもんなあ。でもとうとう行ってみた。
墓の鑑賞と言えばね、寺山修司の絶筆「墓場まで何マイル?」というのがある。病床の寺山が、世界の墓の写真集を見ていて、頭の中にジョン・ルイスの「葬列」というジャズが流れていた、というもの。だんだん高まっていく華麗な曲なんだそうだ。私は雑司ヶ谷霊園の行き帰りにこのことばかり考えていた。他に考えるものが特になかったもんで。ちなみ私は寺山修司読みではない。福島泰樹の「短歌絶叫コンサート」でこの作品に接している。つまり福島泰樹経由です。また行きたいよねえ。吉祥寺曼荼羅は無事なのか?

自転車を停める場所がなくて困ったが、何とか見つけて中へ。早速出向いたのが竹久夢二。写真撮っていいのかな? うーん、いいのかもしれないが、あまり撮る感じでもないな。人もおらんし。そこは簡単な石みたいなのに「竹久夢二を埋む」と書いてある。竹久夢二の評価は揺るぎないんだけど、私は夢二はそんなにこだわりはない(と言いつつ岡山の美術館も行ったが)。同時代なら高畠華宵の方がなんか理想化の狂気を感じて好きなんだがね。
にしても、霊園って墓だけがあるわけじゃないんです。休憩所みたいなのがあって、キャンプで使うようなテーブルセットが置いてあって、花で飾られてたりする。ちょっとしたランチでもできそうだ。まあ墓に囲まれてランチもないでしょうなあ。あと「下げ花置場」という、多分枯れかかった花などを墓から下げて置いておく場所が所々にあって、そのノボリが水色で結構目立つ。いや、目立つ必要があるから目立つんだけど、霊園全体の雰囲気からするとちょっと浮いているよな。
泉鏡花の墓……は普通。何か読んだかな。そうだ「外科室」って映画見たぞ。吉永小百合が出ていてな、短くてありゃなんだったんだみたいな映画だったが、覚えているということは結構印象的だったのかもしれん。
小泉八雲ことラフカディオ・ハーン。日本文化研究で確か……民話か怪談か何かまとめたんだよな。いや、読んだよ。墓はプチ日本庭園みたいな感じ。
羽仁もと子。自由学園の創立者。池袋の自由学園明日館は、フランク・ロイド・ライトの名建築で見学もできるし(今は多分できない)いい雰囲気だぞ。また行きたいねえ。墓には何かオブジェが置いてある。
夏目漱石。知らん人はいないだろうが、墓はここにあるのだ。文豪らしく堂々たるデカい墓だ。日本風……だけどちょっと変わった形だな。漱石はね、後期三部作は読んだな(あまり覚えてないが)、前期のは「三四郎」を青空文庫で読んで「それから」が文語だったんで挫折(挫折するなよ)。
東郷青児もいる。画家だ。墓は大きくない。でも年表付き。東郷青児を所蔵する損保ジャパン日本興亜美術館……が、なんちゃら美術館になって開館待ちのはずだ。東郷青児の女性像ね、独特だよね。最初はなかなかいいなと思って絵はがきも買ったりしたが、あまりにどれも同じ雰囲気と人形っぽさで、なんとなく嫌になっちゃった。最近じゃ展示されててもスルーしてるし。
その隣にジョン万次郎。東郷青児に比べて広いスペースだな。名前はよく聞くけど、何やった人かあまり知らんの。江戸時代の通訳? 昔住んでた高円寺に「ジョン万次郎」って居酒屋がありました。入ったことないですが、ちょっと旨そうな名前だなと思った。
他にも有名人、何人もいるんだけど、この辺で疲れてしまった。

それで、並んでいる墓を見ると、いろんなタイプがあるんだね。高いとか低いとか、形が違うだけでなく、自然石を削ったようなのとか、キリスト教の十字があるとか、仏像がついてるとか、どこぞの女医さんの墓には傍らに女性像がついてるとか。それから手入れの具合もいろいろで、きちんと手入れされてるのとか、雑草が生えかけとか、中には雑草でボーボーになっていて、墓がその中に埋まっているのもある。そんなわけで、並んでいる墓の間を歩いていくと、これが結構「にぎやか」なんだ。故人の霊が自分の墓や隣の墓を見て「いや、おたくはいいですな。うちなんか草ボーボーですわ」とかやってるみたいで、寺山修司ならずとも、何となく陽気なジャズが似合うような空間でもあるみたいだ。病床に伏したら、ドローンを使って墓場巡りでもするか。

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