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2020年7月30日 (木)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(国立西洋美術館)

平日行ったのは、午前に人間ドックでした。血圧以外異常なし。血圧ヤベエ。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーって2回ぐらい現地に行ったことある……んだけど、もう忘れた。今回の企画はコロナちゃんでとっくに終わっているはずが期間延長になった。よかったですね。第2波で潰れる前に行っておくぜっ。
点数そこそこだが選りすぐりであって、習作とか、版画とかで水増ししてないところが好感度高い。

概ね年代順でまずイタリアルネッサーンス。ウッチャリじゃなかったウッチェロの「聖ゲオルギウスと竜」の竜の柄がいいですね。ジャノメチョウみたいで。要は目玉模様ね。クリヴェッリの「聖エミディウスの受胎告知」これは、すごい。細密だ。空にUFOが浮かんでいてそこから光線が出ている……UFOじゃないよな。空に装飾された穴があいて、そこから天界の光線が射している……んだよな。それにしても細密ぶりがハンパない。布の陰影とかも細かい。単眼鏡持って行ったけど正解。諸君も今回は単眼鏡持参をおすすめする。他にもあるので。それからヴェネツィア派と思える鮮やかな絵、ティントレットあたりかなと思ったらティントレットだった「天の川の期限」。他にも有名どころボッティチェッリやティツィアーノがある。

次はオランダ絵画。まずレンブラント。割と難なく穏やかな表情で、みんなスルーしがち。でも、レンブラントらしい絵だぞ。ヤン・ステーン「農民一家の食事(食前の祈り)」ファンキー風俗画家ステーンにしてはおとなしめ。普通はフェルメールの「静」の世界に対する「動」の世界を担っているが(まあ本人にそのつもりはなかろうが)、今回は静かだ。そのフェルメールが一枚「ヴァージナルの前に座る若い女性」この楽器の模様やら反射映り込みやらが凝っているおなじみのフェルメール。ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ「ロブスターのある静物」これがなかなか仰天させてくれるほどのド写実絵画。超リアルだ。ホキ美術館にあってもおかしくない。確かホキにも誰かが描いたロブスターがあったね。

ヴァン・ダイクと肖像画のコーナー。イギリスの肖像画の巨匠のヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」姉妹だそうで。それよりキューピッドがカワイイじゃん。ゲインズバラの「シドンズ夫人」の背景が炎っぽいのが面白い。トマス・ローレンスの「シャーロット王妃」は王様がメンタルがやられちゃって心配してるみたいですって。

グランド・ツアーつまりイタリア絵画。当時美術の最先端はイターリアなので、金持ちはイタリア旅行したんだって。カナレット「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」これはまた細密ですな。賑やかですな。単眼鏡でエンジョイですな。カナレットはイギリスにも来たそうで「イートン・カレッジ」これはイギリス風景。ヴェルネの「ローマのテヴェレ川での競技」これも細かいねえ。

スペイン絵画。いや、すげえないろんなジャンル持っていて。さすが大英帝国ですな。ムリーリョ「窓枠に身を乗り出した農民の少年」うまいねっ、この少年っぽさ。ムリーリョはもう一つ「若い洗礼者聖ヨハネよと子羊。聖ヨハネ。これも少年萌え。羊毛フサフサ。ゴヤ「ウェリントン公爵」宮廷画家の本領。少し歯が見える顔がイカす。グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」さすが個性あるぅ。グレコってすぐ分かるな。コントラストの強いピンク衣装。顔も小さいし体はねじ曲がっている、時代の典型。ヴェラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」窓の外にキリストがいるぞ。

風景画とピクチュアレスク。実景よりも「絵になる」風景がよろし。理想はクロード・ロランの理想風景。そのロランが一つ「海港」いやー、夕日か朝日か分からないが、なかなかいい演出だ。あとは名前を聞いたことのあるロイスダールとかゲインズバラとかあって、普通の理想風景(って言い方も妙だが)。コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」暗い印象派っぽい。シカがいるぞ。ターナー「ポリフェモスを嘲るデデュッセウス」タイトルはアレだが風景画。ターナーにしてはどんな景色か分かる。何描いてあるか分からなくて、これ抽象画かな、なんて感覚で愉快に見れる絵がターナーの本領だ……と思う。

最後にフランス近代絵画。もうおなじみのヤツラのおなじみの絵が並ぶ。アングル「アンジェリカを救うルッジェーロ」おや、これはアンドロメダじゃなかったかな。同じ意味か? 裸で岩にくくられているのはアンドロメダだったと思うが。ラトゥール「薔薇の籠」得意分野の花の静物だ。ピサロ、ルノワールは、おなじみの感じ。ドガの踊り子、モネの睡蓮の池もおなじみ……って説明になってないが説明がめんどい。そして最後にゴッホの「ひまわり」。目玉なのかな。さすがいい絵ですね。Vicentというサイン入り。印象としてはSOMPO美術館にある物とほとんど変わらないが(あとで比較パネルがあって、ほぼ同じような絵)、やはりサイン入りはちょっとカッコイイ。逆に、これとほぼ同じものが常にSOMPO美術館で見れるってのもすごいことだな。

時代時代の代表で構成されている。予約制だお。
https://artexhibition.jp/london2020/

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2020年7月26日 (日)

和巧絶佳展(パナソニック汐留美術館)

1970年以降に生まれた今時の和の工芸12人による展示。「超工芸」と称されていることもあり、現代的センスや、超絶技巧も堪能できる。タイトルの意味として「和」は日本伝統文化の美、「巧」は手業の極地、「絶佳」は素材の美だそうです。

「和」のエリアから。
舘鼻則孝は花魁の高下駄から着想を得た超圧底靴「Heel-less Shoes」シリーズ。しかも赤いキラキラだったりして派手。現代の花魁テイストみたいな感じか? レディーガガまで履いてたというんで有名になった。あとはテキスタイルとか。
桑田卓郎、今までにないような色の焼き物。いや、この感じはどこかで見た……そうだパルコだ。パルコに出ていたかは知らんが、いかにもパルコミュージアムに出ていそうな、ちょっとキッチュなアートって感じ。でも使っている技術は本物で、熱で釉薬がめくれ上がるとかなんとか、ビデオでやってた。
深堀隆介。これが今回最も仰天したバカテク。桶の中に金魚の群がおる。これが絵だって? どう見ても本物しかも立体だぞ。どう描いているのかというと、透明樹脂を薄く敷き、金魚の一部を描いて、その上に透明樹脂を重ね、そこにまた上の部分を描き、という何層もの層状絵画になっている。上から見ると見事立体に見えるというわけ。一匹でも存在感。金魚の群も生きてるようで、まるで時間が停止したかのようだ。こりゃアートアクアリウムよりすげえな。

ここから「巧」のエリア。
池田晃将。これがまたバカテクもの。螺鈿(らでん)細工だが、その模様がデジタル数字だったりする。しかも虫眼鏡で見ないと分からないぐらい細かい。螺鈿の工芸品というか、何かSF映画に出てくるアイテムみたいですな。形も立方体とかピラミッド型とか、ちょっと神秘的な感じで。
……それにしても、客はそんな多くないのにシャッター音が多いなあ。撮影可能だからだが。でも、一つのヤツを2枚3枚撮る輩がザラで、結構そこらじゅうでシャッター音が響く。まあこの技巧を撮りたくなるのは分かるがね。
見附正康。まだバカテクが続く。九谷焼。大皿の模様が特徴的で……薄く色塗った面かと思ったら、これがなんと、全部細かい線でできている。えっ? これはヤバい。この大きさでこの微細模様ですと? 赤絵細密という技法だそうだが、描いてて気が狂わないか? というレベル。
山本茜。截金(きりかね)という金属工芸の技術をガラスの中に閉じこめる。繊細な金属細工がガラスの中に浮いている。いいですねえ。「花車」なんて皿、細かいぞう。
高橋賢悟。アルミニウムの真空加圧鋳造法というもので、ごく薄い花びらみたいなものを無数に作って造形。繊細極まりない……が、なんかみんな同じに見えてしまう。これどこかで見たよなあ。三井記念だったかな。

ここから「絶佳」コーナー。
新里明士、「光器」というシリーズ。釉薬が光を透過する性質を生かし、器に無数の穴をあけて、下から見ると模様が光る。そう、これ下から見るのが正解。これを知らずに漫然と大きな器だなあとか思って見て、一回出て外の映像見てそうなのかと分かり、再入場した。もう一つのシリーズはプラスチックみたいに見える。
坂井直樹。鉄の道具というか、器というか。ポイントは錆びてること。しかもあまり歓迎されない赤錆っぽい。でも、一様にきれいに錆びているもので、そういう色を付けたのかという感じになっている。
安達大悟。テキスタイル。染めてる。ちょっとデジタル風なセンス。
橋本千毅。螺鈿とか蒔絵とか。箱になっている物より「蝶」という、文字通り蝶を作った物がイイネ。メタリックな蝶はカッコイイ。
佐合道子。焼き物。白い珊瑚の化石みたいな有機的集合体。

以上。ここは広くはないが、毎度なかなかガンバって見応えある内容にしてくれる。あとさすが電機メーカーで、ライティングがうまいですよね。
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200718/index.html

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2020年7月24日 (金)

古典×現代 2020(国立新美術館)

玉砕! 哀愁の日本博……今頃本当は東京オリムピックでありましたね、それで外国人観光客をアテにして、この機会に日本文化を紹介しちゃおうぜという気合いの入った「日本博」ブランドの企画がところどころで行われているのです。でもこの通りコロナ禍で外国人観光客なんぞ来てません。しかも東京は現在どう否定しても第二波で、GoToからも外された。ひでえやコンチクショー。この企画も日時予約制だぜっ。まあ見る側にとっては混んでなくていいんだけどね、美術館全体でも、他の展示室も何もやってなかったりして、なんか閑散としていてヤバいぜっ、日本経済。

日本の伝統美術というか古典美術と、現代美術のコラボ。古典一人(あるいは一分野)に対し現代一人の形式になっている。
最初は「仙厓×菅木志雄」。部屋のほとんどが菅のインスタレーション。大きな○と□を石などで形作ったもの。仏教における「空」を意識したそうだ。広くてなかなかいい空間ですな。仙厓はというと掛け軸一つ。「円相図」○を描いて「これ食うて茶のめ」。一つの悟り(丸)に達してもそれがどうした。まだ先はある。そんな丸などもはや饅頭程度のものよ。これ、いくつかバージョンがあるらしく、今回見たのは「こ」の字が食われていた。しかしこの一点だけか……もう何点かあってもよかったんじゃね? コロナで持って来れなかったのか?

「花鳥画×川内倫子」えー、川内倫子は写真家です。自然の動物とかね、撮ったりしてます。「うたたね」というタイトルで写真を見ると、餌をねだって口開けて群れる鯉どもの中に、浮いてる魚が一匹。うたたね~……死んでんじゃね? まあそんなのです。動画もあった。壮観な鳥の群とか。火花をまき散らすパフォーマンスみたい映像があったのだが何だ? どこかの祭りか? 調べたら中国河北省の「打樹花」という祭りだそうで、溶かした鉄くずを壁にぶつける……んですって。こりゃ豪快だ。花鳥画については、掛け軸がいくつか。有名どころは若冲の鯉なぞがあるが、あとはよく知らん人で、まあそんなにぶっ飛んだものはありません。墨絵の牡丹図がむしろ色がない新鮮さがあってよかった。

「円空×棚田康司」どちらも一本造という一本の木から彫り出すことにこだわる。おなじみ円空は荒削りで、いやー円空は偽物が多いとよく聞きますが、これじゃ多いよなあ。なんとなく誰でも似たものを作れそうだしなあ……と思ったりする。棚田は人物、とくに少年少女だそうで、少女像とかあるんだけれど、いわゆるカワイイ女の子って感じではないな。「鏡の少女」はいかにも丸太から彫り出した感がいいですね。「宙の像」というデカい少女像も見応えある。布のヒラヒラ感と木のテカテカ感がよく合っている。後ろ側を見ると……ん? 何も彫ってなくて垂直じゃないか。解説を見ると、これが「背面無視」というものだそうだ。それでなんと、円空もこの背面無視をしている。そうか、これは円空リスペクトのものだったのか。

「刀剣×鴻池朋子」今や大インスタレーションで大いに知られる鴻池。アーティゾン美術館でもナイスな個展を開催中。ここも入るとドカーンとデカいヤツが目に入ってくる。動物の皮を縫い合わせて、巨大化した平面に絵を描いた。迫力満点。その間に振り子が揺れている。振り子はアーティゾンにもあったな。この振り子をよく見ると顔じゃないか。キメエな。刀との関係は、刀と人物を一緒に描いた絵がある。この動画もあった気がするか、今回動画は出ていない。刀の方は……ううむ、長さぐらいしか見分けつかないのだが。
このデカいのだけは写真撮れる。

「仏像×田根剛」暗い空間。日光菩薩、月光菩薩を動くライトで、ぼんやり照らすインスタレーション。ライトが小さいので凹凸が目立つようになって、今までにない存在感が出ている……ような気がする。時に真っ暗になるので、そこらの人に触りたい放題……ってなことはありません。

「北斎×しりあがり寿」おなじみ富嶽三十六景シリーズと、それぞれのパロディ作品。元の絵と並列展示なので、贅沢かつ分かりやすい。あとはアニメーション作品があるが。部屋の壁三面を使うような大きなもので見応えあり。四畳半から始まる北斎の絵画世界だ。楽しくストレートで分かりやすい映像なものだから、何だか万博の日本館にでも来たような気分になる。そうだねえ、外国の方にもウケたでしょうなあ。

「乾山×皆川明」おなじみ陶器の尾形乾山。私は
焼き物はどうも見ないんだけど、今回はなかなかいいですな。「色絵椿文向付」の緑色とか鮮やか。皆川は「ミナペルホネン」というブランドを出してる。現代美術館でやってましたな……行ってないけど。今回は乾山作品の演出にテキスタイルなどが使われ、なかなかよく合ってます。ショーケースの上の円筒とか。

最後は「簫白×横尾忠則」存在感のある簫白に対抗して横尾の絵画が炸裂。簫白は「寒山拾得図」などのおなじみの絵、おなじみのエグい顔。横尾はお遊び絵画みたいだけどちゃんと描いてあるし、デカい。「戦場の昼食」というインド風味のケッタイな絵がある。象頭のガネーシャもいるじゃん。なんか原子力のマークあるじゃん。そこらじゅうに「LOVE」と「MONEY」ってあるじゃん。あと「SHOHAKU」って字も多数。妙な絵だな。解説を見ると、この絵はマネの「草上の昼食」のフェイクとあるが……似ても似つかないが。「寒山拾得2020」という絵。新しいが……えらいラフだねえ。あと多くの絵に首吊り用の輪になったロープが描いてあるが死にてえのか? ……じゃなくてエゴの死を表してるんだそうです。

そんなこんなで三密に注意しながら経済回しに行こうぜっ。入口で検温もやってるよ。
しかし来年もこの「日本博」やるかねえ……やらねえだろうなあ。オリンピック自体開催が怪しいもんなあ。
https://kotengendai.exhibit.jp/

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2020年7月20日 (月)

きたれ、バウハウス(東京ステーションギャラリー)

今まで幾多のバウハウス展が開催されてきて、その度に、この美術と建築と工芸と教育が一体となったシロモノをどう見せるか、というのが工夫のしどころであって、それ見るのがなかなか面白い。概ね展示物は決まっていて、誰それの際だった名作、があるわけではない。もちろん有名画家のちょっとした作品やら、誰それがデザインした名品なんてのもあるんだけど、工芸品や工業製品もあり、拝むようにありがたいものは、まあ出てこない。見映えのいいものは限られている。あとは腕の見せ所さ。
今回は、こんな教育をしてた、というアプローチだお。事前予約制だが、なかなか盛況で、密ギリギリではないか。
パネル解説が充実。情報量多い。

最初にバウハウスの雑誌類、あーこういうの出してたんですなあ。いや多分何度も見てるけど、忘れてる。授業の様子の写真とかありますな。そういうのを一通り見せて、いよいよ教育現場へ。基礎教育をまずやって、それから例のマイスター(親方)とかいうユニークな制度の工房教育へ進む。バウハウスという学校はアカデミックな美術より工芸寄りで、最終的に建築に至るとしているのだ。
基礎教育のコーナーで、先生別ですな。先生ったって有名芸術家です。まずイッテン先生……はあんまないな、解説はあるけど忘れた。やっぱ素材でしょみたいな話だったかな。モホイ=ナジ先生、物を組み合わせてバランスを取ったオブジェを作る「バランスの習作」が、見映えします。あと触覚ね。触って覚えよう素材、みたいな、いろいろ触れるサンプルをレイアウトしたデカいパネルがあるんだけど、もちろん展示品にゃ触れません。コロナもあるしね。アルバース先生は、紙を切って立体する「紙による素材演習」、おお、バウハウス展の定番、ここで出てきました。パウル・クレー先生はもちろん線と色、授業を受けた人のノートを見ると、いかにもクレーっぽい線描だな。カンディンスキー先生は「分析的デッサン」。脚立と、テーブル、椅子とかがまとまって置いてあり、その形状を分析し、「緊張感」を出しなさい。というので実際にその脚立とかが置いてある。そうかこういうことか。こういう実物再現はイイネ。シュミット先生はレタリング。いやー、今はフォントも大型プリンタもあるんで、レタリングなんてやらんでいい時代になりましたな。私レタリング四級持ってます。今できるか分からんけど、溝付き定規で筆使って直線引けるんだぜ。シュレンマー先生、ヌードデッサン。肌、筋肉、骨であるところの「人間」の授業。短い期間だったらしい。それを受けた人の話、ただのヌードデッサンじゃないぞ、足をあげるようなキツいポーズのモデルを五分で描けって。それ以上はモデルがもたんから。舞踏家だかを使って筋肉をガッツリ使っている様子。いい教育ですな。マック先生のこれもバウハウス展定番「混色独楽」。色分けされたコマを回すとどうなるかな?(回せないが)

下の階へ。基礎教育が終わったんでいよいよ工房教育。「おう、シンナーに気をつけて壁塗んな」「分かりました、親方!」の親方と弟子制度みたいな教育方法。
まず家具工房。ここにはバウハウス展といえばやっぱコレだね、の「クラブ・アームチェア B3(ヴァシリー)」つまりスチールパイプを使った「例の椅子」がある。会場を出た休息コーナーで座れる実物あり。あと、椅子とかテーブルとか、いやー展示が派手になってきましたな。金属工房。これも定番、球形の茶こしを作れの課題。あと、ドアノブとか。陶器工房。水差しとかポットとか。やっぱりアールヌーヴォーみたいな有機的なヤツラとは違って、きちっと工業的にデザインされてる感じのが多いですな。彫刻工房、彫刻というより立体。で、ここにも定番「光の彫刻」、円盤にくっつた斜めの棒をグルグル回すと面白い立体形状になる。今回動いてない。普通動いたり止まったりという仕掛けにしてあるんだがなあ……なんて考えていると、監視の女性が寄ってきて「これはスイッチを押して動くはずだったのですが、コロナ対策で禁止にしました」とか言うのです。ちょっと待てよ、何で人の考えていることが分かるんだ? お前はエスパーか? と思ったら、確かにケースにボタンが付いている。こいつを押しそうな挙動不審のヤツにはみんな声をかけてるらしい。それから織物工房はテキスタイルのデザイン。サンプルもあったが、ちょっとここは地味かな。壁画工房、ここもそんなに多くない。印刷や広告の工房、これはなかなかポスターとか豊富に展示してある。印刷されたポスターばかりかと思ったら、そのもととなったオリジナルのコラージュだったりして、なかなかあなどれん。版画工房ではイッテン先生の版画、あとカンディンスキー先生も。それから舞台工房。舞台は建築と同じく総合芸術とみなしていたもので、なかなか力を入れておる。「三つ組のバレエ」の動画を再生中。バレエというか、なんかアートオブジェが動いているだけみたいなものあるが、ちゃんとバレエダンサーだって分かるのもあるね。とにかく衣装が凝っている。そして建築工房。よくバウハウスの建物のデカい模型があったりするのだが、今回は住宅案「大きな積み木箱」の模型がなかなか見映えがいい。バウハウス・デッサウ校舎の模型もあったが、そんなに大きくはない。バウハウスはヴァイマール期、デッサウ期に分かれていて、その歴史的流れを中心とした展示も過去にあったことはあるが(内容覚えておらんが)、今回は歴史面はさらっと触れている程度の感じ。

「『総合』の位相」のコーナー。こうして総合としt、見せたのが当時のバウハウス展。その辺りのポスターとか椅子とかの展示。なんか色と形態の結びつきとかいう話が載っていて、黄色は三角、赤は四角、青は円だそうだ。そうなのか? あとはバウハウスの日本人のコーナー、この辺りになるともう疲れてくる。水谷武彦の紙工作の再現、山脇道子のテキスタイルが目立つ。あと雑誌記事とか。

解説タップリで、どんな教育だったかが分かる内容になっているぞ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202006_bauhaus.html

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2020年7月12日 (日)

開館記念展 珠玉のコレクション(SOMPO美術館)

チン……いや何でもない。ソンポ美術館ができました。前は損保ジャパン日本興亜美術館とか言ったんで「ジャパン日本」とか呼ばれてましたが、すっきり短くなりましたネ。高層階にあったのが建物も独立し、本社高層ビルの隣にカートリッジというかルーターというか、そういうPC周辺機器みたいな形状の建物です。高層階は、あれはあれで展望台にもなってよかったけどねえ。
コロナの密対策で、ここも日時指定になった。ここはイープラスのシステムを使用。直前に予約して行こうと思ったが、システムを初めて使うには登録や認証などがあり、時間食っていたら買いたい時間帯が売り切れてしまい、次の時間帯になってしまった。
コロナのせいかあるいはもともとそういう予定なのか、コレクション展。まー今なかなか海外から持って来れないし、せっかく持ってきても客が来なかったり、最悪また緊急事態で一時閉館とかなったら目も当てられない。なもんで、持ってるものでしのぐ。

展示室は6階から降りてくるのです。まず6階の最初は「四季折々の自然」で、日本画です。岸田夏子「桜花」、「桜華」。んー、まあ普通。「桜華」の方は色がオレンジっぽいね。次は山口華楊「葉桜」ん? 解説にはあれこれ書いてあるが、あまりどうということは……これ若描きのようで。「幻化」こっちはうまい。動物もの。おおっ、という感じ(説明になってねーな)。「猿(大下絵)」と「猿」。大下絵というのは下絵だけど完成品と同じサイズという大きなもの。つまり今回完成品と並んで出ている。東山魁夷「潮音」おお、さすがに様式がある。魁夷ブルーというんですかね、ああ魁夷の色だなと分かる感じ。平山郁夫「ブルーモスクの夜」これも色合いで郁夫だ。有島生馬「宮の下残雪」地味フォーヴみたいな。吉田博「興津の富士」前に損保ジャパンで個展やった時行って、えらい混んでて人気でしたな。際立った個性がある感じじゃないんだがなんでだろうか。岸田劉生「虎ノ門風景」小さいけれどいいんじゃないか。厚塗りだし。それから美術館の建物案。カートリッジいろいろ、みたいな。

階段を降りて5階。「FACE」グランプリの作家たち、ですって。やってるんだよこういうコンテストみたいなの。なもんで、一気に現代平面アート。川島優「Toxic」あーこれね、女性像だけど実物初めて見るけど知ってたよ。なんか写真をパクってしまったもの。ただ、見た限り、写真をもとに描いたにしても、そう問題はないと思われる。絵画でしか出せない感じ、というものがあるもんでね。写真を写真のように描いた、もんじゃないのだよ。まそう言ってもパクったという人はパクったと言うんだろうなあ。それから青木恵美子「INFINITY Red」うむっ、この手があったか、みたいな。赤い絵の具をタップリ使って花びらを描いたというよりキャンバスの上に作った感じ。これはなかなか、インパクトがあるぞ。庄司朝実「18.10.23」ええと、まあ幻想半透明人物みたいな。嫌いじゃないよ。仙石裕美「それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている」大縄跳び。躍動感があっていい絵だ。縄の遠近感ってんですかね、それもいいですね。しかしおじさんは太ももとかに目が行ってしまうのだよ。いかんですな。えーそれから、他にも何人か出ている。

次は東郷青児コーナー。もう何度も見たヤツで。私はあの東郷美女ってんですかね、あの様式にゃ飽きてるというか、そんなにいいと思わんというか、萌えない。よってその様式でない方がよい。「超現実派の散歩」まあこれはよく見る。今回初期の「パラソルさせる女」というのがあって、おお、これは新鮮だお。キュビズムっぽさもある。あとは損保ジャパンこと当時は東京火災で、そことのおつきあい作品。保険案内とか、カレンダーとか、概ね美人画。右から左に読むヤツでもあまり古さを感じさせないのは、なかなか不偏なセンスをつかんでいるからと思われる。やっぱタダモンじゃないんだな。でもあとはまたおなじみの様式美女油彩、「花炎」とか「レダ」とか「望郷」とか、最初見た時は、おおーっ、とか思ったが、さすがに飽きた。あと立体もあったな。

4階へ。「風景と人の営み」で、当館が誇るグランマ・モーゼス。おばあちゃんが始めた趣味絵画が世界を席巻。古きよき農村。うまいのかというと、そうは見えないが、実は結構うまい、「いこい」における空気遠近法とか、なかなかちゃんとできてるじゃん。「夕暮れ」も色よろし。あとは東郷青児の風景、ユトリロが1枚……ユトリロにしては普通な感じ。ゴーギャンの、ここで毎回見てたヤツ「アリスカンの並木道、アルル」。飽きてるが実はいい絵なんだ。

「人物を描く」ルノワール2枚。ルノワールにしては小ぶりでイマイチな感じだけど個性はバッチリルノワールだ。しかも「浴女」は今回修復して色も明るくなって登場。修復を説明したパネルがある。いやー、ちゃんとした修復はまことにありがたいですなあ。先日どこぞで、家具屋にムリーリョをムリに修復させて台無しにしちゃった衝撃のニュースがあり、いや、あれはアカンやつや。そこそこだが無名の画家のキリスト像を猿みたいにしちゃったら笑い話で済むが、ムリーリョだぞ、「無原罪の神宿り」の人だぞ。シャレにならねえ。あとは有名どころの小品が多い、藤田嗣治、宮本三郎、ピカソ……このドライポイントの「抱擁」はなかなかピカソらしい肉弾戦でいいですな。ドニ、シャガール、東郷青児の自画像……おお、意外と男臭い荒っぽい絵だぞ。初期か。岸田劉生の自画像もあり。ルオーの「悪の華」の版画あり。それでいよいよ「静物画 - 花と果物」でセザンヌの名品「リンゴとナプキン」とゴッホ「ひまわり」んー、前は専用ルームがあったが、今は普通に展示。「ひまわり」ケースは豪華にして厳重だが。前と同じく、シートがあって座っても見れます。写真は撮れないが、外に複製があるぞ。

コレクション展でリーズナブル。別に密でもない。売店も広くなりましたな。
https://www.sompo-museum.org/

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2020年7月 5日 (日)

「鴻池朋子 ちゅうがえり」(アーティゾン美術館)

元祖けものフレンズ。いや何でもない。それにしてもこの美術館に行くのは2回目なんだけど、前回はもちろんコロナってなかったんで、こんな常に予約制でいいのかねと思ったんだが、こうしてウィズコロナの時代になると、こっちの方が標準になりそうだ。システムを自分のところで作り込んでいるので、余分な金がかからない。某近代美術館みたいにチケットぴあに丸投げで手数料300円とかだと、ビンボー人は泣けてくるぜっ。それでなくてもここはにゃんと1100円とリーズナブル。この鴻池だけでなく「宇宙の卵」という企画と常設展とパウル・クレーの小特集がついてくる。

いやー鴻池も昔は中目黒のギャラリーとかでやってたけど、今や大規模インスタレーション上等の魅せるアーティストの一人になりましたなあ。前にオペラシティでもやってたよな。6階フロアがガッツリ鴻池ワールドになっている。一応「セッション」らしいんでコレクションのクールベさんの絵とかあったりするけど、まあ特別ゲストみたいなもんかな。

入ったところに「竜巻」という竜巻風のヴィジュアルを集めたパネルっぽい作品……リトグラフか。まあ竜巻はあとでも出てくるけど、魅力的題材ですよねえ。パワフルにして暴力的で回転運動で形も美しい。見てるとワクワクしますねえ。自分ちに来るのは嫌だけど。えーそれから、鉛筆で描いた幻想絵画がいくつも並ぶ。「みみお」はちょっと好みじゃないキャラなんだが、あとはさすが、いいですな。地球断面図と称する円形のイメージとか、ジオラマと称する本にいろいろ乗ってるのとか、あと落雷のイメージもあったよな。あれも暴力的にして美しいけど、自分ちに落ちるのは嫌です。

鉛筆画コーナーが終わって、毛皮がたくさんぶら下がっているインスタレーション。その間に作品がチラホラ。毛皮ったって、毛皮のコートじゃねえど。服なんぞに加工してない「動物の毛皮」そのものだ。ここがポイントですな。服などの加工品の素材として見ているわけではなくて、あくまで野生動物に結びついたものとして見ている。あとで映像作品が出てくるが、ここんところのこだわりは大きい。それから無数のビニールひもがぶら下がっているようなところを通る。こりゃもう体験型ですな。

さらに体験型が続く。骨が……いや角だったかな、それが振り子になっているインスタレーションを横目に、緩いスロープを上っていくと、会場内が見渡せる、その先はなんと「滑り台」だぞ。美術展で滑り台ですかい。楽しいねえ。降りたところは襖絵に囲まれたところだ。この襖絵がなかなか力作で、先と同じ竜巻もある。こっちの方がリアル。カッコイイ。あと地球断面図もあるぞ。それから落雷が使われている壁画があり、その後ろには影絵のメリーゴーランドがある。下からのライトで影絵にするっていいですな。小さいものでも大きく拡大表示できるんだ。

それからクールベさんの鹿の絵があったり、キラキラの小さい山があったり、狼の毛皮の絵があったり、毛皮が木枠に閉じこめられているのがあったり、スナップ写真とか文章のコーナー(読んでない)、「皮トンビ」というでかい変な形状のパネル絵……えっ、これ牛皮なの? 知らなかった。スロープの下の空間に小粋なインスタレーションいくつか。絵がいくつもあったが、何しろインスタレーションが派手なもので、絵の印象があまり残ってない……いや、そういうことでは、いかんのだが。そういえば振り子のところにある「湖ジオラマ」思わずウォッと呻いちゃう。なんでだかは行って見よ。

メイン会場から繋がった部屋に、まだいろいろある。人から話を聞いてそれを絵にして、その人に作ってもらう、だったかな。そういうの。あと映像作品があって、本人(だよね)出演。だいたいは自然の中にいるもの。雪に埋まってドラえもんの歌うとか、ラップランドで遠吠えするとか、雪の中で毛皮かぶって舟引いて歩いてるとか。野生動物へのリスペクト満載。雪景色でドローン使った撮影しているな。最近はこうして鳥瞰が簡単に撮れるんで凄いもんですな。室内で野生動物の声をやるのでふと思い出したのが、歌がそもそも仲間を呼ぶ時の合図で、すごーくプリミティブ(原初的)な行為なんだけど、鴻池はさらなるプリミティブで動物のレベルまで迫っているのだなあと。

んで、ここで他の人がまず書かないことを書きましょうかね。雪に埋まってドラえもんの歌を歌う「ドラえもんの歌 on 森吉山」でね、「♪空を自由に飛びたいな」のあとに「はい、タケコプター」と言わず、「♪あんあんあ~ん、とっても大好きドラえ~もん」と歌だけが続く。なぜか? ふーんそんなもんか、で通り過ぎてもいいんだけど、意外とここにこだわりがあるかもしれんのよ。①ドラえもんがここにいては困ること。つまり、なんだかんだ未来文明のロボットなので。自分は野生の環境にいることを訴えているのであって、いくら渇望していたからといって、道具を出しに出てこられても困る。だからセリフはない。②セリフは歌よりもプリミティブでないこと。セリフでやっちゃうと、歌というプリミティブな要素が抜け落ちて、単に言葉による情報提供になってしまう。つまり、より文明人に近づいてしまうのだ。この場合、それではいかんということが君にもわかるであろう。だから、ここには歌しかないのだ。

そんなわけでインスタレーションいっぱいでエンジョイできるぞ。
http://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/2

えーと同時開催の「宇宙の卵」これは、「第58回、ヴェネツィア・ビエンナーレ」の日本館展示室で出した大規模インスタレーションの90%サイズ再現。あと、これの実現のための資料情報いっぱい。見ていくときりがないし、鴻池展で消耗してしまったので、なんとなくインスタレーション内でボケーとしているだけであった。エアクッション(?)に座れるし。

常設展はおなじみの連中に加え、パウル・クレーを新たに増やすことができたそうで、ドヤ顔で展示。いや、なかなかまとまってますよ。

ボリューム満点だ。全部を余すところなく楽しむには時間と体力が要るぞっ。
http://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition

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